この曲、なんかのパクリ?
曲や歌詞を書いていると、
「ポンと鮮明にアイディアが降りてくる現象」というのに、
しばしば遭遇します。
あ!あれ、なんだっけ?
え〜っと・・・
そうそう!!!
こんなメロ!
こんなアレンジ!
こんな歌詞!
・・・と、
まるで、知っている曲を思い出すかのように、
曲や歌詞が浮かんでくる。
あまりにも鮮明に浮かんでくるので、
こりゃ、誰かの曲をパクッちゃってるに違いないと、
思い当たるアーティストのアルバムを、
隅々まで聞いてみたり、
歌詞カードを読んでみたりするんだけど、
結局、どこにも見つからなくて・・・
それでも、そのメロディや歌詞は、
どんどん鮮明に、
「これっきゃない」とばかり、
頭の中を占領してしまう。
作品ができる時の話をしていると、
どんな作家も多かれ少なかれ、
同じような体験を語ります。
アーティストの横尾忠則さんは、
「新しい展覧会をやろう!」と企画するとき、
「すでに霊界で開いた過去の展覧会を思い出す」
という形でスタッフ会議を開く、
という話を聞いたことがあります。
そこまで行くと、だいぶ振り切れていますが、
やっぱり、クリエイターって、
似かよったところがあるんだなと、
折に触れ、その話を思い出します。
とはいえ、それは、
「本当に誰かの作品を思い出しているだけ」という危険性も、
常にはらんでいます。
人生のどこかの時点で、
何気なく聞いたことのある曲が耳に残っていて、
知らず知らず、そのメロディや歌詞を
いただいてしまっていた、
・・・なんてことが起きる可能性は、
ハッキリ言って、50 x 50(フィフティxフィフティ)
くらいじゃないでしょうか?
世界の有名ミュージシャンの多くの作品が、
「盗作」よばわりされてきたのは、
単なる他人のそら似とは限らないわけです。
なんと言っても、
現代音楽の音は12個しかない。
その順列組み合わせ。
歌詞だって、もういい加減、
出尽くしているとも言える。
完全無欠なオリジナルなんて、
もう生まれてこないと言っても、
過言ではないかもしれない。
それでもなんでも、
それがもし、過去のどこかで聞いた曲の、
引用の寄せ集め的なものだったとしても、
完成した形がカッコよくて、
人の胸を打って、
「おぉ、こんなの聞いたことない!」となれば、
それで、よいのではないか。
かつて読んだ本の中で、
(たしか、茂木健一郎さんの本だったと記憶しているのですが)
人は、なにかを無から創り出すのではなく、
自分の脳の中にプールされたさまざまな経験や記憶が、
あるとき、スパークを起こして、
新しいものを創造するのだ、
というようなことを言っていました。
だから、新しいものを創り出したかったら、
感動するもの、
記憶に残るものにたくさん触れる。
スパークを起こす種は、
音楽ばかりとは限りません。
それは、
絵画かもしれない。
本かもしれない。
海外で出会った、ある風景かも、
友だちとの会話の中にちりばめられていたことばかもしれない。
感動をたくさん経験した人が、
人を感動させられる曲をたくさんつくる。
「ポンと鮮明に降りてくるアイディア」を求めて、
今この瞬間も、
うんうん唸っているアーティストたちが、
世界中で眠れぬ夜を、
目覚めぬ朝を、
過ごしているのだろうなぁ。。。
◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
カラダという楽器 〜 Singer’s Tips #9 〜
ピアノでも、ギターでも、 「さぁ、弾こう」という前に、 弾き手が必ずするのがチュ …
-
-
自分らしく歌う。 自分であるために歌う。 ありのままの自分で歌う。
「ちゃんと勉強した人が綺麗な声できちんと歌う」っていう、 従来の音楽的価値観をぶ …
-
-
女子だって、ロックしたいっ!
最近でこそ、 女性ギターリストとか、どんどん出てきて、 女子向けのサイズのギター …
-
-
「彼の演奏は完璧だ。だけど、彼の演奏はEmpty(空っぽ)なんだ。」
「この歌手は”お上手”過ぎて、面白くもなんともねーな。」 …
-
-
期待通りにやれるのが「プロ」、 期待を越えるのが「一流」。
生まれて初めての配信ライブにして、 本年最初で最後のライブを明後日に控え、 リハ …
-
-
情報か?経験か?
生まれて初めて弾いたギターは、 姉が持っていたクラシックギターでした。 中学入学 …
-
-
生(リアル)な音、ください。
溝が浅くなるまで、繰り返し聞いたレコード。 ぼろっぼろになるまで、使い込んだ歌詞 …
-
-
80sを語ったっていいと思う
少し前、学生に「最近どんなの聞いてるの?」と質問したら、 「僕、結構古い音楽が好 …
-
-
基礎の難しさに気付く~Singer’s Tips #4~
歌を上達したいという人に、 ウォーミングアップやストレッチ、 ヴォイトレなど、基 …
-
-
「で?私、何したらいいんですか?」
「初回はカウンセリングをします」と言うと、 いわゆる「体験レッスン」をご希望の方 …