大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ベーシストって、すごいんだ。

   

「いやー、とにかく憧れていたんだよね。」
「こどもの頃から習ってたから。」
「家にたまたま楽器があったんだ。」

なぜ今の楽器をやるようになったのかという質問に、
返ってくる答えはさまざまですが、

ベースくらい、
「じゃんけんで負けたから」
という理由ではじめた人の多い楽器もないでしょう。

いや。ごめんなさい。
あくまでも、弊社比ですよ。

そのくらい、地味と言えば地味。

ヴォーカリストやギターリストみたいに、
前にぐいぐい出て、
目立ちまくるわけでも、

ドラマーみたいに、
山台の上で、
扇風機の風で髪を煽られながら、
ソロをキメまくるような楽器でもない。

もちろん、プレイヤーのスタイルはいろいろですし、
ぐいぐい前にでてくるタイプもたくさんいますから、
一概には言えませんが、

楽器の性質として、
やっぱりバンドを下の方で支える、
まとめ役的なパートだと、思うわけです。

学生の頃から、
ベースを弾いている人って、
ものごとを大局的に見る、
全体を俯瞰できるタイプの人が多いと感じています。

ちょっとやそっとで動じないようなところがある、
と言うかですね。。

で、私、これ、ほんっとに偏見で、
申し訳ないんですが、
学生時代は、ロックのベースって、
なにが難しいのかさっぱりわかんなかったんです。

だってさ。
弦、4本しかないんですよ。
で、1小節に3つとか、4つとかしか音を弾かない。

リターントゥフォーエバーを聞くまでは、
本気で、ベースって、
なんてシンプルな楽器なんだろうと思っていたし、

弦を何本も張ったり、
早弾きやチョッパーしまくったりすることが、
ベーシストのうまさの象徴なのかなー?と、
ぼんやり思っていたのでした。

しかし、です。

歌を真面目にやりはじめると、
この、シンプルな、ボーンボボーンが、
とんでもなく奥深いものだと感じるようになります。

誰でも弾けそう。
いや、誰でも、ちょっとがんばると弾ける。

でも、全っ然違う。

タイミングも、
音も、
ダイナミクスも、
もちろん、グルーヴそのものも。

この、ボーンボボーンの奥深さを、
ほんっとに極めているベーシストって、
私もたいがい日本屈指の方々とやらせていただいてきましたが、
いや、それでも、実にレアなのではないかと、
密かに感じているのです。

余計な音は弾かない。
でも、それで、もんのすんごくいい。

ベースほど、センスを試される楽器はないのではないか?

だから、いいベーシストって、
ほんっとに音楽をわかってるなーって人が多いと思うのです。
っていうか、天才ばっかりです。
ベースの才能って天性のものなのかもしれません。

あたしなんかが、ベースを語るのも、
なんだか口幅ったいんで、
なんか、今日は「思う」「かもしれない」の連発で端切れ悪いんですが。
だって、そうなんだもん。

さて、

ヴォーカリストなら、
ぜひ、一流のベーシストのプレイを、
口コピーしてみて欲しい。

いや、小難しいソロをコピーしろなんて言いません。
歌中の、ベースのフレーズをコピーするんです。

これをやると、
グルーヴのすごさとか、
音価とか、
ダイナミクスとか、
そういう、音楽の深みがどーんとわかります。

これがわかっているのと、
いないのとでは、
歌も全然変わります!

そしてね、
いいベースに1回触れちゃうと、
二度と元に戻れなくなっちゃうんですのよ。

これ、ほんと。

とにもかくにも、お試しあれ。

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