大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

タフであること。 楽天的であること。 そして適度に鈍感であること。

      2015/09/20

少し前のこと。
とあるアーティストの子が、こんなことを言っていました。

「悪口を言われると、それだけ人に気にされてるってことなんだなって思うんです。
悪く言う人の何倍も支持してくれる人はいるものですから。」
 

こんなことを言っている人もいました。

「2チャンが立ったとき、『おぉ、オレもここまで来たか』って思ったよ」
 
人の言うことをいちいち気にとめていたら、目立つ仕事はできないとはいえ、
どちらもツワモノ。なかなかこうは言えないなぁと思ったものです。

 

繊細であることはよい音楽を生み出す上で大切なことですが、
あまり繊細すぎる人は、音楽業界で生きていくことが向いているとは言えません。

目立ってなんぼの商売。
目立てば、目立つほど、人は気になるものです。
嫉妬もされるでしょう。
陥れようとする人も出てくるでしょうし、
「お前、変わったよな」なんて、言い出す人もいるでしょう。
 

スタッフはじめ、周囲のおとなたちも、いつもいつも自分の味方とは限りません。

「もっと売れる曲書け」、「もっと痩せろ」、
「お前なんかクビの皮一枚だ」などなど、
愛情からとは言いがたいことばを投げかけてくる人もいれば、

他のアーティストと引き比べて、
これでもかと傷つくようなことを言ってくる人もいます。
 

スタッフの意見に耳を傾け、反省できることはするという姿勢は大切ですが、
悪意に満ちたことばにいちいち傷ついて、くよくよしていたのでは、
身が持ちません。
 

実際に、そうした周囲の声に耐えられず、
事務所に内緒で夜逃げのように実家に戻ってしまった人や、
ストレスから声が出なくなってしまった人、
睡眠薬や精神安定剤などに頼ってしまった人もいました。
 
音楽業界でアルコールや薬物に依存してしまう人がいまだに多いのも、
繊細すぎるからこそなのかもしれません。

 

業界でしたたかに生き延びて行くには、
ある程度の鈍感力が必要なのです。

 

何年もの間、ずっと下積みでデビューのチャンスを待っていたとあるアーティストは、
何度もオーディションに落とされ、オトナたちに「お前は無理だ」と言われるたびに、
「なんでわかんないのかなぁ〜?ばかね。」と言っていました。
 
やがて大ブレークのきっかけをつかむことになるのですが、
引き寄せのチカラもさることながら、その素晴らしき鈍感力に脱帽です。

 

タフであること。
楽天的であること。
そして適度に鈍感であること。

生き延びていくために、大切な条件です。

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 - The プロフェッショナル, ある日のレッスンから

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