大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「売れ線狙い」は劣化コピーを生む。

      2017/10/10

「これ、今、売れてるから、この路線で行こう!」

そんな風に言うおじさまたちが、一昔前の業界には腐るほどいました。

いわゆる「売れ線狙い」というやつです。

 

B’Zが売れた時代には男性デュオグループが、

Oasisが売れれば、ストレートなサウンドのロックバンドが、

アラニス・モリセットや、シェリル・クロウがブレイクすれば、
ギターも弾ける女性ヴォーカルが、

雨後の竹の子のように市場に登場したものです。

 

そうして生まれる音楽のほとんどは、所詮、劣化コピー。

マインドもテイストも、なんちゃってでパクっているだけなので、
パクリもとの本質的なよさは、死んでしまっていることがほとんどです。

間違えて一時、ちょっと話題になったとしても、
自分たちの内部から生み出されるものではないので、
ネタも続かず、あっという間に消えてしまいます。

 

中には、そんな、「売れ線」で話題になったことをきっかけに、
自分たちの音楽スタイルを昇華させて、
息長く生き残って行くバンドもいますが、
非常に稀な例でしょう。

人は自分が心からやりたいと思うことしか一所懸命できない。
一所懸命できることでしか、突き抜けられない。

確かに、「時代のサウンド」というのはあります。
「時代のリズム」のようなものもある。

それらが心地よく感じられ、
自然発生的に自分たちの中から、時代にマッチした音楽が生まれるのなら、
もちろん、素晴らしいことです。

 

しかし、単に「売れ線だ」という理由だけで、
自分たちの不本意な音楽を、我慢してやる、というのでは、
売れなかった時、納得できません。
そうなると、誰か、人のせいにしたくなる。

音楽家にとって、本当にいいときは短いものです。
人のせいにしたくなるような選択は絶対に避けるべきなのです。

もっと言えば、「今」売れているものを、
これから追いかけても決定的に遅い。

売れるものを本気で仕掛けている人たちは、常に、「次」を考えています。
だからこそ、大衆が後追いの劣化コピーに飽き飽きするころ、
ぶっちぎりで、新鮮なシーンをつくっていくことができるわけです。

クリエイティブであるということは、そういうことです。

「今、これ、売れているから」というフレーズが出てきたら、要注意。

少しひねくれているくらいの方が、
面白いものを生み出す可能性があるというものです。

よく言われる「真似る」、「盗む」、というのと、
ここでいう「パクる」というのは、意味合いが違います。
そのお話は、また今度。

18543446_s

 

 - The プロフェッショナル, 夢を叶える, 音楽業界・お金の話

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

うまいからプロになれるのか?プロになるからうまくなるのか?

うまいからプロになれるのか? プロになるからうまくなるのか? ニワトリとタマゴの …

ヴォーカリストのための「練習の3つのコツ」

プライベートレッスンでも、MTL12でも、そして音大でも、 クライアントやアーテ …

それで、いい声、出せますか?

先日、とある生徒さんのレッスンをしていた時のこと。 ずいぶん小柄な彼女なのに、 …

オーディションに失敗したくらいで、いちいち落ち込んでる暇なんかないのだ。

長年業界におりますが、 いわゆる「オーディション」を受けたのは2回だけ。 2度と …

「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」

「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」   謎の質問で …

「才能」ってなんだ?

若かりし頃から、 「恵まれた人」に対する強烈なコンプレックスを抱えて生きて来まし …

「もっとうまくなってから」と言う『完璧主義のぐず』

バンド、どうして組まないの? 「もうちょっと、うまくなってからメンバー探そうと思 …

パッションから目をそらさない!

「え?MISUMIさん、そこまでやるんですか?」 何度言われてきたかわからないこ …

正しい「シャウト声」の出し方!

高校時代の自分のバンドのライブ音源という、 恐ろしいものが存在しています。 少し …

「今の自分」を信じられないなら、「未来の自分」を信じる

「音楽学校って、夢をあきらめるためにくるところだって、先輩が言ってました」 &n …