人生はリハーサルのない、1度限りのパフォーマンス
ひとりのミュージシャンの生涯には、
どのくらいの苦悩や葛藤、挫折があるのでしょう。
そうした、自問自答したり、
人に投げつけられたりしたことばのすべてを文字化したら、
一体全体何万字、いや、何十万字になるのでしょう?
「才能はあるのか?」
「プロになんかなれるわけないだろう?」
「そもそも、生涯の職業として選ぶべきものか?」
「お前には無理だ」
「そんなんで食べて行かれるのか?」
「思っているほど、いい仕事じゃないさ」
「年を取ったらどうするんだ?」
「どうやって家族を養っていくつもりなんだ?」
「好きなことばっかりやって、稼げるわけないだろう?」
「将来のこととか不安じゃないのか?」
そんな、さまざまな思いを乗り越えて、
では、プロとして活躍できれば、そんな不安は消えるのかといえば、
そんなことはけしてありません。
稼ぐほどに、出費が増えるのが一般的な人生の構図です。
大売れに売れているアーティストほど、
人件費や制作費などなどにお金がかかって、
「次が売れなかったらどうしよう?」という不安を抱えていたりします。
スタジオミュージシャンなら、
「いつまで指や手足が思い通りに動くだろう?」
「どうやったら飽きられないで仕事をもらい続けられるだろう?」
「クライアントの世代交代があってもやって行かれるのか?」
などと、心配になったり、
「年取って、こんなに仕事してられない。」
「働かないでゆっくりしたい」
と、ビジネスを画策をすることもあるでしょう。
サポートで旅をしているミュージシャンなら、
「そろそろ酒をセーブしないと」
「なんか一発病気したらやばいよな〜」
「次のツアーあたり、若い世代にバトンタッチとか、言われるかもな・・・」
という不安もありますし、
ライブミュージシャンなら、
「お客さん、今夜は入るかな?」
「カラダしんどいけど、本数減らしたらお金入ってこないよな。。。」
「誰と組めば、飽きられないでやれるかな?」
など、心配事は尽きません。
プロミュージシャンと認められるようになるのは、大変なことです。
まして、コンスタントに一線で活躍する、一流のプロとなるのは、
もちろん並大抵のことではありません。
30代、40代、50代と、年を重ね、
なお、プロとして活躍し続けるには、さまざまな工夫や努力、
覚悟が必要で、
そうして、がんばり続けたものだけが、
生涯、「現役で活躍するミュージシャン」となれるのです。
ミュージシャンになるのは大変。
一握りの、一線で活躍するミュージシャンになるのは、なお大変。
ミュージシャンを続けるのはもっともっと大変。
でもね。
どんな仕事を選んだとしても、
楽に、なんの葛藤も苦悩もなく、過ごせる人生ってあるのでしょうか?
好きなことを仕事にするなんて、大変だというけれど、
好きでもないことを仕事にする大変さに比べたら、
どんなことも苦労と感じないのではないか。
人生において、お金はとても大切なものであるけれど、
お金のために何かをあきらめて、別の道を歩んだとして、
その仕事で失敗して、やっぱりお金がなくなったとき、
なくした時間は取り返せないと思うのではないか。
それよりなにより、
あぁ、好きなことを必死にやって、がんばったけど、
うまく行かなかった。
つらいけど、後悔はない!という生き方の方が、ずっと幸せではないか。
人生はリハーサルのない、1度限りのパフォーマンス。
消去法で選ぶのではなく、積極的に、好きなものを選び取る勇気、
そして、圧倒的なコミットメントだけが、
自分自身を次のステージに押し上げてくれるのです。
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