大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人生はリハーサルのない、1度限りのパフォーマンス

   

ひとりのミュージシャンの生涯には、
どのくらいの苦悩や葛藤、挫折があるのでしょう。

そうした、自問自答したり、
人に投げつけられたりしたことばのすべてを文字化したら、
一体全体何万字、いや、何十万字になるのでしょう?

 

「才能はあるのか?」

「プロになんかなれるわけないだろう?」

「そもそも、生涯の職業として選ぶべきものか?」

「お前には無理だ」

「そんなんで食べて行かれるのか?」

「思っているほど、いい仕事じゃないさ」

「年を取ったらどうするんだ?」

「どうやって家族を養っていくつもりなんだ?」

「好きなことばっかりやって、稼げるわけないだろう?」

「将来のこととか不安じゃないのか?」

 

そんな、さまざまな思いを乗り越えて、
では、プロとして活躍できれば、そんな不安は消えるのかといえば、
そんなことはけしてありません。

 

稼ぐほどに、出費が増えるのが一般的な人生の構図です。

大売れに売れているアーティストほど、
人件費や制作費などなどにお金がかかって、
「次が売れなかったらどうしよう?」という不安を抱えていたりします。

スタジオミュージシャンなら、
「いつまで指や手足が思い通りに動くだろう?」

「どうやったら飽きられないで仕事をもらい続けられるだろう?」

「クライアントの世代交代があってもやって行かれるのか?」

などと、心配になったり、

 

「年取って、こんなに仕事してられない。」

「働かないでゆっくりしたい」

と、ビジネスを画策をすることもあるでしょう。

 

サポートで旅をしているミュージシャンなら、

「そろそろ酒をセーブしないと」

「なんか一発病気したらやばいよな〜」

「次のツアーあたり、若い世代にバトンタッチとか、言われるかもな・・・」

 

という不安もありますし、

 

ライブミュージシャンなら、

「お客さん、今夜は入るかな?」

「カラダしんどいけど、本数減らしたらお金入ってこないよな。。。」

「誰と組めば、飽きられないでやれるかな?」

など、心配事は尽きません。

 

プロミュージシャンと認められるようになるのは、大変なことです。

まして、コンスタントに一線で活躍する、一流のプロとなるのは、
もちろん並大抵のことではありません。

30代、40代、50代と、年を重ね、
なお、プロとして活躍し続けるには、さまざまな工夫や努力、
覚悟が必要で、

そうして、がんばり続けたものだけが、
生涯、「現役で活躍するミュージシャン」となれるのです。

 

 

 

ミュージシャンになるのは大変。
一握りの、一線で活躍するミュージシャンになるのは、なお大変。
ミュージシャンを続けるのはもっともっと大変。

 

でもね。
どんな仕事を選んだとしても、
楽に、なんの葛藤も苦悩もなく、過ごせる人生ってあるのでしょうか?

 

好きなことを仕事にするなんて、大変だというけれど、
好きでもないことを仕事にする大変さに比べたら、
どんなことも苦労と感じないのではないか。

 

 

人生において、お金はとても大切なものであるけれど、
お金のために何かをあきらめて、別の道を歩んだとして、
その仕事で失敗して、やっぱりお金がなくなったとき、
なくした時間は取り返せないと思うのではないか。

 

 

それよりなにより、
あぁ、好きなことを必死にやって、がんばったけど、
うまく行かなかった。
つらいけど、後悔はない!という生き方の方が、ずっと幸せではないか。

 

人生はリハーサルのない、1度限りのパフォーマンス。

 

消去法で選ぶのではなく、積極的に、好きなものを選び取る勇気、
そして、圧倒的なコミットメントだけが、
自分自身を次のステージに押し上げてくれるのです。

 

 

36583508 - band performs on stage, rock music concert. warning - authentic shooting with high iso in challenging lighting conditions. a little bit grain and blurred motion effects.

 

 

 

 - Life, The プロフェッショナル

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

おとなになるって、素敵なことだぜ

おとなって、なんて純粋に音楽を追いかけるんだろう・・・ 最近そんな風に感じるシー …

こんなに欠点はあるけど、自分はそれほど無能なわけじゃない。

「MISUMIさん、また探しものですかぁ・・・?」   手袋 ペンケー …

よき時代のよきものを、 いい形で後世に伝える方法

高校時代、何が嫌いって「古文」の授業くらい 嫌いな授業はありませんでした。 使わ …

自分の行動には自分で責任を持つ。

コロナウィルス問題、 本当に大変なことになっていますね。 影響を受けている方、対 …

人前に立つ前の「MUST DO!」〜ビジュアル・チェック編〜

昨日のブログ、人前に立つ前の「MUST DO!」〜ムービー/チェック編〜の続編で …

「これはイヤ」はわかるのに、「これが好き」を選べない。

以前、(たしかジェームズスキナー氏の本だったと思うのだけど)自己啓発書のワークで …

「モノマネ」で終わっちゃうからいかんのだ。

昨年から、今日に至るまで、 これまで聞いたこともなかった、 いや、むしろ逃げ回っ …

「99人が同じ方向に行っても、お前は自分の頭で動け。」

『小学校の時、クラス全員でいたずらをして、大問題になったことがある。父に「なぜや …

やりたいことは、「今」はじめる。 10年続ける。

無条件に何かを「楽しい」と感じられるようになるまで、 人は何かしらの学習を積み重 …

芸を磨く。

近年、お仕事の関係で、 さまざまなお芝居にご招待いただきます。 たくさんの役者さ …