穴を埋めるのか。山を高くしていくのか。
スタジオのお仕事が軌道に乗り始めた頃のこと。
私の歌を気に入ったから、プレゼン用のデモ制作しようと、
さまざまなシーンで業界関係者から、お声がけいただました。
実際にできあがったデモを持って、事務所やレコード会社を回ったこともあります。
しかしね。まったくうまくいかない。
ルッキズム、セクハラ、モラハラ、なんでもこいの時代です。
当時の私ががっかりするくらい地味だったからという事実は100%受け入れるとして、
(堂々とそう口にするヤツらもいましたが)
実際に異口同音で言われたことは、
「英語歌っているとめちゃくちゃカッコいいのに、日本語歌うと急に普通になっちゃうよね」
でした。
バンドブーム以前のこと。
日本でやりたいなら日本語で歌うべし、という時代です。
そこから話が前に進むことはありませんでした。
日本人なのに、日本語が苦手なの…?
自分なりのくふうもしました。
英語の歌い方に寄せるように歌ってみたり。
声の音色をくふうしてみたり。
しかし、評価は変わりません。
「普通にうまい」です。
そんなつまらない言われようもありません。
途方に暮れました。
どうがんばっていいのか、わからなくなって、学生時代、しばしお世話になっていた、ヴォイストレーナーの安田直弘先生の門を叩きました。
私が歌の恩師と言い切れる唯一の先生です。
「先生、私、日本語歌うと、普通だって言われるんです。
全然評価してもらえないんです。
でも、どうやって歌ったらいいのか、わからないんです。」
すると先生は、当たり前でしょ、というように、穏やかに言うのです。
「そりゃ、普段、日本語で歌ってないからだよ。
どう?コサカさん(私の旧姓)のレパートリーに日本語の曲、何割あるの?
1割?1割もないでしょ?
歌ってないんだから、歌えないのは当たり前だよ」
そう言われて、はじめて、あ、そうかと、当たり前すぎる事実に気づき、愕然としました。
歌ってないどころか、音楽というものに目覚めた中学時代から、積極的に聞いた日本のアーティストは5本の指で数えてもあまるほどしかいません。
対して夢中で聞いた洋楽アーティストは無数。
その時点で、すでに200曲以上は完コピしていました。
絶対サンプル数が足りないんですね。限りなくゼロ%に近い。
基準がないのだから、どう歌ったらいいのかわからないのは当たり前です。
逆に言えば、英語の歌を歌うと評価されたのは、誰よりも洋楽を歌いまくっていたからだったわけです。
すとんと腑に落ちました。
と同時に、気持ちがすーっと楽になりました。
できないこと、好きじゃないことをがんばっても、
それは、自分の能力の穴埋め作業みたいなもので、
結局「普通」、アベレージを越えることはできない。
好きだからこそ、細部が見える。
好きだからこそ、上達する。
人より得意なこと、大好きなことを極めること、
つまり自らの能力の「丘」に土を積み上げて「山」にする。
その山を高く高くしていくことでしか、人と違う場所にいくことはできない。
人生のターニングポイントとなった、大きな気づきです。
あなたの好きなこと、得意なことはなんですか?

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