自分なりの「こだわり」を見つける
かつてよく演奏していた、あるギターリストは、
常にギターは一本だけしか持たない、というこだわりがありました。
本番中に弦が切れても、トラブルが起きても、その1本しかないわけです。
普通のギターリストなら、不安で、
少なくとも1本〜2本のエクストラ・ギターを用意するものですが、
彼はそのギター以外はつかいたくない。
その分、常に、徹底的に、メインテナンスをしているからか、
長いこと一緒にやりましたが、一度もトラブルを見たことがありません。
クィーンのブライアン・メイもお父さんと一緒につくった、
自作のギターを長年愛用していることで有名です。
一方で、ヴィンテージ・ギターや、
変形ギターばかりを好んでコレクトしているという人もいる。
ステージ上で次から次へと、レアなギターを披露するのが
ひとつの出し物のようになっていたりします。
そうかと思えば、ギターになんの思い入れがないのがこだわり、みたいな人もいる。
新しかろうが、古かろうが、弾きやすければいい。
「どんなギターを弾いても自分の音になるから」と豪語するツワモノもいます。
自分の楽器は絶対に飛行機で運搬しない、という、
イベンター泣かせのプレイヤーもいれば、
楽器はその土地にあるもので、なんでもOKという、
「弘法筆を選ばず」、のようなプレイヤーもいます。
次から次へとギターを買い替えて、自分のべストを探し求める人もいれば、
一本のギターに徹底的に手を入れて、飼い慣らすタイプもいる。
どれが正解ということはない。
正解は人の数だけあるのです。
ヴォーカリストでも同じです。
最近のヴォーカリストの「MYマイク率」の高さに驚く昨今ですが、
何十年も前から、ライブハウスに、リハーサルスタジオに、
自分のマイクを持ち歩くヴォーカリストはいました。
一方で、どんなマイクでも、マイクを選ばないのがひとつのステイタス、
というヴォーカリストもいます。
最終的に音をつくるエンジニアにも、それぞれのこだわりがあるもの。
マイクでも、エフェクトでも、
エンジニアの好みにまかせることで、トータルの音のなじみがよくなる、
という考え方もあります。
正解は人の数だけある。
人の考えに心惑わされず、
そのときの自分にとってしっくりくるルールを、
ひとつひとつ試しながら、自分にとっての正解を見つけていく。
それがやがて、その人特有の音をつくる、こだわりとなっていくのです。
関連記事
-
-
「もっと心をこめて歌ってよ」!?
「歌は心」的な話は苦手です。 心をこめて歌おう、 情感たっぷりに歌おうとがんばる …
-
-
「与えるチカラ」と「欲しがるチカラ」のパワーバランス
音楽は人に感動やエネルギーを与えるもの。 音楽家であれば、誰もが多 …
-
-
「このくらいデカい音出さなくちゃいい音出ないだろ?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016年1月、M …
-
-
ライブの選曲、どうします?
3月2日のMaybe’sライブのリハーサルがはじまりました。 基本2 …
-
-
説得力のある人は、エネルギー値が高いのだ。
聞く人の心にどかんと飛び込む「説得力あるパフォーマンス」。 はじめてギターを抱え …
-
-
「譜面がなくちゃだめ」と思ってしまう自分にまず疑問を持つ
「ボクは音楽は全然ダメですよ。そもそも譜面が全く読めないんだから」 …
-
-
「絶対売れる戦略」ってなんだ?
ずいぶん前のことになります。 某大手事務所さんが非常に力を入れていた新人がいまし …
-
-
「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。
昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …
-
-
最終判断は「直感」!
「ここまで歌えるようになったら、最低限の準備は整った」 「今の自分が歌える最高レ …
-
-
「オリジナリティ」ってなんなのよ?
「○○って落語家はすごいんだぞ。 一流と言われた落語家をぜんぶ研究して、 みんな …
- PREV
- 「音楽はひとりではできない」の本当の意味
- NEXT
- 衣装にこだわる?「こだわらない」ことにこだわる?