大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

自分なりの「こだわり」を見つける

   

かつてよく演奏していた、あるギターリストは、
常にギターは一本だけしか持たない、というこだわりがありました。

本番中に弦が切れても、トラブルが起きても、その1本しかないわけです。
普通のギターリストなら、不安で、
少なくとも1本〜2本のエクストラ・ギターを用意するものですが、
彼はそのギター以外はつかいたくない。

その分、常に、徹底的に、メインテナンスをしているからか、
長いこと一緒にやりましたが、一度もトラブルを見たことがありません。

クィーンのブライアン・メイもお父さんと一緒につくった、
自作のギターを長年愛用していることで有名です。

一方で、ヴィンテージ・ギターや、
変形ギターばかりを好んでコレクトしているという人もいる。
ステージ上で次から次へと、レアなギターを披露するのが
ひとつの出し物のようになっていたりします。

そうかと思えば、ギターになんの思い入れがないのがこだわり、みたいな人もいる。

新しかろうが、古かろうが、弾きやすければいい。
「どんなギターを弾いても自分の音になるから」と豪語するツワモノもいます。

自分の楽器は絶対に飛行機で運搬しない、という、
イベンター泣かせのプレイヤーもいれば、

楽器はその土地にあるもので、なんでもOKという、
「弘法筆を選ばず」、のようなプレイヤーもいます。

次から次へとギターを買い替えて、自分のべストを探し求める人もいれば、

一本のギターに徹底的に手を入れて、飼い慣らすタイプもいる。

どれが正解ということはない。
正解は人の数だけあるのです。

ヴォーカリストでも同じです。

最近のヴォーカリストの「MYマイク率」の高さに驚く昨今ですが、

何十年も前から、ライブハウスに、リハーサルスタジオに、
自分のマイクを持ち歩くヴォーカリストはいました。

一方で、どんなマイクでも、マイクを選ばないのがひとつのステイタス、
というヴォーカリストもいます。

最終的に音をつくるエンジニアにも、それぞれのこだわりがあるもの。
マイクでも、エフェクトでも、
エンジニアの好みにまかせることで、トータルの音のなじみがよくなる、
という考え方もあります。

正解は人の数だけある。

人の考えに心惑わされず、
そのときの自分にとってしっくりくるルールを、
ひとつひとつ試しながら、自分にとっての正解を見つけていく。

それがやがて、その人特有の音をつくる、こだわりとなっていくのです。

19756456_s

 - The プロフェッショナル

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

期待にこたえるだけじゃダメなんだ。

「期待にこたえるだけじゃダメなんだ。 いい意味で期待を裏切り続けなくちゃダメなん …

ピッチが悪いの、気づいてます?

少し前のこと。 知人に誘われたとある会社のパーティー会場の片隅で、 いきなりジャ …

毎日プレイしているだけじゃ「上達」はしない

「人生で一番練習した」と言い切れる時期はありますか? おそらく、ほとんどの人は、 …

「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」

「声くださ〜い」   音楽の現場に長くいるので、 この「声ください」と …

「お客さんに甘やかされたらあかんよ」

「MISUMIちゃん、 こういうお客さんに甘やかされたらあかんよ」 京都でバンド …

ことばにするチカラ

「天才は教えるのが下手」と言われます。 だって、普通にできるから、 どうしてそれ …

極度の緊張に負けない自分になる|本番で力を発揮するコツ

「極度の緊張」のため、肝心な舞台でしくじる。 舞台度胸がないとか、練習が足りない …

「切り替え」と「集中」で精度を上げる!

インプットとアウトプットを、 高い精度で両方一度にこなせるという人は 一体どのく …

ボイトレ七つ道具、公開(^^)

最近、講演やセミナーをするときだけでなく、通常のボイトレをするときにも、 声のし …

「中上級の壁」を越えるための5つのポイント

今日は午前中から、外資系企業でバリバリと働く才媛かつ、美しき女性シンガーAさん、 …