「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。
昨日、「音の立ち上がり」は、
歌い手の声の印象を大きく左右する、
というお話をしました。
では、もうひとつのポイントである、
「フレーズの語尾」は、どうでしょう?
実は、この「フレーズの語尾」、
すなわち「音の切り際」は、
歌い手の技量の印象となります。
「ある程度歌える」というレベルの人たちと、
誰が聴いても「うまい!」と感じる人たちは、
この「切り際」が圧倒的に違うのです。
時折セミナーなどで披露する、
「切り際だけへたくそな歌手」
というネタがあるんですが、
いい声で、ピッチもリズムもバッチリなのに、
「切り際」だけ、
一瞬音痴に歌う、
一瞬リズムをずっこけさせる、
ただそれだけで、
実にへったくそな、
破壊的な歌になってしまいます。
歌い手の多くは、
歌っているフレーズの終わりに近づくと、
次のフレーズの頭に意識が行く。
次のフレーズの歌詞や、ピッチ、タイミングを、
確実に歌い出したいという意識が働くほど、
今歌っているフレーズの切り際が雑になります。
ビブラートが乱れる、
音の長さが中途半端になる、
ピッチが下がる、
ことばの切りが曖昧になる、
音色が変わる・・・etc.etc….
「細部に神が宿る」のです。
優れた歌い手は、
ダンサーが指先まで、繊細に神経を通わせるように、
音を切る、その瞬間まで、
責任を持って歌い切るもの。
そんな歌い手の細部へのこだわりが
聴く人の「無意識」に入り込む。
印象を決定づけるわけです。
これはもう、理屈じゃない。
そういうもんです、
としか言いようがありません。
しかし、
複雑なメロディや、
テンポの速い曲を次々歌うのに、
いちいち、そんな細かいところまで、
気にして歌っていたんじゃ、
感情も表現もあったものじゃないだろ?
という声が、また聞こえてきそうです。
だからこそ、大事なのが、
日頃の準備、練習なのです。
理想は、
練習で細部にこだわり倒して、
本番では、なんにも考えずに、
感情に身をまかせても、
全身全霊で「表現」しても、
乱れず、自然に、完璧に、歌えること。
いやいや、あくまでも、理想ですけどね。理想。
練習って、
そんな、テクニックへのこだわりや、
完璧恐怖症の自分自身から、
自由になるためにするものなんですよね。
■いつでも、どこでも、思い立ったときにはじめられるMTLのオンライン12。
外出自粛応援にて、ただいま消費税OFFです。
関連記事
-
-
「能書きが多いヤツ」は上達しない。
「歌って何才までうまくなるんですか?」 実によくされる質問ですが、 こればかりは …
-
-
バンド世代 vs. カラオケ世代
こどもの頃から楽器を練習している人でも、 自分の楽器以外のことはわからないという …
-
-
「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」
「声くださ〜い」 音楽の現場に長くいるので、 この「声ください」と …
-
-
スーパーファルセット(すんごい高い声)出したい?
スーパーファルセット、 ホイッスルヴォイスなどと聞いて、ピンとくるでしょうか? …
-
-
「ハモりゃいいんでしょ?」は、実は結構奥が深い
「コーラス」と聞くと、どのようなイメージでしょう? いわゆる中学高 …
-
-
声のリハビリ
3月からのライブ・ラッシュに向けて、 朝トレをしているわけですが、 ここ半年あま …
-
-
時間がかかることを怖れない
本気でうまくなりたいなら、「この1曲」と決め、歌いこなせるようになるまで、とにも …
-
-
「オケ」じゃなくて、プレイヤーの顔のついた「音」を聞くんですよ。音楽って。
年寄り自慢をするつもりは毛頭ありませんが、 (あたりまえ) 一昔前は歌を歌いたか …
-
-
「一緒にバンドやってくれませんか?」
「自分、なんでバンドやらんの? ワシ、自分の歌、ごっつええ、思うで」 人生を変え …
-
-
「最後に頼りになるのは自分の耳!」って、言いたい。
世の中には、耳のいい人というのはいるものです。 バンドがどんがらが …