大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌い手の声の印象はこれで決まる!

   

プロアマ問わず、
さまざまなシンガーの歌にアドバイスをしていて、
もっとも気になるのが「音の立ち上がり」と、
「フレーズの語尾」です。

特に「音の立ち上がり」は、
歌い手の声の印象を大きく左右します。

ところが、多くの人が一所懸命練習するのは、
高い声、太い声、ピッチ、ビブラート・・・。

声を出しはじめた、その瞬間に、
歌のイメージは決まるのに、
やっと声が安定しはじめるのは1秒後、2秒後・・・

いい声が出てきたときには、
あら残念、フレーズが終わって、
また次のフレーズがはじまってしまいます。

特にロックやR&B、ヒップホップのように、
リズムを強調した音楽を歌うなら、
この「立ち上がり」の瞬間をとらえることは、
必要不可欠です。

よく生徒たちには、
「出た瞬間にパキンと音をとらえる」
と説明しているのですが、言うは易し。

実際にやってもらうと、
まず、ピッチがよれる、
変なアクセントがつく、
声の音色が安定しない、、、と、
みんな、その難しさに目覚めます。

声を出す、まさにその瞬間に、
正確なピッチをとらえる。

確実に音のアタック、ピークをつくる。

ことばのエッジ、
子音なら子音特有の周波数を立てる、
母音なら、その目指す音をポンと出す。

そして、立ち上がった次の瞬間に、
自分という楽器の一番美味しい「鳴り」を得られるポイントへ、
声を連れて行く。

なんだか抽象的な、
小難しいことを言っているようですが、
このすべてが、実は確実に数値化できることばかり。

それなりの機材を使ってレコーディングをすると、
全て波形としてくっきり現れます。

こんなことを書くと、
「歌は心ですよ」とか
「歌を数値で語るなんて、わかってないね」とか、
言う人が必ずいるんですが、
そう言う人こそ全然わかってない。

感動的な歌を歌うすごいシンガーで、
この「立ち上がり」がショボイ人は、
ひとりもいません。

 

で、どうすんの?

この「立ち上がり」をとらえるのに有効な練習は、
主に3つです。

  1. スタッカートのような、短い音を連続で出すトレーニングちなみに、スタッカートをお腹でかけると思っている人がいるんですが、
    お腹なんかでかけようとするから、ピッチが安定しないんですね。
    スタッカートは構音筋で表現します。母音の場合は声帯様の開閉です。
  2. スローモーショントレーニング歌い出しを、超スロー再生で完璧に、確実に、
    ピッチや子音や音色をとらえられるまで練習します。
    ゆっくりやってできないことは、速くやったら一生できませんから、
    ゆっくり、正確にできるようになって、少しずつスピードを上げます。
  3. ロングトーンから、ことばの発音や音の階段に移行するトレーニングまず、いい声の「鳴り」をつくって、
    その「鳴り」を壊さないように、
    ことばを置いたり、音の階段を刻んだりする練習です。
    最初はお経のように、一定の音の高さで練習をするとよいでしょう。

ちょっと小難しい話になっちゃいましたが、
何ごとも、まずは「意識をすること」が一番大事。

この解説を読んだだけで、
歌の聴き方、歌う時の意識の在り方が、
少しでも変われば成功です。

気の遠くなりそうな練習かもしれませんが、
いつも言うように、
歌の練習は自転車に乗るのと同じです。

一回できたら、二度とできなくなりません。

自宅でじっとしてなくちゃいけないこの時期こそ、
こういう地味〜な練習がオススメですよ。


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 - B面Blog, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, 歌を極める

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