大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ゆっくりやってもできないことは、速くやってもダメ

      2015/12/20

そんなの当たり前でしょ?と言われそうなタイトルですが、
実は、この当たり前を知らん顔して素通りしようとする人、結構多いんです。

テンポが速すぎて、どうもカツゼツよく歌えない。
セリフがあまりに難しくて、何度練習しても咬む。
フレーズが難しい上に曲のテンポが速くって、きちんとメロディーを刻めない。。。

そんなとき、どうしますか?
「何度も何度も、速さに慣れて、できるようになるまで、しつこく練習する。」

ほとんどの人は、こう答えます。

確かに反復練習は大切です。
繰り返し練習していれば、やがてできるようになることもあるでしょう。
しかし、それは、本当に「できた」のでしょうか?
できたような気になっているだけではないですか?
ごまかし方がうまくなったわけではないですか?

実は、できない理由は、「テンポが速いから」ではないのです。

できない理由は3つです。

1.力みにより、筋肉が硬直してうまく動かない

2.フォームが悪く、正確な結果を得られない

3.神経系の命令が筋肉に伝えられていない=瞬発力がない

力むと、筋肉は固くなります。硬くなった筋肉は思うように動けません。
無理に動かそうとすれば、故障します。
力みが取れないまま、反復練習を繰り返すことで、
力みがクセになってしまう場合も多々あります。

まずはリラックスすること。
そして、フォームを整えることが肝要です。

リラックスして、フォームを整えた状態で、はじめて、
神経系統、筋感覚の整備や、筋肉不足を補う練習が生きてきます。
そうでなければ、妙な力みや、クセを助長するばかり。
逆効果になってしまうのです。

できていないときは、実際、何が正しいのかも手探り状態。
できた気になるのも、判断基準が甘いからということもあります。

もっとも効果的な練習方法は、「完璧にできるテンポで練習する」ことです。

キューちゃんこと高橋尚子選手を育てた、小出監督の本に、
「速く走ろうと思わないで、気持ちよく走れるスピードで走ったらいい。
やがて、そのスピードが徐々に上がっていくのだ」
というようなことが書いてあるのを読んだことがあります。

たとえ、それが、どんなにスローモーションのようなスピードでも、
今、完璧にできるスピードが自分にとっての適性テンポ。

そのテンポを上げるのが、正しい練習なのです。

22399724_s

 

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

「本番の女神」はベストを尽くした者だけに微笑む

「本番に突然、今まで出なかった高音が、ぽーんと出た。」 「思いがけないカッコいい …

プロフェッショナルの歌は、「リズム」が違う!

プロフェッショナルと、一般の人の歌の、何が違うと言われたら、筆頭にあげるのは、間 …

歌い手の声の印象はこれで決まる!

プロアマ問わず、 さまざまなシンガーの歌にアドバイスをしていて、 もっとも気にな …

音楽家なら必ず鍛えたい「耳」のお話

耳を鍛えることは、 曲を理解する上でも、楽器や歌の技術や表現力を磨くためにも、 …

「誉めて!かまって!」症候群

誰かにかまわれたい、 誉められたい、 認められたいという欲求は、 人間である以上 …

「なぜだろう?」の先に、進歩がある。

「なぜだろう?」   楽器も歌もパフォーマンスも、いや、おそらく、どん …

no image
日本語の発音とリズム感の関係

歌のリズムがよくならない。 どうも、ビートが気持ちよく出てこない・・・ どんなに …

意味もわからないまま歌わないっ!

歌詞の意味をわからずに歌うということは、 意味のわからないことばを声高に叫んでい …

緊張に打ち克つ。

多くの人に相談される悩みのひとつに、 「人前に出ると緊張してしまって、声が出なく …