練習を「単なる時間の無駄」で終わらせないための3つのポイント。
歌を志すことになったのは、
私にとって、ある種の「挫折」でした。
そんなことを言うと、
ずっと歌を志して、報われていない人たちに、
失礼に当たるかもしれませんが。
だって、挫折だったことには変わりないし、
今でも、やっぱり、ちょっぴりそう思っています。
ピアノだって、ギターだって、
毎日、毎日、とりつかれたように、
がむしゃらに練習していましたが、
どんなにがんばってもちっともうまくなりませんでした。
私が日頃、生徒たちに言っている言葉を借りれば、
「それは練習ではなく、単なる時間の無駄」だったというわけです。
練習を「単なる時間の無駄」にするか。
それとも、しっかりと結果に結びつけて行かれるのか。
そのポイントは「ビジョン」と「くふう」、
そして、「こだわり」にあります。
最初に出会い、音楽を志すきっかけになった楽器はピアノでした。
小学校4年生のとき、
同級生が(足踏みオルガンで)弾く華麗なるショパンに胸を射貫かれ、
毎日のように親にねだり続け、
やっと買ってもらえたのは中学1年の夏休みでした。
父が好きだったジャズばかり聴いて育ち、
当時ビートルズに傾倒していた私は、
まともにクラシックというものを聴いたことがありませんでした。
それなのに、
ショパンが、とか、ベートーヴェンが、とか、
妄想だけで語っていた。
ヴィジョンなんか、あるわけがありません。
ピアノをどう弾きたいか?
何を弾きたいのか?
そもそも、なぜピアノなのか?
そんなヴィジョンもないままに、
ただただピアノを弾いていた。
人よりも何年も遅れてピアノをはじめた私が、
練習で最もこだわったのは「時間」でした。
それも、「ピアニストは一日○○時間練習する」というような情報を鵜呑みにして、短絡的に、○○時間弾けばピアニストになれると考えたのでした。
まだバイエルレベルのピアノしか弾けなかったため、
どんなにゆっくり弾いたって、1曲は1分足らずで終わってしまいます。
そこで、私がやった練習は、
「ただひたすらハノンを弾き続ける」でした。
ご存じのない方のために解説すると、
ハノンとは指の訓練をするための練習曲集のこと。
「ハノンの1番から25番までを、毎日5回ずつ弾く」という、
謎のノルマを自分に課し、
ただひたすら、ドミファソラソファミ・・・とやっていたのです。
ハノンの練習だけで一日の練習が終わってしまうことも、
ざらにありました。
歌がうまくなりたいからと、
「毎日腹筋100回やってます!」なんていうのと、
なんら変わりありません。
「くふう」ゼロ。
スポ根です。
大リーグボール養成ギブスです。(わかるかしらん?)
どんなプレイが素敵なプレイか、
というような「ヴィジョン」がなければ、
「こだわり」は生まれません。
譜面が読めること。
それも、どんなに複雑な譜面もスラスラと読めること。
どんなに速い曲も、難易度の高い曲も、
正確に、よどみなく弾けること。
それ以上、何を目差せばいいのか、
素晴らしい演奏とは、どんなものなのか、
当時の私には、さっぱりわかりませんでした。
「ヴィジョン」と「くふう」と「こだわり」。
この3つがなければ、音楽は、
いや、おそらくどんなことも、けして上達しません。
「ヴィジョン」がないから、
指の長さや、絶対音感や、音大生や・・・
そんなわかりやすい、「ブランド」に憧れ、
挙げ句の果てに、挫折、となったわけです。
「くふう」のない練習を、ただダラダラとやっているから、
何時間やっても、本質を捕らえることができなかったのです。
そして、本質を捕らえることなく、
表面的な部分だけを追いかけているから、
「こだわり」を持つこともできなかったのです。
挫折する人には、理由がある。
この頃、そう学んでいれば、
ギターはもう少しうまくなっていたかも知れませんが・・・。
そのお話は、また今度。
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