大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

練習を「単なる時間の無駄」で終わらせないための3つのポイント。

   

歌を志すことになったのは、
私にとって、ある種の「挫折」でした。

そんなことを言うと、
ずっと歌を志して、報われていない人たちに、
失礼に当たるかもしれませんが。

だって、挫折だったことには変わりないし、
今でも、やっぱり、ちょっぴりそう思っています。

 

ピアノだって、ギターだって、
毎日、毎日、とりつかれたように、
がむしゃらに練習していましたが、
どんなにがんばってもちっともうまくなりませんでした。

私が日頃、生徒たちに言っている言葉を借りれば、
「それは練習ではなく、単なる時間の無駄」だったというわけです。

 

練習を「単なる時間の無駄」にするか。
それとも、しっかりと結果に結びつけて行かれるのか。

そのポイントは「ビジョン」と「くふう」、
そして、「こだわり」にあります。

 

最初に出会い、音楽を志すきっかけになった楽器はピアノでした。

小学校4年生のとき、
同級生が(足踏みオルガンで)弾く華麗なるショパンに胸を射貫かれ、
毎日のように親にねだり続け、
やっと買ってもらえたのは中学1年の夏休みでした。

 

父が好きだったジャズばかり聴いて育ち、
当時ビートルズに傾倒していた私は、
まともにクラシックというものを聴いたことがありませんでした。

それなのに、
ショパンが、とか、ベートーヴェンが、とか、
妄想だけで語っていた。

ヴィジョンなんか、あるわけがありません。

ピアノをどう弾きたいか?
何を弾きたいのか?
そもそも、なぜピアノなのか?

そんなヴィジョンもないままに、
ただただピアノを弾いていた。

 

人よりも何年も遅れてピアノをはじめた私が、
練習で最もこだわったのは「時間」でした。

それも、「ピアニストは一日○○時間練習する」というような情報を鵜呑みにして、短絡的に、○○時間弾けばピアニストになれると考えたのでした。

まだバイエルレベルのピアノしか弾けなかったため、
どんなにゆっくり弾いたって、1曲は1分足らずで終わってしまいます。

 

そこで、私がやった練習は、
「ただひたすらハノンを弾き続ける」でした。

ご存じのない方のために解説すると、
ハノンとは指の訓練をするための練習曲集のこと。

「ハノンの1番から25番までを、毎日5回ずつ弾く」という、
謎のノルマを自分に課し、
ただひたすら、ドミファソラソファミ・・・とやっていたのです。

ハノンの練習だけで一日の練習が終わってしまうことも、
ざらにありました。

歌がうまくなりたいからと、
「毎日腹筋100回やってます!」なんていうのと、
なんら変わりありません。

「くふう」ゼロ。

スポ根です。
大リーグボール養成ギブスです。(わかるかしらん?)

 

どんなプレイが素敵なプレイか、
というような「ヴィジョン」がなければ、
「こだわり」は生まれません。

譜面が読めること。
それも、どんなに複雑な譜面もスラスラと読めること。

どんなに速い曲も、難易度の高い曲も、
正確に、よどみなく弾けること。

それ以上、何を目差せばいいのか、
素晴らしい演奏とは、どんなものなのか、
当時の私には、さっぱりわかりませんでした。

 

「ヴィジョン」と「くふう」と「こだわり」。

 

この3つがなければ、音楽は、
いや、おそらくどんなことも、けして上達しません。

「ヴィジョン」がないから、
指の長さや、絶対音感や、音大生や・・・
そんなわかりやすい、「ブランド」に憧れ、
挙げ句の果てに、挫折、となったわけです。

「くふう」のない練習を、ただダラダラとやっているから、
何時間やっても、本質を捕らえることができなかったのです。

そして、本質を捕らえることなく、
表面的な部分だけを追いかけているから、
「こだわり」を持つこともできなかったのです。

挫折する人には、理由がある。

この頃、そう学んでいれば、
ギターはもう少しうまくなっていたかも知れませんが・・・。

そのお話は、また今度。

◆毎朝お届けしている書き下ろしメルマガ【メルマガ365】。「歌の練習方法」を連載中です。もちろん無料。バックナンバーも読めますので是非。ご登録はこちらから。

◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, イケてないシリーズ

  関連記事

伸び悩む人にする10の質問

「キミ、ホントにうまくならないなぁ。」 今日は、そんな風に言われた時、 または、 …

「習うより慣れろ」vs「慣れるより習え」

「歌なんか習う必要ないでしょ? かえって個性殺されちゃうから、やめた方がいいよ。 …

やっぱ、英語なんだよなぁ。

日本語の歌を歌っているとめちゃくちゃカッコいいのに、 英語の歌になったとたんに、 …

誤解だらけの「ロック声」。そのシャウトでは、危険です。

ハスキーで、ひずんだ感じの、 いわゆる「ロック声」には、いろいろな誤解があります …

耳で聞くのではない。脳で聞くのだよ、明智くん。

少し前、まずオケを聴け!歌うのはそれからだ!という記事で 歌のピッチやリズムが悪 …

情報の価値を最大化するための5つのヒント

おなじ曲を聴いているはずなのに、 聞き手によって、耳に入ってくる情報はまるで違い …

中途半端なメソッドで教えない。学ばない。

メソッドには3種類あります。 ひとつは教え手自身が、複数の学校で、または専門家か …

やっぱ、最後はエネルギー。

歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …

「キミ、グルーヴないね」に悩んだら

少し前に『で、グルーヴって、なんなん?』 という記事を書きました。   …

人に認めてもらえない3つの理由

趣味で、仕事で、コミュニティで、 認められたいのに、認められない。 自分は認めら …