大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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「違うんだよねぇ」と言われる「イケてないコピー(orカバー)」とは?

      2015/08/13

「自分にたくさんの感動やエネルギーを与えてくれた名曲や名盤の数々を、
いつか自らのプレイで再現したい。」
アマチュアからプロフェッショナルに至るまで、
プレイヤーを志す人なら誰もが、少なからずそんなことを思い、
名曲や名盤をコピーしたことがあるはずです。

これまで、プロアマ問わず、さまざまな人たちが演奏する、
さまざまな曲のコピーバージョン&カバーバージョンを聴きいてきました。

気づいたことは、
「人それぞれの曲の聴き方は、びっくりするほど違う」ということ。
同じ曲をカバーしているはずなのに、大切にするポイントが全然違う。

 

名プレイヤーといわれる人が、「完コピ」をしても、
他の人が聴くと、「なんか、全然違うんだよね」「わかってねぇなぁ」となってしまう。

譜面上は同じことをやっているはずなのに、一体何が違うのか?

何が気持ちよくないのか?

何が「違うんだよねぇ」となってしまうのか?

今日は私の視点から、その「違い」を分析してみたいと思います。

 

1. 音色が違う。

同じフレーズを演奏しても、音色が違うと全く別物に聞こえてしまいます。
人は、音色をひっくるめて、そのフレーズを認識しているのです。

たとえば、同じ歌でも違う声で歌われると全く印象が変わるのと同じように、
音色が持っている「雰囲気」や「ムード」が、
楽曲全体の印象を左右する部分はとても大きいわけです。

そう思えば、ドラムのチューニングや、ギターの音色を徹底的に研究し、
再現してみようという努力をすることが、
自分自身の表現の幅を広げることは間違いありません。

 

もちろん、完コピがすべてではありません。
音色が自分自身のアイデンティティの域まで行っていて、
作為的にオリジナルの雰囲気を変えようと演奏するのも、
ひとつの方法です。

いずれにしても、音色にこだわることは、ボーカリスト含め、
すべてのミュージシャンの大きな課題のひとつといえるでしょう。

 

2.グルーヴが違う。

 
音楽はグルーヴ。

グルーヴということばには解釈がたくさんあるようですが、
ここでは広く、「うねり」とか「ノリ」と考えたいと思います。
それぞれの楽器が生み出すグルーヴ、
そのアンサンブルからが生まれるグルーヴ、
リズムパターンから生まれるグルーヴ、
ダイナミクスで表現されるグルーヴ、
メロディが醸し出すグルーヴ・・・

そうしたさまざまな「うねり」が
その曲の大きなグルーヴとなって、
聴く人を高揚させ、感動させるのです。
つまり、グルーヴは、その曲特有の味わいのようなもの。

 

たとえ、テンポ通りに、クリックにあわせて完璧に演奏できたとしても、
グルーヴがなければ、曲自体が無味乾燥のものになってしまう。

グルーヴを徹底的に解釈することは、
自分自身の音楽の幅を圧倒的に広げてくれます。
 

3.パフォーマンスが違う。

オリジナル曲を演奏するときと、人様の曲を演奏するときでは、
思い入れや解釈が違うのは当然です。

ましてや世界的に著名なミュージシャンには当然のようにアチチュードがある。
素晴らしい名曲を作り上げたというだけで、醸し出されるオーラは格別でしょう。
完璧にカラダにしみこむまで練り上げられたフレーズには、チカラがあります。
レコーディングの現場やライブでの雰囲気も全然違うはず。
 

そんなオリジナル・パフォーマンスの持つパワー感に近づく、
再現する、越えるためには、
徹底した工夫と解釈、そして人間力しかありません。
 

たとえ再現は叶わなかったとしても、
こだわりを持つことは大きく自分自身のパフォーマンスを成長させてくれるはずです。

 

いかがでしょうか?

今一度、自分自身のカバー曲のパフォーマンスを点検してみませんか?

まだまだ、やれることはありそうです。

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 - イケてないシリーズ

Comment

  1. 井上明子 より:

    MISUMI 様

    初めまして。
    遅い時間に失礼致します。
    教えて頂きたいことがありまして、こちらで書いて良いのかずっと迷っていましたが、思い切って質問させてください。
    御迷惑でしたら返信は無くても大丈夫です。

    声の出し方なんですが。

    私は訳がありまして、この15~16年殆ど声を出していません。
    あることが理由で人と話すことを避けていたからです。
    気を許せる友達には話せますが、ほんの少しの会話でも声が枯れてしまいます。
    歌うことは好きなので、たまに部屋で歌っていますが、やはり声が枯れて長く歌えません。
    あと昔から疲れやすい体質なので、疲れたかな…と感じたらやはり声が出にくくなります。
    それと風邪を引くと必ず声が出なくなります。
    声帯が鍛えられていないのが原因かと思っています。

    少しずつでも声を…喉になるのでしょうか?声帯を鍛えて、人前で長く話せるようになりたいです。

    昔から「声は小さい」とは言われていました。

    基本的な何か方法がありましたら、教えて頂けますと有り難いです。

    長くなりまして申し訳ありません。
    出来ればよろしくお願い致します。

    井上明子

  2. otsukimisumi より:

    発声は筋肉運動です。
    声を出す以外に、ノドを鍛える方法はありません。
    まずは、大きい声を出そうと思うよりも、小さい声でかまいませんので、息漏れのしない声を出す練習をしてください。
    息の音がしないよう、しっかり鳴る声です。
    息漏れがしないように声を鳴らしながら、童謡のような簡単な歌を繰り返し歌いましょう。
    だんだんと声にチカラが戻ってくることが感じられると思います。

    お話から、呼吸や姿勢も衰えていると考えられます。
    姿勢や呼吸が衰えると気持ちも落ち込みがちです。

    少しずつでもいいので、とにかく毎日、姿勢を正し、声を出すことを続けていれば、
    必ず声を出すのが楽しくなる日がくるはずです。

    がんばってください。

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