大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「練習しなくちゃ」と思ってしまう時点で、 ダメなんです。

      2016/10/27

「やらなくちゃいけないってわかっているんですけど、なかなかできなくて・・・」

 

練習している?と質問すると、
恥ずかしそうに、こんな答えが返ってくることがよくあります。
人間はがんばるのが苦手。
やらなくちゃいけないとわかっていることに、
なかなか手をつけられないというのは、多かれ少なかれ、誰にでもあります。
練習しなくちゃいけないのはわかっているのに、
思わずテレビのスイッチを入れてしまう。
携帯をいじってしまう。
ネットサーフィンをしてしまう。
ちょっとだけ。ちょっとだけ。。。
そんな風に思って、罪悪感を感じながらも、ずるずる時間を過ごすうちに、
気がついたらえらく時間が経っていて、
もう声を出すには遅すぎる。

 

あ〜あ、今日も練習できなかったなぁ。。。
ま、明日早起きしてやればいいか。

 

 

朝は朝で寝坊する。
寒くてカラダが動かない。
そもそも練習したくても部屋が寒い。
家族が気になる。
そうして、部屋が暖まって、家族が出かけるのを待って、
とするうちに、
宿題しなくちゃ、銀行行かなくちゃ、洗濯しなくちゃ・・・と
次から次へと雑用が思い浮かび、
気がつけば自分も出かけなくちゃいけない時間。
そうやって一日、二日と毎日が過ぎ、
気がつけば、また、恐怖のレッスンの日がやってきて、
「練習してるの?」とおっかない先生に質問されてしまう。

 

 

レッスンの日に叱られる怖さに、
慌ててちょこちょこっとするのは、「おさらい」に過ぎません。
そんなことで上達するわけもない。
「よくおわかりで・・・」と頭を掻いている人もいるでしょうか。

私自身、高校時代に通っていたピアノのレッスンはそんな感じでした。
慌てて練習して、家を飛び出して、
ピアノの上に譜面を忘れてしまう、などということも、よくありました。
もちろん、ピアノはてんで上達しませんでした。
プロになりたいと思ったこともなかったわけではないですが、
そんなことでなれるわけもありません。

 

歌は違いました。
学校から帰るとすぐに部屋にこもって、大音量で音源をかけながら歌う。
ピアノを弾きながら歌う。
夕食が終わると、22時まではピアノを弾きながら歌う。
22時を過ぎると、ステレオの音を小さくしたり、ピアノの消音をかけたりしながら、
毎晩12時1時まで歌っていました。
(二世帯住宅で同居していた父方の親戚のみなさま、ご近所のみなさま、
ご迷惑をおかけしました〜〜!)

 

思い返しても、不思議ですが、
自分で練習をしていたという意識はまったくありませんでした。

 

あの曲を歌えるようになりたい。
あの音を出せるようになりたい。
あの人みたいに歌いたい。

 

まさにゲームを攻略するようなワクワクした楽しさが、
そこにあっただけです。

 

歌えば歌うほど、音域は広くなり、難しい音が取れるようになり、
早いことばが発音できるようになる。
1曲通して、アドリブから、呼吸のタイミングから、
全部そっくりに歌えたときの、「やった感」は、ものすごいものがありました。

 

それがアルバム1枚まるまる歌ってみたい。
どうせなら、その人の曲、全部やってみたい。。。
と、とどまることのない欲望になっていたように思います。
本当にオタクだったのでしょう。

 

人は、楽しくないことは一所懸命できません。
一所懸命できないことは絶対に上達しない。
「練習しなくちゃ」と思ってしまう時点で、
だから、ダメなんです。
“Must”や”Should”ではなく、”Want to”であるべきです。
楽しさが見つけられない。
それを楽しいと思えない。
そんなときは、

マインドを変えるか、
やっていることを変えるか、二つにひとつしかありません。

 

つまり、楽しめるように、考え方を変えるか、
別の、もっと楽しめることを探すか、です。
一時的にやりたくない時期や、練習できない時期がある、という人はともかく、
いつもいつも「やらなくちゃ」と思うようなら、
それは向いていないから。
もっともっと楽しめて、好きで、得意なことを探す方が、
よほど時間を有効につかえますね。

スライド1

明日15時頃発行のメルマガno.117では、成績や仕事のために、
どうしてもやらなくちゃいけない課題がある人のための、
『気が進まない課題をこなす方法』をお届けする予定です。

バックナンバーも読めますので、よろしければ是非こちらから登録してくださいね。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, イケてないシリーズ

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

うまくなる人の5つの条件

「うまくなりたかったら、やっぱヴォイトレしなくちゃダメですかね?」 「学校みたい …

「出会い」を求めるなら、手間暇お金を惜しまない!

「僕、どんなの聴いたらいいんでしょう?」 学生から、時々、こんな謎の質問を受けま …

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

一所懸命やりがちな、『イケてない練習』

「歌ってどうやって練習しているの?」 レッスンを担当することになったボーカリスト …

解像度を上げろ!

歌で伸び悩んでいる人や、思ったように評判が上がらない人に、真っ先に疑って欲しいの …

ネックの曲がったギター vs. 姿勢の悪いヴォーカリスト

姿勢やフォームが悪いヴォーカリストは、 ネックの曲がったギターに例えるのがもっと …

やっぱ、最後はエネルギー。

歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …

「そこまでやる?」がオーラになる。

「そこまでやらなくても・・・」 思わず、そんな風に言いたくなるほど、こだわりの強 …

「慣れる」と「油断しない」の塩梅がムツカシイ。

今日、久しぶりにひとりで買い物に出かけました。 買い物に出たのは文具なのですが、 …

ヴォーカリストだって、もっと「音色」にこだわる!

「ロックは出音とグルーヴ、ステージプレゼンス」 と繰り返し書いてきました。 筆頭 …