大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「好きなことやれよ」

   

「好きなことやれよ。
好きなことのない人生なんて、つまんねーぞ。」

私の人生にもっとも影響を与えた、
父の思想の象徴とも言えることばです。

10代のはじめ頃から音楽にどっぷりだった私。
「なに言ってんの?
嫌いなことやる人間なんていないでしょ。」と、
ティーンエイジャーらしい相づちを打っていたものですが、
父から見たら、まだハンパだったようで・・・。

あれは高校2年生だったか、
試験前に部屋にこもって勉強をしていたら、
コンコンと、父が部屋をノックするのです。

「おまえ、今日はギターの練習はどした?」

「は?試験前じゃん。」

「おまえはギターの練習と、試験勉強とどっちが大事なんだ?」
(親の言うセリフか!?)

「なに言ってんの?今は試験勉強に決まってんじゃない!」

「へー」
父は意外そうにそう言うとそっとドアを閉め、
「俺の娘が、試験の方が大事だっていうかねー」と、
ひとりごとだか、なんだかわからない、
おどけた調子でつぶやきながら、
階段を上っていきました。

その少し前に、担任との面談で、
「お前は学力テストは学年トップクラスなのに、
定期試験は下から数えた方が早いだろ?
なんでもっと勉強しないんだ?」と言われ、

「私がやりたいのは音楽です。
高校時代、やらなくちゃいけないのは、
勉強なんかじゃないんです!」

なーんて、
超生意気なことを言い放ったくせに、
「さすがに赤点は嫌だなぁ」と、
勉強していたとような記憶があります。

ハンパであります。

好きなことをやり続けようとすれば、
さまざまな困難に出会います。
でも苦しいから、
どこかで逃げ道をつくる。

「できない」と思いたくないから、
「やれない」理由を考える。

いろんな”MUST”を勝手に背負い込んで、
肝心の「好きなこと」「やりたいこと」を、
どんどん閉め出してしまう。

自分の日常を”MUST”で埋め尽くして、
それを人生の本筋に据えてしまう。

でも、です。

“MUST”という価値観がぜんぶ崩壊して、
人生がリセットされたとき、
自分の心の中に深く残る、
「大切なもの」「好きなこと」こそが、
自分自身の本質なのではないか?

仕事とか、学校とか、勉強とか、経済とか、
そんな価値観がリセットされても、

好きなことはなにか?
大事なものはなにか?
やりたいことはなにか?

コロナ自粛を経て、
そんな人生の本質に気づかされた気がする今日この頃。

「好きなことやれよ」

ティーンエイジャーの自分から、
老い先短い(?)未来の自分に、
ちょいと活を入れられた気分で、
このことばを心の中で繰り返しています。

 

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, My History

  関連記事

鳴らない楽器と鳴らせないプレイヤー

輸入物の下着の値段を見て、 ひっくり返りそうになったことのある女子なら、 「洋服 …

「プロ」「アマ」という線引きは、 もうそろそろ卒業したい。

「俺なんか、ただのセミアマだからさー」。 高校時代に、 一緒にバンドをやっていた …

no image
やる気が出ないときは、やっちゃダメ!

「なんか、どうもやる気がでなくって。 これじゃいけないと思うんですけど。。。」 …

「オリジナリティ」ってなんなのよ?

「○○って落語家はすごいんだぞ。 一流と言われた落語家をぜんぶ研究して、 みんな …

成長痛を抱えて走れ。

今年前半は、 とにかくいろんなことが重なって、 頭の中がパツパツな状態が続いてい …

no image
「情報」は量より質!

私はボイトレや声、カラダに関する本など、 気になるものを定期的にどかっと大人買い …

「歌いたいっ!」が胸を叩くから。

トレーナーをはじめて、 ずっと大切にしてきたことは、 「昔の自分」のまま感じて、 …

きっと、低気圧のせい

昨日から今日の夕方にかけて、 とにもかくにも引き込まれるように眠くて、 仕事がは …

成長に痛みが伴うのは、 本気度を試されているから。

高校1年の夏だったと記憶しています。 手足が痛くて、眠れない夜が続きました。 筋 …

リスペクトくださいっ!

私の通った女子校には、なんとも不思議な風習がありました。 学校のある駅を降りた瞬 …