大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「プロ」「アマ」という線引きは、 もうそろそろ卒業したい。

   

「俺なんか、ただのセミアマだからさー」。

高校時代に、
一緒にバンドをやっていた2才年上のベーシスト。
あちこちのライブハウスで活動していたのでしょう。
当時、まわりの仲間は、
「彼はプロだから」と一目置いていました。

そんな彼に、尊敬の念をこめて、
「プロなんだもんね。すごいよね。」と言ったときの、
答えが冒頭のことばです。

今でいえば、たぶんフリーターに近かったのでしょう。
「プロなんて呼ばれたら恥ずかしい」というような、
自嘲的な反応でした。

下から上は見えない、とはよく言ったもの。

文化祭と自主ライブくらいしかやったことのなかった、
ドのつくアマチュアだった私。

プロになりたくて、
どうやってなったらいいのかも、
いや、プロってなんなのかも、よくわからなくて、
毎日悶々とギターを弾いていた頃です。

「いろんなライブハウスで演奏している」というだけで、
素直に「プロなんだ!」と感動したし、
プロ=「すごいんだ!」と尊敬しました。

そもそも、プロがなんだかわからないんだから、
セミアマもセミプロもなんだかよくわかりません。
っていうか、アマチュアとプロの違いってなんだろうと、
真剣に悩んだこともあります。

でもね。
「プロ」になりたかった。
なんだかわかんないけど、
「プロ」と呼ばれたかった。

テレビに出たいとか、
武道館でやりたいとか、じゃなく、
「プロ」になりたい。
プロ中のプロに、「プロ」と認められたい。

大きいんだか、小さいんだか、
よくわかんない、漠然とした夢でした。

高校生ならいざ知らず、
大学3年4年でこういうことを言っていると、
よほどの世間知らずか?
アタマ悪いのか?
という扱いを受けます。

「キミさ、プロってのは、誰よりも目立つ、優れた人がなるんだよ。」
「あのね−、その顔で、テレビ出る気?」
「おまえさぁ、プロなんてのは、演歌のカラオケつくってるヤツのこと言うんだぜ」
「俺らもう22だぜ。いつまで夢みたいなこと言ってんだよ。」

当時言われたことばのコレクションは、
今も私の宝です。

どれも正しい認識であり、
一個も当たっていないとも言える。

みんなそれなりに、私のことを考えて、
必死で私を説得しようとしてくれたわけですが、

結局だれひとりとして、いや、自分自身でさえ、
私を説得することはできなかったんですねー。

どこからが「プロ」で、
どこまでが「アマチュア」か、
その線引きは曖昧で、
なんなら、どうでもいいこと。

メジャ−の仕事や、
レコーディング、ツアー、テレビのお仕事、
メディアに乗っかるような
アニメやゲームのお仕事だけが、
プロのお仕事じゃなくって、

インディーズのサポートだって、
ライブハウスで演奏することだって、
イベントや結婚式で演奏することだって、
お店で演奏することだって、
カラオケを制作することだって、
人に教えることだって、

それで食べている人ならぜーんぶプロ。
いや、そのお仕事だけで食べられなくても、
音楽に関係するお仕事でお金をもらっていたらプロとも考えられます。

だからといって、
プロならみんな演奏や歌が素晴らしい、というわけでもありません。

一方、音楽でお仕事をしていなくても、
「なんでプロにならなかったんだろう」と思えるくらい、
素晴らしい演奏をする人や、
一瞬で心をつかむ歌を歌う人もたくさんいます。

プロ、アマ、という線引き自体、
なんの意味もないことなんですよね。

一流のプロの中には、
「プロはやっぱりうまいよね」と言われると、
「十把一絡げに、その辺のプロと一緒にしないでくれる?」と、
ムッとする人もいます。

「アマチュアだから、こんなもんで勘弁して下さい」
みたいに、アマチュアという肩書きを、
言い訳に使っちゃう人もいたりします。

「プロ」「アマ」という線引きは、
もうそろそろ卒業したい。

そんな曖昧な線引きで、
安心したり、油断したり、傷ついたり、甘えたり、
ムッとしたり、落ち込んだりするのは、
ほんとに時間の無駄。

自分をどこかのポジションに置かないと、
居心地が悪いのは日本人の悪い癖かもしれません。

最後に試されるのは、真剣度。パッション。
そして、取り組む姿勢。

「本物だ」「プロフェッショナルだ」と認定するのは、
自分じゃなくて、世間なのですよね。

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