大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

100万人と繋がる小さな部屋で。

   

デビュー前からヴォイトレを担当している、
アーティストのライブに行ってきました。

大箱のオールスタンディング型ライブハウスは超満員。
彼女の歌に乗って、会場全体が波打つように揺れていました。

 

トレーニングを担当するアーティストたちの、
そんなコンサートを
2階席、3階席から見下ろすとき、
心が打ち震え、自然と涙があふれます。

 

私の、この小さな部屋で、
彼らは、彼女たちは、
悩み、苦しみながら、

自分のカラダと、
時に向き合い、
時に反抗し、
時に抵抗しながら、
少しずつ折り合いをつけていきます。

やがて、その、カラダという、
あまりにも表現力豊かで、
謎めいた楽器と一つになって、
素晴らしい音楽を世の中に送り出していくのです。

 

この小さな部屋は、
彼らの歌をこれから耳にするであろう、
100万人の人たちと繋がっています。

 

100万人の人たちの心に届く声を持つ、
彼女ら、彼らが通り抜ける小さな部屋で、

私にできることは、

一ミリでも彼らの苦痛が和らぐように、
一瞬でも、彼らが心地よく歌える瞬間が続くように、
一グラムでも、彼らの心に自信と誇りを与えられるように、

自らの絶望的な無能さに腹を立てたり、
無力さに打ちひしがれたりしながら、

そして、時々、
彼らの胸のすくような声や、
輝くような笑顔に、
天にも昇る気持ちになりながら、

ただただ、祈るように、
全身全霊でトレーニングをするだけです。

 

まだまだできることはある。

まだまだやらなくちゃいけないことはある。

 

小さなことにくよくよしたり、
むしゃくしゃしたりしている、暇はない。

ともすれば、へこたれそうになる自分自身のお尻を蹴飛ばしながら、
今日も、真っ直ぐ前を向いて、進むのみです。

◆毎朝お届けしているMISUMIの書き下ろしメルマガ【メルマガ365】。
バックナンバーも読めますので是非。ご登録はこちらから。
◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。

 - The プロフェッショナル, ヴォイストレーナーという仕事

  関連記事

MTL14周年〜「苦労話」は、明日へのエネルギー!〜

歌うこと以外の仕事をすることなど、 これっぽっちも考えていなかった私が、 断り切 …

「観客総立ち」を演出するプロの仕掛け

先日、キャロル・キングのケネディー・センター名誉賞をたたえて、 アレサ・フランク …

「興味を持ってもらう」 ただそれだけで、 人はどれほどのエネルギーを受け取れるのか。

自主ロックダウンも間もなく40日。 少し前から、インターネットの紹介サービスを利 …

BPM1目盛りの職人芸

BPMということばが普通に使われるようになったのは、 いつの頃からかわかりません …

エネルギーのピークは本番に持っていく

「歌う当日って、どんなことを心がけたらいいですか?」 という質問をよく受けます。 …

「いいもの」と「売れるもの」はイコールではない!?

「どんな仕事でも、結局、営業力だ。」 という意味の言葉を聞いたことがあります。 …

「生みの苦しみ」

作品をつくり出すことは、非常に苦しい作業です。     例え …

最後に「正解」を決めるのは誰だ?

とあるレコーディング現場でのことです。   ブースに入って、ソロプレイ …

「誰に学ぶか?」vs.「誰が学ぶか?」

中学1年でやっとの思いでピアノを買ってもらって、通い始めた近所のピアノ教室。 2 …

ボイトレ七つ道具、公開(^^)

最近、講演やセミナーをするときだけでなく、通常のボイトレをするときにも、 声のし …