「いい声が出ない」には、いつだって理由がある。
2017/10/10
歌うというのは、カラダの中と外を繋げる作業。
少しスピリチュアルな言い方をすれば、
心の中が、苦しいことで詰まって、流れが悪くなっていると、
本当の声が外に出てきません。
プライベートレッスンのはじめに、いつも必ずヒアリングをするのは、
そんな、アーティストたちやクライアントさんたちの
心身の状態をチェックするためでもあります。
そのためにレッスン時間を少しだけ長めにいただいています。
実際は、インターフォンで「こんにちは」と声を聴いた瞬間、
玄関を入って来た瞬間に、
「あれ?なんか、持ってきた」とぴんと来るわけなのですが。
あらためて、本人に、「調子はどう?」と話しかけると、
そんな風にフランクに聞く人がなかなかいないからなのか、
小さな密室の中なので、安心するのか、
さまざまな本音が口から出てくることもしばしばです。
トレーナーというのは、弁護士さんやお医者さんと同じくらい、
守秘義務があると心しなくてはいけない。
そんな、思いを新たにする瞬間でもあります。
このコミュニケーションがうまくいかないと、
実は、レッスンも、うまく進みません。
何しろ、出てくる声が気持ちよくない。
出している本人が声を出す気分じゃないのだから、当たり前です。
大切なレッスン時間をおしゃべりに費やすのは、
もちろん、本意ではないのですが、
時に、短いはずのヒアリングが、カウンセリングとなり、
やがて、話している方が泣き出して、
激励したり、叱ったり、一緒に泣いたり・・・
などと言う、思わぬ方向に発展することもあります。
そうして、感情を爆発させることで、
自分の中にため込んだ老廃物を吐き出せるのでしょうか?
気持ちが落ち着くと、ビックリするほど、気持ちのいい、
明るい声が出てくるのです。
本番前、すっかり自信喪失して、不調に陥っていた子が、
この作業のおかげで、
「ものすごくいい声が出て、スタッフさんにほめられました」
と、連絡をくれることもあります。
誤解を怖れずに言えば、
これも広義で「ボイトレ」なのではないか。
少なくとも、私の役目のひとつなのではないかと考えています。
トレーナーとしての私の仕事は、自分がベストを尽くすことではなくて、
アーティストやクライアントさんたちのベストを引き出すこと。
そんな思いで、今日も、正面から、
アーティストたち、クライアントさんたちと向き合って行きます。
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こんな風に書くと、生徒たちの悩みを聞いてあげる、
女神のような先生みたいでしょうか?(^^)
もちろん、違います。
レッスンは徹底的にロジカルに、かつ、ハードに、ゴリゴリやってます。
ダメダメな子たちに、大きな声を出すことも、たま〜にあります。
業界の人にはマジトレを「虎の穴」と呼ぶ人も。。
「虎の穴」の「鉄のノドを持つ女」のカウンセリングの図って…かなりROCKです。
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