大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

気にならない人は、それでいいじゃん。

   

多くの人が、何かしらのストレスを感じて、初めて自分の「声」の存在に気づきます。

「風邪を引いて声が出なくなった」「応援で声が枯れた」という健康上のものから、「人に頻繁に聞き返される」「自分の声が届いていないと感じる」という、コミュニケーション・ストレス。
中には、「人に声をけなされた」「歌を笑われて恥をかいた」などの負の経験による、トラウマがあるという人もいます。

それ以外の人は、じゃあ、みんな自信満々なのかというと、そうではなくて、
実際、「自分の声を好きですか?」と質問すれば、7割が「好きではない」「嫌い」と答えますし、初対面で私が名刺を渡すと、必ずと言っていいほど、「ボイトレ興味あるんですよ」「私の声ってどうなんでしょうね?」と質問してきます。
つまり、漠然とした不安やストレスを抱えている人は、7割以上いるということです。

この潜在的な不安やストレス、さらには、声がよくなることのメリットをいかに世の中に伝えて、ボイトレのニーズを掘り起こすか。
エンドレスで出版社と企画のやり取りをしていた時も、これが大きな課題。
それができなければ数字が出ない、というわけです。

10数年の間、様々な人とやりとりをしながら、あれこれ知恵を絞りましたが、結果、今まさに困っているという人以外、声に対する不安やストレスが、人生で解決しなければいけない事柄の優先順位の上位にあがってくることは、まず、ないだろうという結論に至りました。

生きるということは不安やストレスの連続です。
お金や健康、人間関係、教育に仕事。。。
そんな数え切れない不安やストレスを抱えているひとたちに、日頃なんの不自由も感じていないような「声の不安」を、わざわざ煽りたてるのは、我田引水以外のなにものでもない。
そんな風に思うようになったんです。

一方で、人や自分の声にびっくりするほど敏感な、声コンシャスな人というのが、少数派ながら存在します。

話すことばに影響力があって、スピーチのうまい人ほど、そうした意識が高い傾向があり、
人の話す声を聞いては、「あの人はあの声ではもったいない」
「老けて見えるのに、なんで声のトレーニングしないんだろう」と、ことあるごとに語ったります。
声はブランドだ。声はエネルギーの象徴だ。
という、私がつかいそうなことばで、声を語る人さえいます。

そうして、ご自身がボイトレを受けるだけでなく、お弟子さんやクライアントさんたちにボイストレーニングを勧めてくれるのです。

声というのは不思議なもので、一旦そこに焦点があいだすと、なにかにつけ気になる。
だから、レッスンを受けた人たちは、またそのお友だちや知り合いに、ボイトレを勧める。

もうね、一般にボイトレを広めるには、こんな風にちょっとずつ、周囲を啓蒙していく。
そんな、草の根からのボイトレ運動しかないと思うわけです。

 - ビジネスヴォイス, ヴォイストレーナーという仕事, 声のはなし

  関連記事

レッスンでは、トレーナーの「アーティスト性」は無用どころか、邪魔なんだ。

レッスンの折には、多かれ少なかれ、 生徒たちに、歌を歌って聞かせるシーンというの …

一生ヴォイストレーナーのいらない人になる。

「歌なんか、人にならうもんじゃないだろう。」 そんなことばをどれだけ言われてきた …

「やる気」の不在

おとなになると、人は、 時に義務感で、 時に人間関係を壊したくなくて、 時に損得 …

ハスキーボイスには2通りある

ハスキーボイスといわれるシンガーは、その発声の特徴によって、 実は2通りに分かれ …

「歌がうまい」って、なんなのよっ!?

歌なんか、習うもんじゃない。 ウンザリするほど聞いたことばです。 正直、私もずっ …

痰がからむ声の不調、あきらめない!回復のステップ|18万PV記事の2025年最新版

コロナにかかってからノドの調子が戻らない。 ひどい風邪で声が出なくなって、何ヶ月 …

何がやりたいかわかんない人に教えるのが一番ムツカシイ。

たいがいの無理難題は受けて立つタイプですが、 レッスンを担当することになって、な …

セルフイメージは声に出る

歌のレッスンをしていると, 歌う前から、「歌えない」「失敗する」と決めている人に …

発声メカニズムを知るだけで声がよくなる人の特徴

「まだ1回しかレッスン受けてないですし、正直、全然練習できなかったのに、なんか、 …

表現者には、いつだって、責任がともなうもの

「ブログ読んでます!」 最近、出会う人にそう言っていただくことが、とても多くなり …