ヴォイストレーナーという仕事
ヴォイストレーナーって仕事は、
本当に難しい仕事だと、日々感じています。
プロのヴォーカリストとして、
レコーディングもサポートもライブも
バンドも、ソロも、コーラスも、
ホントに数え切れなくらいやってきて、
「自分にできること、
自分ができるようになったプロセスを
すべてメソッド化、言語化、コンテンツ化する」をスローガンに、
プロのアーティストからアイドルの卵まで、
さまざまな年齢の、さまざまなシンガーに教えてきて、
音楽学校や音大で教鞭を取り、
スクールもやって、本も書いて、メソッドも組み立てて、
メルマガやブログやその他いろんなメディアで発信しまくって。。。
それでもさ、正直、わからないことは、いまだにあるんです。
あれ?これって、これでよかったっけ?って迷うこともたくさんある。
勉強して、研究して、
たくさんの症例を見て、
また勉強して、研究して。
自分なりに、普遍的なこととか、真理とかに行き当たったと信じているけど、
それでも、やっぱり、ゆらぎの部分とか、迷いの部分とか、
そこから微妙にはみ出すことに出会って。
そのはみ出しを、はたして、それまで自分が組み立てて来たことの中に、
割り切って組み入れていいのか、
それとも、これは、未知の新しいメソッドの扉を開くべき症例なのかと、
迷ったり、悩んだり、苦しんだりしながら、
海外の論文を読んだり、音楽とは全然関係ない本を読んだりしながら
答えを探して…
それでもね。
ヴォイトレに救いを求めに来る子にとって、知りたいのは真理じゃない。
たった今、どうしたら、高い声、いい声、大きい声が出せるようになるのか、
どうしたら、声を出すたびに苦しい、今の自分を変えられるのか、
どうしたら、ノドを枯らさずに、
どうしたら、ちゃんとピッチにあたるように、
どうしたら明日のコンサートで、気持ちよく歌えるのか。
知りたいのは、それだけです。
だから、どれだけこちらが正論を並べても、
どんなに完璧なメソッドを振りかざしても、
たった一人が救えなかったら、
ヴォイトレなんて、なんの価値もないんです。
お偉い先生だけはなっちゃいかん。
たった一人に寄り添えない人間になっちゃいかん。
がんばっても、がんばっても、力およばず、
救ってあげられなかった子たちを思い、
今苦しんでいる子たちを、どうしたら一分一秒でも早く、
気持ちよく歌えるようにしてあげられるかを思い、
これから出会うであろう、たくさんの悩みを抱えた人たちを思い。。。
あぁ、この道は、なんて果てしないんだろうと、
曇天の夜空を見上げる夜です。
修行だなぁ。。。
修行ですよ。
■無料メルマガ『声出していこうっ』。プライベートなお話からマニアックなお話まで、ポップな感じで綴っていきます!(ほぼ)毎週月曜発行!バックナンバーも読めますよ。
関連記事
-
-
「髪の毛一本」にこだわる。
「ヴォーカル(の音量)、”髪の毛一本”上げてください。」 …
-
-
解像度を上げろ!
歌で伸び悩んでいる人や、思ったように評判が上がらない人に、真っ先に疑って欲しいの …
-
-
「興味を持ってもらう」 ただそれだけで、 人はどれほどのエネルギーを受け取れるのか。
自主ロックダウンも間もなく40日。 少し前から、インターネットの紹介サービスを利 …
-
-
「音の立ち上がり」を正確にとらえる
歌い出す瞬間の音。 音を移動するとき、音の階段を上った、その瞬間の音。 その瞬間 …
-
-
進化し続けられなければ、退化するか、腐敗するかしかない。
「『すべてを伝えます』って言うから、講座を受けたのに、その数年後にアドバンストが …
-
-
「天才はみな、オタク?」or「オタクはみな、天才?」
誰に頼まれたわけでもなく、 1円になるわけでもない。 他人から見たら、ただのオタ …
-
-
Never say Never! 「できない」って言うなっ!
「あなたはコーラス向いてないから、やめといた方がいいわ」 「君は声出さないで、口 …
-
-
どうせやるなら「ザ」のつくプロフェッショナルを目差せ!
先日、とある販売店でのこと。 まだまだ新米臭のある若者が、私たちの担当になりまし …
-
-
『ライブ前に自分に問うべき10のことば』
ライブ直前、自分のブログを読み返していると、 なんだか胃が痛いような気持ちになり …
-
-
100万人と繋がる小さな部屋で。
デビュー前からヴォイトレを担当している、 アーティストのライブに行ってきました。 …
- PREV
- 練習場所が欲しい!
- NEXT
- 天才には、がんばらないでいただきたい。