「課題曲」は、何を基準に選ぶべきか?
学校の授業などの教材として、課題曲を決めなくちゃとなると、
さて、一体全体、何を基準に曲を選んだらいいのか、
頭を悩ませるのは、どんな講師も同じでしょう。
クラシックのように長い歴史のある音楽は、
よく研究されて、技術的な難易度が整理されていますから、
おおまかな基準を参考に、次はこれ、その次はこれ、と選べるものなのだけど、
日々移り変わるポピュラー音楽の世界では、基準も難易度も曖昧です。
なので、ついつい、
1.受講生が好きな曲、得意な曲
2. 講師が得意な、教えやすい曲
3. 誰でも知っていそうな、流行の曲、人気曲
などの基準で課題曲を選びがちになります。
しかし、数ヶ月なり、1年なりと、長期でレッスンをしていく場合、
こんな風に曲ありきでレッスンを進めると、さまざまな問題が出てきます。
1.受講生が好きな曲、得意な曲を選ぶ場合
プライベートレッスンなら、基本、本人が歌いたい曲でいいわけですが、、
グループレッスンで、これをすると、あきらかに満足度に差が出ます。
同じクラスに、激しいアニソンが好きな人と癒し系J-POPが好きな人、洋楽が好きな人などが、混在することが普通だからです。
結局、自分の好きな曲の時は一所懸命練習してきて、
嫌いな曲はテキトーに流す、とレッスン精度にムラができがちです。
2. 講師が得意な、教えやすい曲を選ぶ場合
講師にとっては、自分が好きな曲、得意な曲というのは、
教えていても楽しいですし、こだわりを披露できるのでやりがいもあります。
趣味があう生徒ばかりなら、これ以上いいことはないのですが、
残念ながら、特別講座というのでもない限り、
そういうことは、まずないといっても過言ではありません。
3.誰でも知っていそうな、流行の曲、人気曲
今、流行っている曲から、誰もが学ぶべき普遍的な課題を見出すには、かなりなスキルとセンスが必要です。
ネットなどから拾い集めた知識をどれだけ大仰に語っても、意味がありません。
知識やスキルを積み上げて、一定期間の授業を構築するのは、難しくなります。
では、どうするか?
課題曲の選曲は、曲ありきではなく、ゴール設定からすることが重要です。
例えば、発声の基礎、さまざまなリズム、フレーズのバリエーションなどなど、
学ぶ人たちにとって必要な情報を、どんな順番で、どんな風に組み立てて伝えるか。
1曲1曲、知識とテクニックを構築するように、どんな上達の地図を描くか。
これが明確でないまま、やみくもに曲を選んでも、学ぶ人たちが着実に力をつけてもらうには不十分なのです。
また、1つの曲でなにもかもを伝えようとするのではなく、
それぞれの曲に役割を持たせて、一定の回数や授業期間でゴールに到達できるような、
長期的な目線も大切です。
こうした地図をきちんと描いた上で、
さまざまな曲をバランスよく選び、授業を進めていく。
同時に、学ぶ人たちにも、その意図を確実に伝え、モチベーションを高めていく。
時間とエネルギー、そして、お金をかけて、歌にコミットする人たちに
講師たちがやるべきこと、できることは、まだまだたくさんありそうです。
■本気でうまくなりたいと思ったら、迷わず受けて欲しい。
6日間にコミットして、歌に対する自己肯定感を一気にあげてください。
第10期 MTLヴォイス&ヴォーカルトレーニング。11月開講です!
関連記事
-
人は、人を「育てる」ことはできない。
レッスンを担当しているシンガーたちが、 ぐんぐん成長していく姿を見るのは、誰だっ …
-
「ダメ出し」こそが、プロの技を試される仕事なのだ
他人にダメ出しをする人には、 自分のためにダメ出しをする人と、 相手のためにダメ …
-
100万人と繋がる小さな部屋で。
デビュー前からヴォイトレを担当している、 アーティストのライブに行ってきました。 …
-
「完全無欠」を更新する。
「自分の頭の中にあることのすべてを文字化したい」などという、 イカれた考えに捕ら …
-
「それは教えている自分が無能だからではないのか?」
人にものを教えていると、自分の発することばのすべてが、そのまま自分自身への問いと …
-
何がやりたいかわかんない人に教えるのが一番ムツカシイ。
たいがいの無理難題は受けて立つタイプですが、 レッスンを担当することになって、な …
-
幸せと。寂しさと。そして嫉妬もちょびっと。
自分の仕事の評価を何で計るか? 稼いでいる金額? メディアで取り上げられた数? …
-
「落としどころ」か?「限界突破」か?
完璧主義というほどではないですが、私はなにかと採点が辛いようで、 生徒やクライア …
-
歌っている自分を直視できない?
歌っているところを動画に撮る。 こんな宿題を出すことが多々あります。 自分を客観 …
-
オーディションで、勝ち残る
アーティストやその卵たちのレッスンでは、折に触れ、ここ一番の緊張感に包まれる時期 …
- PREV
- 自分の人生の価値を過小評価しない!
- NEXT
- 「生徒に誉められよう」という想いで歌わない。