「生徒に誉められよう」という想いで歌わない。
ヴォイストレーナーという仕事をはじめた時から、
常に自分に言いきかせていることは、生徒にお手本を聞かせる際、
アーティスト、シンガーとしての自分の歌を歌わないこと。
アーティストとして人前で歌う時は、誰でも少なからず、
オーディエンスの心を動かしたいという気持ちで歌います。
全身全霊、自分自身の表現です。
シンガーとしてお仕事の現場に立つときは、スタッフさんたちの要望に応えたい、評価されたい、という想いで、歌うことに全エネルギーを注ぎます。
これ、いずれも、軸は自分。
生徒の前で、自分軸のパフォーマンスは無用です。
生徒に、自分の歌を認めて欲しいという想いで、必死に歌ってしまう。
オレはすごいんだぞとマウントを取ろうとする。
本物の実力やキャリアのある人が、そんなことをする必要があるでしょうか?
でもね、いいところを見せたい、尊敬されたいという想いが働くと、
ついつい、やってしまいがちなことなんです。
ヘタに歌えと言っているのではありません。
完璧なお手本を歌って聞かせられることは、どんなトレーナーも目指すべき理想です。
しかし、そこに、自分のアイデンティテイやパフォーマンスはいらんのです。
必要なのは、リズムに乗ったり、いい音色で声を響かせたり、フレーズを構築したりしている時の自分のカラダの動きや、空間の振動を、生徒たちにリアルに、体感してもらうための「見本」。
その精度が高いほど、どうしたらそれを再現できるか、言語化して伝えられるほど、トレーナーとしての信頼も評判も高まります。真の尊敬も得られます。
生徒たちが求めているのは、「自分をうまくしてくれるトレーナー」。
そのためには、トレーナーは徹頭徹尾、滅私でレッスンに臨むべきです。
トレーナーに、生徒の賞賛や拍手はいらないんですね。
レッスンで賞賛されるべきは上達していく生徒たちであるべきです。

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