「生徒に誉められよう」という想いで歌わない。
ヴォイストレーナーという仕事をはじめた時から、
常に自分に言いきかせていることは、生徒にお手本を聞かせる際、
アーティスト、シンガーとしての自分の歌を歌わないこと。
アーティストとして人前で歌う時は、誰でも少なからず、
オーディエンスの心を動かしたいという気持ちで歌います。
全身全霊、自分自身の表現です。
シンガーとしてお仕事の現場に立つときは、スタッフさんたちの要望に応えたい、評価されたい、という想いで、歌うことに全エネルギーを注ぎます。
これ、いずれも、軸は自分。
生徒の前で、自分軸のパフォーマンスは無用です。
生徒に、自分の歌を認めて欲しいという想いで、必死に歌ってしまう。
オレはすごいんだぞとマウントを取ろうとする。
本物の実力やキャリアのある人が、そんなことをする必要があるでしょうか?
でもね、いいところを見せたい、尊敬されたいという想いが働くと、
ついつい、やってしまいがちなことなんです。
ヘタに歌えと言っているのではありません。
完璧なお手本を歌って聞かせられることは、どんなトレーナーも目指すべき理想です。
しかし、そこに、自分のアイデンティテイやパフォーマンスはいらんのです。
必要なのは、リズムに乗ったり、いい音色で声を響かせたり、フレーズを構築したりしている時の自分のカラダの動きや、空間の振動を、生徒たちにリアルに、体感してもらうための「見本」。
その精度が高いほど、どうしたらそれを再現できるか、言語化して伝えられるほど、トレーナーとしての信頼も評判も高まります。真の尊敬も得られます。
生徒たちが求めているのは、「自分をうまくしてくれるトレーナー」。
そのためには、トレーナーは徹頭徹尾、滅私でレッスンに臨むべきです。
トレーナーに、生徒の賞賛や拍手はいらないんですね。
レッスンで賞賛されるべきは上達していく生徒たちであるべきです。

■本気でうまくなりたいと思ったら、迷わず受けて欲しい。
6日間にコミットして、歌に対する自己肯定感を一気にあげてください。
第10期 MTLヴォイス&ヴォーカルトレーニング。11月開講です!
関連記事
-
-
「時間を忘れて夢中になる人」だけが、プロフェッショナルとなる
「ボクね、コーヒー飲もうと思って口に入れるでしょ。 で、そのまま機材の調整はじめ …
-
-
「ハモりゃいいんでしょ?」は、実は結構奥が深い
「コーラス」と聞くと、どのようなイメージでしょう? いわゆる中学高 …
-
-
「真っ白な灰」に、なりますか?
リングの上で真っ白な灰になった、『あしたのジョー』。 命を賭けられるほどのものに …
-
-
「カッコいいやつ」が「カッコいいやつ」と呼ばれる5つの理由
「なんにもしなくてもカッコいいやつっているんだよ。 こればっかりは、どうしようも …
-
-
ことばに「自分の匂い」をしみつける
ことばには、話す人の匂いがあります。 同じことを言うのにも、ことばの選び方や言い …
-
-
コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する
自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …
-
-
発声メカニズムを知るだけで声がよくなる人の特徴
「まだ1回しかレッスン受けてないですし、正直、全然練習できなかったのに、なんか、 …
-
-
挑戦か?ブランドか?
従来のイメージを守り続けるか? それとも挑戦するか? アーティスト …
-
-
譜面台を立てる時のチェックポイント〜プロローグ〜
こちらのブログで繰り返し語っているように、 「ヴォーカリストたるもの、 人前で歌 …
-
-
知識でも、思考でもない。メソッドは創造するものなんだなぁ。
どんなに知識を詰め込んでも、 あーでもない、こーでもないと考えても、 クリエイテ …
- PREV
- 「課題曲」は、何を基準に選ぶべきか?
- NEXT
- がんばり方は教えられません。
