大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「こんなもんでいいか・・・」の三流マインドを捨てる!

      2015/09/21

NYのドラムフェアで、テリー・ボジオのクリニックを見たときのことです。
すべてのセッティングを自分ひとりでやるボジオさんを、
観客全員が固唾をのんで見守っていました。
セッティング、チューニング、そしてサウンドチェック。

ドラムだけのソロ演奏です。
サウンドチェックは、さらりと終わって、いよいよライブスタートか・・・
と誰もが思っていたはず。

ところが、ボジオさん。
モニターのエンジニアに延延と注文を出します。

左右のモニターのバランスが違う。音色が同じに聞こえない。
これでは、気持ちよく演奏できない。
いや。絶対に同じに聞こえない。
お前、ここに来て、聞いてみろ。
これでは、いい演奏にならない。

そんなことをいいながら、音をチェックし、顔をしかめ、
立ち上がり、また文句を言い・・・

そんなやりとりが、長時間続きました。

これを、テリー・ボジオ独特の、ROCKなパフォーマンスだと取る人もいるでしょう。
実際、そうかもしれません。

しかし、私はこのとき、たとえドラムフェアのクリニックのような、
ラフな現場でも、ベストな音を追求しようとするボジオさんの姿勢、
一流のアチチュードに感動しました。

一流の人の仕事には、「こんなもんでいいか」がありません。

いつも最高を求め、どんな状況でも、そのときのVery Bestを極めようとする。

それは、誰のためでもない。自分のためでしょう。

仕事に慣れてくると、だんだんと悪い意味で余裕が出てきます。
「こんなもんでいいか」などと、たいした準備もせずに、
ステージに上がったり、レコーディングに出向いたりします。

恐ろしいのは、「こんなもんで」と思ったレベルに、自分のレベルが下がること。
そして、実は、その「こんなもんで」という三流マインドは、
あっさりとまわりの人に見破られてしまうこと。

演奏が優れているから一流のマインドを持ったのではなく、
一流のマインドを持っているから、一流の演奏家になったのです。
三流のマインドのまま、一流になった人はひとりも知りません。

たとえ、そこそこキャリアを積んだプロフェッショナルでも、
マインドが三流になれば、徐々に転落していきます。

まして、アマチュアの段階で、「こんなもんでいいか」という準備しかできなければ、
プロは遠い夢でしょう。

どんな現場でも、忙しくても、疲れていても、だるくても、
徹底的にベストを尽くす。
状況が許す限り、こだわれるだけ、こだわる。

一流と呼ばれるためには、きっと、それしかないんですね。

 

31632332_s

 - The プロフェッショナル

  関連記事

譜面台を立てる時のチェックポイント〜プロローグ〜

こちらのブログで繰り返し語っているように、 「ヴォーカリストたるもの、 人前で歌 …

「圧倒的な安心感」をくれるプレイヤーの条件

魅力的なプレイヤーたちとのパフォーマンスはドキドキ感の連続です。 心地よい音色と …

あなたの楽器、いい音出てますか?

楽器は音色がすべて。 ピッチを正確にとか、 リズムをしっかりとか、 ダイナミクス …

「ハモりゃいいんでしょ?」は、実は結構奥が深い

「コーラス」と聞くと、どのようなイメージでしょう?   いわゆる中学高 …

究極の正解を探せ!

カバー曲はいい感じで歌えるのに、 オリジナル曲になると精彩を欠く。 こうしたケー …

歌には”仕掛け”と”意図”がある!

昨今、カラオケのおかげか、 はたまたYouTubeやアプリのおかげか、 巷に歌の …

「音の立ち上がり」を正確にとらえる

歌い出す瞬間の音。 音を移動するとき、音の階段を上った、その瞬間の音。 その瞬間 …

ねつ造不可能なキャリアを刻む

Webの世界をサーフィンしていると、 昨今は、みんな本当にセルフ・ブランディング …

プロ、セミプロ、セミアマ?ミュージシャンの働き方

高校時代、一緒にバンドをやっていた仲間のひとりに、 フリーターをしながら、あちこ …

「譜面がなくちゃだめ」と思ってしまう自分にまず疑問を持つ

「ボクは音楽は全然ダメですよ。そもそも譜面が全く読めないんだから」   …