ミュージシャンの「ステータス」も数字?
2016/10/27
ビジネスの世界で活躍している男性たちを見ていると、
日々、華やかな数字の話ばかりで、実に忙しそうです。
「年収○○億円の顧客が○○人いる」
「最近、○○店舗目をオープンした」
「いやぁ、ついに年商○○億になっちゃいましたよ。」
「うちの商品、先日○○万台突破したんですよ」
「最近、弊社のシェアが○○パーセントを越えましてね・・・」
・・・etc.etc.
かつては、ビジネスマンのステータスといえば、
会社名や肩書きだったように記憶しているのですが、今や数字。
日本も欧米並みになってきたということでしょうか。
では、ミュージシャンのステータスは、どんな基準で決まるのでしょう?
そんなことを考えていたら、やっぱり数字が見えてきました。
もっともわかりやすい「基準」は、ギャラの金額。
商品でいうところの「定価」ですね。
「××さんは、レコーディングだと、時間○○万円くらい取るらしいよ」
「この間、ライブに大御所の△△さん呼んだら、1本○十万だったから。。。
あのクラスの人には、とてもツアーはお願いできないんですよ・・・」
どんな商品も同じですが、値段の高いものは、格が高いという印象になります。
似たような基準で「年収」というのがあります。
本来はギャラの高い人ほど年収も高そうですが、そうはならないのが音楽業界。
あまりにハイクラス=大御所さん扱いになってしまうと、
予算があわない、それなりに気をつかうなどの理由で敬遠されることもしばしば。
技術面、芸術面より、若さや体力、ルックス、
コミュニケーションの取りやすさなどが評価される現場もたくさんありますから、
年間の稼働日数、コンサートサポート本数、メディア出演本数、
レコーディング参加曲数、などなど、
華やかな数字が並ぶ売れっ子ミュージシャンなら、
1本のギャラが多少安くても、年収では大御所さんを上回る、なんてことは多々あります。
とはいえ、体力的にも物理的にも、稼働できる日数は限られているため、
年収は頭打ちという場合も多いようです。
さて、ギャラの金額や年収と同じくらいステータスになるとされているのが、
サポートしたり、レコーディングに参加したり、
楽曲を提供したりしているアーティストやプログラムの人気度、知名度。
「あんなに有名な人のバックをやっている。」
「あのヒット曲(番組)のレコーディングに参加した。」
という印象は、人の心に強く残るものだからです。
では、その、アーティストたちの人気度や知名度のバロメーターはといえば・・・
チャートの順位。CDの売り上げ枚数。アルバムの累計売り上げ枚数。
コンサートの動員人数。
さらにはグッズの売り上げ、年間の公演数、メディアの露出回数、などなど。
ここでもやっぱり数字です。
10年、20年と売り上げトップに君臨しているような、
極一握りのスーパーアーティストは、もちろん、ステータスもトップ。
一方で、下克上もあるのがこの業界です。
長年ある程度の数字をキープしているアーティストも、
ぐんぐん売れて勢いのあるアーティストやバンドに
年間チャートや売り上げで圧倒的に上回られれば、
周囲の扱いが逆転するという例もあるようです。
実にシビアな数字の世界です。
こうやって考えてくると、音楽業界でもステータスをわかりやすくあらわすのは、
やはり数字のようです。
もちろんこれは、音楽を「仕事」、ミュージシャンを「職業」と考えた場合の視点。
ミュージシャンは音楽家、すなわち芸術家です。
本来、芸術には、上下などなく、
そこには表現者と受け手、そして、なんらかの感情の動きが存在するだけの、
極めてシンプルな世界。
高値がついた作品の方が、誰にも知られていない作品より価値が高いかどうかなんて、
受け手それぞれの感情や判断にゆだねられるべきことです。
また、基本、「好きなことを仕事にできてラッキー」、
というのがミュージシャンのスタンス。
「数字なんか関係ねーや。」という声も多く聞かれます。
もちろん数字の争いは不毛です。
数字は、音楽そのもののクオリティにはなんの影響力も持たないと信じたい。
数字を語ることを汚いことのように、批判的に言う人がいることも確かです。
しかし、そんなとき、今一度考えたいのは、数字そのものではなく、数字の持つ意味。
数字は、その人を必要とする人、求める人を象徴するものであり、
人に託される信頼や責任の証でもあります。
数字の裏には、必ず「人間」の存在があるのです。

さて、しばらく不定期になっちゃっていますが、
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