大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

すごいミュージシャンは、ここがすごい

   

セッション・ライブ。

プロ、アマチュア問わず、
ミュージシャンの交流の場として、
また、出会いの場として、
さまざまな場所で行われている、ライブスタイルのひとつです。

 

セッションライブには、

「純粋に自分たちの楽しみのためにやるもの」
そして、
「お客さんを楽しませるためにやるもの」
の2種類があります。
 

前者は、

出演者が場所代や参加費を払い、
音楽仲間や、その家族がオーディエンスとなって、
和気藹々と演奏する、部活動のような雰囲気のライブだったり、

ライブハウスなどが主催して行われ、
出演者はエントリー制という、
いわば、他流試合のようなライブだったり。

 

そして後者は、
キャリアのあるミュージシャンや、
名前を知られたミュージシャンが、
一夜限り、または、希に顔を合わせて、
リハーサルもそこそこに、
お客さんの前で演奏するライブ、となるでしょうか。

 

滅多に一緒にやることのないミュージシャンたちの、
珍しい顔合わせや、豪華な顔合わせ、
畑違いのミュージシャンたちのミスマッチかつスリリングな演奏・・・

いったいどんな演奏をしてくれるんだろうと、
期待をして来てくれるオーディエンスの、期待に応え、
いい意味で期待を裏切る演奏になれば、
その夜のセッションは成功です。

 

 

さて、さまざまなセッションに参加し、
素晴らしいミュージシャンとご一緒させていただくと、

セッションシーンで「すごい」と噂されるようなミュージシャンには、
共通点があることに気がつきます。

今日は、セッションライブシーンを舞台に、
「すごいミュージシャンは、ここがすごい」を、
長年の経験と独断と偏見に基づき、お届けいたします。

 

1.曲の理解力がすごい。

リハーサル時間がほとんど取れないような現場で、
「すごい」と言われるプレイをする人たちは、
なんと言っても、曲の理解力が圧倒的に優れています。

譜面を見た時点、ちょっとだけ音源を聞いた時点で、
フレーズや行き方などという当たり前のことだけでなく、
曲自体のグルーヴや空気感まで感じ取ってしまう人もいます。

徹底的に準備をしてくる人もいます。

とにもかくにも、演奏をはじめた段階で、
「そうそう、そういう感じです!」と、
ぴたりと腑に落ちる音になる。

音楽的知識や、経験値、
そしてなにより、センスの成せる技でしょう。
中にはオリジナル音源よりカッコよく演奏できちゃう人もいて、
あぁ、プロってすごいわぁと打ち震える場面です。
 

2.コミュニケーション能力がすごい。

初めての顔合わせ、初めての楽曲。

 

セッションライブでは多くの場合、
挨拶もそこそこにリハーサルに入ります。

(多くの場合、そのリハーサルは、本番当日だったりします)
そこで、ババッと、リーダー格の人が
譜面や行き方の説明をし、即、演奏に入るわけです。

バックボーンも違う、
テイストも違うミュージシャンが集まって、
いきなり演奏するのですから、

当然、グルーヴがかみ合わなかったり、
いわゆる「ノリ」が合わなかったり、
オブリを入れるタイミングがぶつかったり・・・

いろんなことが起こります。

わぁ、やりにくいなぁ。。。

リハーサルで、そういう風に感じる時もあるでしょう。

 

ところがです。

すごいミュージシャンは、
こんな時のコミュニケーション能力がすごい。

多くの場合、
演奏しているうちに、すぅっとグルーヴがあってきます。

リフやオブリが、お互いに邪魔し合わないタイミングで入り出します。

「息が合ってくる」のが、非常に早く、スムースなのです。
時に演奏の合間に交わされる会話でも、

実に的確に、いい雰囲気で、自分の要求を相手に伝えたり、
相手の好みを聞き取ったりしています。

 

音楽はコミュニケーション。

コミュニケーション能力は、
ミュージシャンの大きな資質のひとつと言えます。

 

3.アイデンティティがすごい。

 

そうやって、
楽曲のよさをくみ取り、表現し、
一緒に演奏するミュージシャンの要求をくみ取って演奏しながらも、

すごいといわれるミュージシャンには、
完全な、自分のスタイルがあります。

 

その人でなければ出せない音、というのがある。

その人でなければ表現できない、空気感、

その人でなければできないプレイがある。

 

それが押しつけがましくなく、
ふとしたタイミングで、強烈に主張してきます。

 

1や2は、経験によってある程度、磨かれていくものですが、

やはり最後はこのアイデンティティ。

 

とにかく、どんなときも、
圧倒的な存在感を放てる人しか、
セッションシーンで名を馳せることはできないのかもしれません。

 

いかがでしょうか。

 

こうして書いてみると、

セッションシーンに限らず、
スタジオでも、バンドでも、
優れたミュージシャンの資質はおなじですね。

 

機会があったら、
そんなスーパープレイヤーたちの、
スリリングな演奏を目撃しに、ぜひ出かけみてください。

他流試合的なセッションに参加して、
自分を試してみるのもお勧めです。

実際自分でやってみると、
本当にすごい人たちのすごさが、改めてわかるものですよ。

今週末発行予定のヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』では、これまで参加してきたセッションの裏話を内緒話満載でお届けします。
イケてるミュージシャンになるためのヒントもきっとあるはず(^^)
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 - The プロフェッショナル

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