破滅型か?自己投資か?はたまた堅実派か?
ミュージシャンになって、お仕事が回り出すと、
お金の感覚がちょっとずれてきます。
80年代のお話になりますが、
ツアーのお仕事なら、ステージのギャラが1本数万円。
リハーサルがその半分。
30本、40本とツアーを切る大物のサポートをすれば、
旅先で美味しいものご馳走になって、
楽しくライブやって、朝まで遊んで、ついでにモテる。
中には食事代などと言う名目で、
ギャラとは別に、毎日数千円いただけたお仕事もありました。
基本、朝はホテルの食事、お昼は仕出しお弁当、
夜は接待していただけるので、
食事代なんかつかったことなかったですが。
バブルでしたね。
最近は、ずいぶん事情が違ってきているようで、
バブル期のミュージシャンは相当優遇されていたなぁと、
感謝の念に堪えません。
閑話休題。
人間の本当の価値感は、お金が回っている時にこそわかります。
売れていたミュージシャンたちの価値感もさまざまでした。
ブランドものの服を次から次へと買い込んでいた人。
ギャンブルにはまり込んでしまった人。
とっかえひっかえ女遊びに興じていた人。
毎晩飲み歩いていた人。
常に新車を乗り回していた人。。
ミュージシャン=派手というイメージをつくった、
そんな破滅型が多くいる一方で、自己投資型もたくさんいました。
高価な楽器やビンテージ楽器を集めていた人。
録音機器や周辺機材に徹底的に投資した人。
ジムやエステ、化粧品と、美容にお金をかけまくった人。
CDを買いまくったり、語学を習ったりと、勉強に専心した人。
海外を旅し、見聞を広めた人。
さまざまなミュージシャンと出会い、
長い時間かけておつきあいをしていくうちに、
そんな若き日の価値感が、結局、
10年後、20年後の自分をつくって行くのだと、
思えるようになりました。
派手にお金を使って格好良かった人たちの中には、
いきなり仕事が回らなくなって困窮した人も大勢います。
女遊びにつきものの「手痛いツケ」を払わされた人もたくさんいますし、
お酒を飲み過ぎて、カラダを壊したり、
中には命まで落とした人もいます。
一方で、
(楽器に思わぬ価値がついて、
文字通り投資になったという人は置いておいて)
いい楽器に触れたことで、
より音楽的な才能を開花させた人たちがいます。
機材に投資して、
仕事の幅や、人脈を広げた人たちがいます。
ストイックに自分を磨き続けて、
なにもしない人よりも、1ステージ上に昇った人や、
キャリアの賞味期限をうんと長引かせた人たちがいます。
一所懸命勉強をしたことが実を結び、
新しい道を開いた人や、
指導する立場になった人もいます。
日本全国や世界を旅して、
ものを見る目を養い、コミュニケーションスキルや、
人間力を高めた人もいます。
「ミュージシャンらしく」と言い訳しながら、
刹那的に生きるのは、楽しいものですし、
そんな時間もあってもいいでしょうが、
快楽を追い求めたくなったときにこそ、
ふと立ち止まって、
今していることは10年後20年後へと繋がっていくのだということを
考えてみる時間も必要です。
また、堅実に貯金したり、
仕事がなくなった時のためにと、
資格を取ったりするのもいいかもしれませんが、
守りに入ってしまっては、人は前に進めません。
何かがうまく行かなくなったらと、
次の手の準備に時間をつかうくらいなら、
今やっていることに100%注力する方が何倍も建設的です。
人の価値感がお金の使い方を決め、
お金の使い方が人をつくる。
うまく行っているときにこそ、心にとめたい大切なことです。
【MTL Online Lesson12】11月生の受付を開始しました。11月生受付は11月5日まで。
◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。購読はこちらから。
関連記事
-
オトナなんて怖くない。〜アーティストたちの「大物」エピソード〜
これまで、たくさんのアーティストやその卵たちの指導をしてきました。 関係者の方た …
-
「数字」に価値を見出す
先日たまたまYoutuberのヒカキンさんが、 「Youtuberって、要は、他 …
-
「すごい人」と、自分との距離。
どんな分野にも、すごい人というのはいるものです。 すごい人に出会う度に、自分の凡 …
-
「そんなことやってても売れないよ」
「そんなことやってても売れないよ」 「もっと売れてるもん聞かなくちゃダメだね〜。 …
-
「シンガー」というキャリアのゴールを描く
プロを目差すシンガーたちには、それぞれのゴールがあります。 ゴールが違えば、歩む …
-
この子、「化ける」かもしれません。
歌が本格的にお仕事になる前、 CMや映画などの音楽プロデューサーのアシスタントを …
-
「好きなことを仕事にできていいですね。」
「好きなことを仕事にできていいですね。」 はじめてこ …
-
いわゆる「事務所」ってなにしてくれるの?
ミュージシャン志望の若者たちと話していると、 「事務所」ということばが頻繁に登場 …
-
「で?いくら稼ぎたいの?」
「で?MISUMIさんは、いくら稼ぎたいの?」 不躾に、こんな質問をされたことが …
-
「できない」と言える「自信」を育てる。
レコーディングのお仕事に 呼んでもらうようになったばかりの駆け出しの頃。 スタジ …
- PREV
- 自分を好きになるということ。
- NEXT
- 「プロじゃない」から、すごいんだ。