大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

破滅型か?自己投資か?はたまた堅実派か?

   

ミュージシャンになって、お仕事が回り出すと、
お金の感覚がちょっとずれてきます。
80年代のお話になりますが、
ツアーのお仕事なら、ステージのギャラが1本数万円。
リハーサルがその半分。

30本、40本とツアーを切る大物のサポートをすれば、
旅先で美味しいものご馳走になって、
楽しくライブやって、朝まで遊んで、ついでにモテる。

中には食事代などと言う名目で、
ギャラとは別に、毎日数千円いただけたお仕事もありました。

基本、朝はホテルの食事、お昼は仕出しお弁当、
夜は接待していただけるので、
食事代なんかつかったことなかったですが。

バブルでしたね。

最近は、ずいぶん事情が違ってきているようで、
バブル期のミュージシャンは相当優遇されていたなぁと、
感謝の念に堪えません。

 

閑話休題。

 

人間の本当の価値感は、お金が回っている時にこそわかります。

 

 

売れていたミュージシャンたちの価値感もさまざまでした。

 

ブランドものの服を次から次へと買い込んでいた人。

ギャンブルにはまり込んでしまった人。

とっかえひっかえ女遊びに興じていた人。

毎晩飲み歩いていた人。

常に新車を乗り回していた人。。

 

ミュージシャン=派手というイメージをつくった、
そんな破滅型が多くいる一方で、自己投資型もたくさんいました。

 

高価な楽器やビンテージ楽器を集めていた人。

録音機器や周辺機材に徹底的に投資した人。

ジムやエステ、化粧品と、美容にお金をかけまくった人。

CDを買いまくったり、語学を習ったりと、勉強に専心した人。

海外を旅し、見聞を広めた人。

 

さまざまなミュージシャンと出会い、
長い時間かけておつきあいをしていくうちに、
そんな若き日の価値感が、結局、
10年後、20年後の自分をつくって行くのだと、
思えるようになりました。

 

派手にお金を使って格好良かった人たちの中には、
いきなり仕事が回らなくなって困窮した人も大勢います。

女遊びにつきものの「手痛いツケ」を払わされた人もたくさんいますし、

お酒を飲み過ぎて、カラダを壊したり、
中には命まで落とした人もいます。

 

一方で、
(楽器に思わぬ価値がついて、
文字通り投資になったという人は置いておいて)

いい楽器に触れたことで、
より音楽的な才能を開花させた人たちがいます。
機材に投資して、
仕事の幅や、人脈を広げた人たちがいます。

ストイックに自分を磨き続けて、
なにもしない人よりも、1ステージ上に昇った人や、
キャリアの賞味期限をうんと長引かせた人たちがいます。

一所懸命勉強をしたことが実を結び、
新しい道を開いた人や、
指導する立場になった人もいます。

日本全国や世界を旅して、
ものを見る目を養い、コミュニケーションスキルや、
人間力を高めた人もいます。

 

「ミュージシャンらしく」と言い訳しながら、
刹那的に生きるのは、楽しいものですし、
そんな時間もあってもいいでしょうが、

快楽を追い求めたくなったときにこそ、
ふと立ち止まって、
今していることは10年後20年後へと繋がっていくのだということを
考えてみる時間も必要です。

 

また、堅実に貯金したり、
仕事がなくなった時のためにと、
資格を取ったりするのもいいかもしれませんが、

守りに入ってしまっては、人は前に進めません。

何かがうまく行かなくなったらと、
次の手の準備に時間をつかうくらいなら、
今やっていることに100%注力する方が何倍も建設的です。

 

人の価値感がお金の使い方を決め、
お金の使い方が人をつくる。

 

うまく行っているときにこそ、心にとめたい大切なことです。

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