「向いてない」って、なんだよ?
つい数日前、はじめて訪れた耳鼻科の先生に、
「この声帯の形からすると、あなた、
大きな声を出すのが向いてないかも知れませんね。」
という驚愕の事実(?)を告げられました。
まぁ、私はこう見えても素直だし、
自分の「見かけと実際のギャップ」は長年の経験上、
よ〜くわかっちゃっているので、
「そうなんですか〜〜。へぇ〜〜」
と、ニコニコお話を伺って帰ってきましたが。
「私のノドって、大きい声出すのに向いていないんだって〜」
と嬉しそうに話す私に周囲は、
「キミの声、聞いたことないんでしょ?」
「あなたが大きい声出すのに向いていなかったら、
誰が向いているの?」などと、あきれ顔。
まぁね。
百戦錬磨のエンジニアさんたちが異口同音に、
「業界一でかい声認定」を出してくださった鉄のノドの所有者ですから、
仕方ありません。
もちろん、耳鼻科の先生は、
私の声帯さまを見た印象をおっしゃっただけ。
生まれながらの私の声帯さまは、
ホントに大きな声を出すのに向いていなかったのか?
そこをマジカルなトレーニングが(^^)
「業界一でかい声」にしちゃったのか?
それとも、先生の思い過ごしで、
やっぱり、生まれながらの鉄なのか?
わかるすべもありません。
しかし、です。
もしも私がまだうら若き乙女で、
ちょっとロックっぽい声を出したがために声が壊れちゃって、
受診した耳鼻咽喉科の先生に、
「あなたの声帯(さま)は、
ロックみたいに大きな声を出すのは向いていませんね。」
なんて、いわれちゃったとしたら、
どんなにどんなにショックを受け、
うちひしがれ、悩んだことでしょう。
声を出すことが怖くなったかもしれない。
だから、声量も上がらず、音域も広がらず、
で、結局ロックを歌うことを、
もしかしたら、歌そのものを、あきらめてしまったかもしれない。
いや。
人一倍大きい声が、私の「売り」の一部でもありますから、
プロになれなかったかもしれない。
もしくは、声が枯れても、声帯さまの状態が悪くなっても、
「私のノドは大きい声出すのに向いてないんだから仕方ないんだ」と、
あきらめて、正しい発声を身につける努力をしなかったかもしれない。
そうして、どんどん声を枯らして、
「なんかロックっぽいじゃない」と勘違いして、
音域の狭い、だみ声シンガーになったかもしれない。
それもこれも、お医者さまという、
「権威ある人」だからこその影響力です。
権威ある人、発言権のある人、
人を指導する立場にある人には、
他者に対しての重い責任がある。
どんな職種であれ、
そこはけして忘れてはならない、
大切な大切なポイントです。
そして、だから、
ひとこと、ひとこと、
相手の気持ちを考え、相手の立場に立って、
注意しながら発していかなくてはいけない。
世の音楽関係者には、
そのことをわかっていない人が多すぎる、
というのが、業界から一歩離れた立場に立って、
振り返って、初めてわかったことです。
みんな「キミのため」と称して、
いろんな意見を言ってくださいます。
「お前はギョーカイ、向いてないよ。さっさと結婚でもした方がいいよ。」
「真面目過ぎるんだよね。もっと遊んだ方がいいよ。」
「あー、それ。一番売れないパターンだね。そういうの。」
「そういう音楽性、向いてないよ。」
「なにがやりたいのか、わかんないね。」
「プロとか、向いてないんじゃない」
あぁ、思い出される顔、顔、顔。。。
そして、その度に、
地面にのめり込むほど辛かった自分の気持ち・・・
さあ。
ここで私が言いたいのは、
自分が信じたら、人になんといわれようとも突っ走れ、ってことです。
どんなに権威がある人だろうが、
どんなにその世界で偉い人だろうが、
どんなに実力がある人、年上の人、評価されている人だろうが、
自分の信じる未来を打ち砕くようなことを言う人の言うことを、
めそめそしながら聞いている必要はありません。
へぇ。そうなんだー。
で、おしまいです。
あ。そ。
で、いいんです。
なんなら、”○u○k off !”
です。
そんなの忠告でもアドバイスでもなんでもない。
ただの「感想」。
自分に感情移入してくれてるわけでもない。
自分のためを思ってくれているわけでもない。
ただ、「なんか言わなくちゃ」ってだけの人の「感想」を聞いて、
動揺している暇なんかありません。
そんなひとつひとつの出来事に
「未来を信じる力」を試されている。
負けてなるものか、ですぞ。
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