大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「プロじゃない」から、すごいんだ。

   

最近、セミナーや講演を通じて、
全国の音楽愛好家の方たちと接する機会が多くなってきて、
しみじみ、日本も音楽人の層が厚くなってきたな、と感じています。

 

少し前まで、音楽をやっている人たちは、
「プロ」か「趣味」のどちらかに二極化されていました。

だから、
「プロでもないのに、そんなに一所懸命やったって」とか、
「アマチュアなんだから、楽しくやればいいんだよ」などと決めつけたり、

お小遣いを稼げる程度に活動している人たちを、
「セミプロ」などと、
「プロ」に勝手に「セミ」なんて中途半端な接頭辞をつけて分類したり。

 

そんな、日本人特有の、分類癖で、
不愉快な思い、寂しい思いをしてきた人は多いのではないでしょうか。

 

ニューヨーク時代のある日。

たまたま乗ったタクシーの黒人ドライバーが、
珍しく流暢な、アメリカ英語で、親切にいろいろ話しかけてくるので、
「今日はオーディションに行ってきたのよ」と言ったら、
いきなり、とんでもなくいい声で歌いはじめたことがあります。

「僕はハーレムでミュージカルに出ている俳優なんだ。
今度見においでよ。」

 

カフェでコーヒーを飲みながら譜面を広げていたら、
白人のウェイトレスが
「あたしもシンガーなのよ。」
といかにも誇り高いようすで話しかけてきたこともありました。

 

ニューヨークでは、
みんなが大好きなことを誇り高く話す。

その大好きなことが仕事になっているとか、
なっていないとか、

ごはんが食べられているとか、
食べられていないとか、
そんな基準はどうでもよくて。

「俳優」とか「シンガー」とかは、
プロだけがつかっていい「職業」の種類じゃなくって。

大好きで、一所懸命やっていることを語るときに、
つかっていいことばなんだ。

 

そうやって、好きなことにプライドを持って、
真剣に向き合っている人たちがたくさんいて、
そんな人たちを認める文化が確立しているからこそ、
アメリカは音楽家の層が本当に厚くって、
いい音楽、いい歌手、いいプレイヤーが育つのだと、
なんだか羨ましく思ったものです。

 

プロはそれでお金をいただいて、ごはんを食べているんですから、
一所懸命やるのは当たり前です。
「音楽で食べているのは、他になにもできないから」
という人だって、それはそれはたくさんいます。
ちゃんとお金をいただいている仕事が別にあって、
それでも、大好きで、大好きで、やらずにいられないこと。

そんな「大好き」に誇りを持って、胸を張って、
「シンガーです」「俳優です」「ギターリストです」と、
言い切れる世の中の空気であって欲しい。

 

 

私自身、プロフェッショナリズムにこだわりを持つからこそ、
日本の音楽人の層がもっともっと育って、
中途半端な「プロ」のお尻をガシガシ蹴飛ばしちゃって欲しいと、
心から願うのです。

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 - The プロフェッショナル, 音楽

Comment

  1. まるぼうず より:

    激しく同意!
    還暦過ぎのアマチュア・ギタリスト兼コーラス担当ですが、胸を張って「ギタリストです」と言っています。
    アマチュアだから、という言い訳は見苦しいだけです。細かなテクニックはともかくとして、リズム感やコーラス隊としての素養を磨くためにいつもこのブログを楽しみに読ませていただいています。

  2. 通りすがりですが より:

    いわゆる「プロ」とは何か、「私は何某です」と言い切れる境目はどこからなのか…ずっと悩んできました。

    私はしがないバイトです…としか思えない甘ちゃんの私のことを「この子はアーティストだから!」「歌手だから!」と言ってくれた恩師のことを思い出しました。いつも、どんな状態になっても応援してくれる方なのです。

    どうしてプロでもない私のことをそんな風に言ってくださるのか不思議に思っていましたが、もしかしたら渡米経験のある恩師の『好きなもの、やめられないものなんでしょ?だったら堂々と胸を張って真剣にやれ!』というメッセージが暗にあるのかもしれないと思ったら、胸が熱くなり涙が出ました。

    反面、日本で音楽を仕事にすることや、プロとして仕事(日本的にお金を得ることをプロとするならば)をするという意識に対しての甘さが自分にあることもMISUMIさんのブログを通して突き付けられました。

    大好きな音楽と真剣に向き合って。仕事も、生活すべて一生懸命生きよう!とチカラが湧いてきました。ありがとうございます!

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