自分自身こそが「最も手強いオーディエンス」だ
2019/08/17
「観客のことは意識しないことにしている。
クリエイトするときはいつもそうだ。
まず、自分のことを考える。
作品を通して喜びを与えたければ、
自分が楽しまないと人には伝わらない。
存在しない喜びでは観客を魅了できない。
存在してこそ伝わるんだ。
だから創作するとき、最初に思い描く観客は私自身だ。」
世界的に有名なシューズデザイナー、クリスチャン・ルブタンが、パリの老舗キャバレー「クレイジー・ホース」のゲスト・クリエイターとして、ステージの振り付けなどをサポートしたときの、インタビューでのことばです。
音楽なり、演劇なり、ダンスなり、
もちろん、芸術でも、書くことでも、
自分自身を何らかの形で表現している人たちは少なからず、
人に評価されたい、
誉められたい、
尊敬されたい、
愛されたい・・・etc.
という願望があるもの。
少なくとも、嘲笑されたい、黙殺されたいという人は、
ひとりもいないはずです。
しかし、基準が「他人の目線」になってはいけない。
ルブタンのことばを私なりに解釈すれば、
表現者、送り手が、
自分自身の作品やパフォーマンスを楽しみ、
感動と興奮を感じながら、それを世に送り出すから、
その感動と興奮が受け手に伝わるのだ。
だから、まずは自分自身を喜ばせる、
感動、興奮させる作品、パフォーマンスを創り出す。
自分自身こそが、最も手強いオーディエンスなのだ。
ということになるでしょうか。
しかし、これは、なかなか難しい。
結果が出ないとき。
伸び悩むとき。
人々の関心が自分から離れていったと感じるとき。
人は、ついつい、受け手の気持ちを先回りして考えます。
なにがいけないんだろう?
どうしたらウケるだろう?
どうしたら評価されるだろう?
どうしたら「いいね!」がいっぱいついて、
どうしたらフォロワーが増えるんだろう?
どうしたら売れるだろう・・・?
そんなことを考えて、あの手この手でがんばるほどに、
本当の感動や興奮から遠ざかってしまう。
自分自身が心の底から楽しむということを、
いつの間にかどこかに置き去りにしてしまう。
力のない作品、コンテンツを、人は賞賛しません。
人は、いつだって、「エネルギー」に感動するのです。
最初のオーディエンスはいつだって自分自身。
自分自身を心の底から楽しめるものを生み出せないなら、
まだまだ準備はできていないということなのですね。
*************************
新年おめでとうございます。
いつも『声出していこうっ』を読んでいただいて本当にありがとうございます。
2018年も心を込めて精一杯綴っていきます。
メルマガ共々、本年もどうぞよろしくお願いいたします!
*************************
声について知るべきことのすべてを毎日お届けしています。バックナンバーも読めますので、ご登録がまだの方はぜひ、こちらから。
関連記事
-
-
大陸横断鉄道の「個室寝台」
生まれてはじめて、 海外をひとりで旅したときのこと。 カナダの大陸横断鉄道、 V …
-
-
自分の「ウリ」を見つけた女は強い
「MISUMIさんって、ジャニスみたいですね。」 若い頃から、そう言われるたびに …
-
-
「譜面がなくちゃだめ」と思ってしまう自分にまず疑問を持つ
「ボクは音楽は全然ダメですよ。そもそも譜面が全く読めないんだから」 …
-
-
失敗も含めて「ライブ」なんだ。
どんなに、どんなにがんばって準備をしても、 ライブやコンサートには、失敗やアクシ …
-
-
ゴールを鮮明に描く。
「がんばっているのに、どうも成果があがらない」、 「なんかうまくいかない」という …
-
-
「作品」は、鮮度の高いうちに世に出す
食べるものに鮮度があるように、 人がクリエイトするものにも鮮度があります。 どれ …
-
-
譜面台を立てる時のチェックポイント〜プロローグ〜
こちらのブログで繰り返し語っているように、 「ヴォーカリストたるもの、 人前で歌 …
-
-
「他者基準」で自分をジャッジしない。
才能あふれる若者たちを教える機会に恵まれています。 レッスンのたびにワクワクした …
-
-
「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」
「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」 謎の質問で …
-
-
「送り手」になりたかったら、「受け手」と同じことをしていたのではダメです。
「歌が好きだから、毎日歌っているんですよ」という人は、たくさんいます。 毎週のよ …
- PREV
- ありがとう
- NEXT
- エネルギー不足で「やってられるか、ばかやろー」となったときなにをするか?