自分自身こそが「最も手強いオーディエンス」だ/『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』
2022/12/25
「観客のことは意識しないことにしている。
クリエイトするときはいつもそうだ。
まず、自分のことを考える。
作品を通して喜びを与えたければ、
自分が楽しまないと人には伝わらない。
存在しない喜びでは観客を魅了できない。
存在してこそ伝わるんだ。
だから創作するとき、最初に思い描く観客は私自身だ。」
世界的に有名なシューズデザイナー、クリスチャン・ルブタンが、パリの老舗キャバレー「クレイジー・ホース」のゲスト・クリエイターとして、ステージの振り付けなどをサポートしたときの、インタビューでのことばです。
音楽なり、演劇なり、ダンスなり、
もちろん、芸術でも、書くことでも、
自分自身を何らかの形で表現している人たちは少なからず、
人に評価されたい、
誉められたい、
尊敬されたい、
愛されたい・・・etc.
という願望があるもの。
少なくとも、嘲笑されたい、黙殺されたいという人は、
ひとりもいないはずです。
しかし、基準が「他人の目線」になってはいけない。
ルブタンのことばを私なりに解釈すれば、
表現者、送り手が、
自分自身の作品やパフォーマンスを楽しみ、
感動と興奮を感じながら、それを世に送り出すから、
その感動と興奮が受け手に伝わるのだ。
だから、まずは自分自身を喜ばせる、
感動、興奮させる作品、パフォーマンスを創り出す。
自分自身こそが、最も手強いオーディエンスなのだ。
ということになるでしょうか。
しかし、これは、なかなか難しい。
結果が出ないとき。
伸び悩むとき。
人々の関心が自分から離れていったと感じるとき。
人は、ついつい、受け手の気持ちを先回りして考えます。
なにがいけないんだろう?
どうしたらウケるだろう?
どうしたら評価されるだろう?
どうしたら「いいね!」がいっぱいついて、
どうしたらフォロワーが増えるんだろう?
どうしたら売れるだろう・・・?
そんなことを考えて、あの手この手でがんばるほどに、
本当の感動や興奮から遠ざかってしまう。
自分自身が心の底から楽しむということを、
いつの間にかどこかに置き去りにしてしまう。
力のない作品、コンテンツを、人は賞賛しません。
人は、いつだって、「エネルギー」に感動するのです。
最初のオーディエンスはいつだって自分自身。
自分自身を心の底から楽しめるものを生み出せないなら、
まだまだ準備はできていないということなのですね。
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