大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

毎日プレイしているだけじゃ「上達」はしない

   

「人生で一番練習した」と言い切れる時期はありますか?
おそらく、ほとんどの人は、学生時代と答えるのではないでしょうか?

 

次々とできないことに挑戦し、
できるようになるまで何度も、何日も、練習する。

もっともっとと上を目差しながら、
さまざまな音楽に触れ、
新しいプレイや、音楽性を開拓していく。

この時期は、人生で一番、テクニックを磨く時期でもあるでしょう。

 

やがて、プロ・ミュージシャンともなれば、
日々の仕事が、演奏したり制作したりすること。

 

レコーディングやコンサートなど、
緊張感のある本番が続けば、
もちろん自身のプレイの精度は上がっていきます。

ここでいう「精度」というのは、
一音一音のクオリティや、
イメージしたプレイを確実にこなせる正確性。

つまり、プロフェッショナルたちは、
日々の演奏を通じ、
そのプレイ・スタイルを深め、極めていくことになるのです。

 

では、テクニック的に上達していくのかというと、
どうやら、それは少し別の問題。

 

自身のアルバムのレコーディングや、
予算的、時間的に余裕のあるプロジェクトでもない限り、

誰しも、わざわざ自分に苦手なプレイを試したりはしません。

そもそも、苦手なことをわざわざやってくれ、と言ってくる
無茶振りなディレクターもいません。

 

ミュージシャンに望まれるのは、
それぞれの個性際立つ、他の人には真似できないプレイを
短時間で高精度にこなすこと。

実験や練習は自分ちでやってくれ、ということです。

 

 

つまり、どんなに仕事をこなしても、芸域が広がることも、
テクニック的にできないことができるようになっていくこともないのです。

 

もちろん、ひとつのスタイルを徹底的に極める、
というプレイヤーもいます。

 

 

「ロック」と言えば、この人。
「グルーブ職人」と言えば、この人。
「ハイトーン」と言えば、この人。

・・・トッププロとは、そんな領域の人たちかもしれません。
しかし、「スタイルを極める」と「手癖でやる」は、
似て非なるもの。
すっかすかの引き出しから、
毎回なけなしのフレーズを取り出していたのでは、
すぐに手詰まりになって、飽きられてしまいます。

 

 

定期的に、自分のプレイを棚卸しし、
細部にわたってチェックしてみること。

時に、初心に返って、
新しいテクニックに挑戦し、自分のものにしてみること。

 

長く活躍しているプレイヤーほど、
必要なことかもしれません。

12325561 - young man with guitar portrait grunge punk rock


鹿児島にて【ダイジェスト版 MTLヴォイス&ヴォーカルレッスン12】を開催します。即時、満席にて増席を検討中。
詳しくはこちらから

 - The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

「ちゃんと聴く」技術。

自分の歌って、ぶっちゃけどうですか? いきなり、そんな質問をされることが、よくあ …

キーは、歌えりゃいいってもんじゃないんですよ。

カバー曲を歌うとき、 無条件にオリジナルのキーで歌っている人は多いはず。 私自身 …

「あなたのアイドルは誰ですか?」

「あなたのアイドルは誰ですか?」   いえいえ。 今日は、「ルックスが …

音は「楽器」じゃなくって、「人」が出すものなのです。

かつて、ドラムの神様と言われたスティーヴ・ガッドが来日した際のお話です。 &nb …

ことばにするチカラ

「天才は教えるのが下手」と言われます。 だって、普通にできるから、 どうしてそれ …

自分自身を「スポットライトのど真ん中」に連れて行く。

スポットライトって、すごいなぁと、 ヴォイトレに来るアーティストたちの、 コンサ …

「自然体」を演出する。

「自然体でステージに立っているようすがカッコいい」 などと評されるアーティストが …

「この歌、いいなぁ」には必ず理由がある!

「売れる曲には、必ず理由がある」 あるヒットメーカーが教えてくれたことばです。 …

基礎を忘れるために、基礎を学ぶのだ!

ボイトレが一番チカラを発揮するのは、すべてを忘れて、表現に没頭するとき。 フォー …

リズムが悪いんじゃない。カツゼツが悪いんだ。

昨夜、ヒップホップグループN.W.Aの伝記的映画、 “Straigh …