ことばに体温を宿す
「じゃ、とりあえずバランスチェック兼ねて、一度つるっととお願いします。
単独は1番ヴォーカル、7番仮メロ、8番にドンカマ入ってます。
4つ前から出しま〜す。」
「今のところダブってください。ダブり分は2番です。パン、どうしますか?」
「あ、もう一回お願いします。縦で〜す。後お尻のニュアンス、お願いします。」
一般の方が聞いたら、英語よりちんぷんかんぷんであろう、
こうしたことばが、スタジオの中では飛び交っています。
専門用語といえば、専門用語ですが、まぁ、業界用語でしょうか。
こうした業界用語はどんな世界にもあって、
例えば、出版社関係の人とお話していれば、
「ゲラが」とか、「赤入れが」、とか、「装丁が」とか・・・
そうそう、「面陳」とか「平積み」なんてことばもあったっけ。
もちろん、専門用語や業界用語がわかるからすごいとか、
カッコいいとか、そういうことではありません。
そうした用語がカラダにはいるまでには、
逃げ出したいような、泣きそうな、
(何言ってんの?わかんないわよぉ〜)な時間があり、
「こんなこともわかんないのか!?基本のきだろうっ!?」
と怒鳴られたり、
「曲がりなりにもプロなんだから、最低限の仕事はしなくちゃ」
とあきれられたりする、
しょぼ〜んで、カッコ悪〜〜い時間があって。
そんな、山ほどの時間や積み上げた修行が大切なわけです。
何度か書いていますが・・・。
ビジネスの勉強をしようと一念発起して入った起業塾での、
初日の講義のこと。
とにかく、講師の先生の話すことばが一個もわかんない。
「粗利が」とか、「BtoBが」とか、「マーケティングが」とか、
このクラスにいる人たち、こんな難しいことば、
きっと、みんな、わかっているんだ。
あたしなんか、最初っから落ちこぼれだぁと、
家の玄関にたどり着くなり、座り込んで号泣したときのことは、
おそらく一生忘れられないでしょう。
そのくらい、あの時の悔しさと怖さと情けなさは、
脳裏に焼き付いて離れません。
それから、起業塾の期間中、毎日1〜2冊のビジネス書を読破して、
わからないことばに線を引き、線を引いたページを折り曲げ、
簿記の通信講座を受け、
結果、卒業プレゼンで一等賞をいただいたわけなのですが・・・
あれから8年半。
自分ではものすごく成長した気になっていたけれど、
結局、頭に入っていたはすべては机上の空論。
わかった気になっていたのは、紙の上のことば、
ことばとしてのことば。
8年半の
「いやーん」や「うっそぉー」や「あー、もうやめてやるぅ−」の時間を経て、
少しずつ、ことばに血が通い、体温が生まれ、匂いがつき、色がつき・・・
今、やっと自分自身のことばとして語れるようになったと感じています。
経験を積むことでしか、理解できないことって、やっぱりある。
一日でも早くゴールにたどり着きたいならば、
その経験を高速で積み続けるしかありません。
まだまだ、立ち止まっている暇はなさそうです。
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