大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

妄想、体験、疑似体験

   

「芸の肥やし」ということばもありますが、

さまざまな経験を積むほどに、その人の芸や芸術は深みを増し、
また、磨かれるもの。

人、土地、もの、状況など、出会いが多いほど、
表現したいことも、表現方法も豊富になります。

人は、そんな、リアルで豊かな表現を持つ人に惹かれるのです。

 

たくさん旅をして、たくさん出会いや別れを経験して、
たくさんのものを実際に手に取って・・・
さまざまな種類の感情を経験する。

たくさん悩んで、たくさん考えて、
そんな時間が、どんどん自分という人間を豊かにし、
深めてくれます。

とはいえ、どれだけアクティブに行動しても、
人が一生に経験できることは限られています。

一生に歌うラブソングの数だけ恋愛をすることも、
一生に演じるすべての映画の登場人物と同じ経験をすることも、
一生に書き綴るすべての小説の場面を経験することも不可能なのです。

 

表現者たちは、そんな、実際には経験できない、
あるいは、経験したことのない情景や状況を
妄想力と疑似体験で埋め、新たな感覚を自分の中から取り出すのです。

 

訪れたことのない国の空気感や匂いも、

その土地の写真や、本や、映像と、
自分の記憶にプールされた、さまざまな経験が化学反応を起こすことで、
あたかも実際に訪れたかのように感じられるようになります。

出会ったことのない人、
経験したことのない職業や恋愛、
触れたことのないものの肌触りや、口にしたこともない味さえも、

疑似体験と妄想によって、
あたかも今、自分が経験している感覚のように取り出せるようになる。

それも、表現者のすべき訓練のひとつです。

とはいえ、もちろん、実際の経験は、少しでも多い方が、
疑似体験自体の幅も広く、深く、リアルになります。

また、未知の出来事への妄想を広げることで、
実際に経験することの幅も広がってゆくもの。

たくさん妄想して、たくさん経験して、たくさん疑似体験をする。

表現者としても、人としても、積み重ねて行きたいことです。

33346008_s

 

 

 

 

 - Life

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

2026年、はじめました。

あっという間に1月も折り返しです。 気付けば今年初ブログ。 今年も凄い勢いで時間 …

「やりたい」と「できる」と「やる」

「音大目指すなんて、今からじゃ無理よ」 中学2年の時に、 とある音楽教室の先生に …

横を向かない

悪口を言われれば誰だって少なからず傷つく。 一所懸命取り組んでいることを、批判さ …

バンド仲間の悪口は言わない

もう何十年も前のこと。   大好きなメンバーと、かなり楽しくやっていた …

今さら知りたい?「いたずら電話撃退法」

“Hello, Maria?”(ハロー、マリア?) ひと …

「あと一周」のベルが、まだ聞こえない。

出版に向けラストスパートに入りました。 え?まだスパートかけるの?という街の声が …

no image
安心領域から出る

「自分の年収は親しい友達10人の年収の平均だ」という説があります。 親しい人とい …

好きであることは自分への責任であり、義務である。

「好きなことをみつけて、それを一所懸命やれよ。 好きなことのない人生はつまんねー …

「美しき手順」を持つものに、運命の女神は微笑むのだ。

「はじめて日本に行って、 お店でちょっとしたおみやげを買ったとき、 本当にびっく …

ZEPを見ながら考えた、「無意識に選び取ること」が“適性”

映画『レッド・ツェッペィン:ビカミング』を観てきました。 ツェッペリンの結成当時 …