妄想、体験、疑似体験
「芸の肥やし」ということばもありますが、
さまざまな経験を積むほどに、その人の芸や芸術は深みを増し、
また、磨かれるもの。
人、土地、もの、状況など、出会いが多いほど、
表現したいことも、表現方法も豊富になります。
人は、そんな、リアルで豊かな表現を持つ人に惹かれるのです。
たくさん旅をして、たくさん出会いや別れを経験して、
たくさんのものを実際に手に取って・・・
さまざまな種類の感情を経験する。
たくさん悩んで、たくさん考えて、
そんな時間が、どんどん自分という人間を豊かにし、
深めてくれます。
とはいえ、どれだけアクティブに行動しても、
人が一生に経験できることは限られています。
一生に歌うラブソングの数だけ恋愛をすることも、
一生に演じるすべての映画の登場人物と同じ経験をすることも、
一生に書き綴るすべての小説の場面を経験することも不可能なのです。
表現者たちは、そんな、実際には経験できない、
あるいは、経験したことのない情景や状況を
妄想力と疑似体験で埋め、新たな感覚を自分の中から取り出すのです。
訪れたことのない国の空気感や匂いも、
その土地の写真や、本や、映像と、
自分の記憶にプールされた、さまざまな経験が化学反応を起こすことで、
あたかも実際に訪れたかのように感じられるようになります。
出会ったことのない人、
経験したことのない職業や恋愛、
触れたことのないものの肌触りや、口にしたこともない味さえも、
疑似体験と妄想によって、
あたかも今、自分が経験している感覚のように取り出せるようになる。
それも、表現者のすべき訓練のひとつです。
とはいえ、もちろん、実際の経験は、少しでも多い方が、
疑似体験自体の幅も広く、深く、リアルになります。
また、未知の出来事への妄想を広げることで、
実際に経験することの幅も広がってゆくもの。
たくさん妄想して、たくさん経験して、たくさん疑似体験をする。
表現者としても、人としても、積み重ねて行きたいことです。
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