「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」
「声くださ〜い」
音楽の現場に長くいるので、
この「声ください」というフレーズが一般人に通じるものなのか、
それとも業界用語のようなものなのか、最早わからなくなっておりますが・・・
マイクのチェックをするときに、音響エンジニアさんや、
レコーディングエンジニアさんからこう言われるときは、
もちろん、
「マイクをつかって声を出して下さい」ということですね。
さて、この「声ください」への反応は実にさまざまです。
いきなり、「あ゛〜〜〜〜っ!」と大きい声を出す人、
「あ・・・あ・・・あー」と、奥ゆかしい声をおずおずと出す人、
「おはようございます。ヴォーカルの○○でございます」などと挨拶をはじめる人。。。
さて、ここで考えたいのは、
音響さんやエンジニアさんは、なぜ、「声ください」というのか?ということ。
マイクが生きてるか、死んでるか知りたいのか?
それとも、あなたのお名前が知りたいのか?
(ちなみに、挨拶をはじめる人のほとんどは業界慣れした方で、
ユーモアのようなものです(^^))
生まれて初めてコーラスのお仕事で大きなホールに立ったときのこと。
ただでさえ、とてつもなく大きなステージにどぎまぎしていたのに、
(初仕事は横浜スタジアムでした)
いきなり「声ください」などと言われて、ものすごく狼狽した私は、
もちろん、
「あ・・・あ〜・・・あ゛〜〜〜」とやってしまいました。
音響さんはとても紳士な方が多いのもあり、
特にご意見もなかったのですが、
舞台袖で聞いていた舞台監督さんに、
「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」と叱られました。
そうです。
音響さん、エンジニアさんは、
まずは、マイクが生きているかどうかの確認もあるでしょうが、
マイクに乗ってくる声を聞いて、
音量調節や、音色のチェック、エフェクターのチェックなどをしたいわけです。
歌の中で「あ゛〜〜〜」と叫ぶならともかく、
オシャレに「Hooo」とか、「I love you〜〜♪」と歌うのに、
「あ゛〜〜〜」では、なんのチェックもできませんね。
かつて教えていた音楽学校でエンジニアリングを学んでいる学生に、
ヴォーカル科のレコーディングを手伝ってもらう機会がありました。
お勉強レベルで、機械の操作しか学んでいなかった学生たち。
しかもその時の彼らにとって、私は初対面の、
おそらくはレコーディング経験も怪しい、
ただの「歌の先生」。
「マイクチェックするんで、しばらく待っててください。」
と言ったかと思うと、アシスタント役の子がスタジオ内に入って、
マイクでいきなり、
ふざけ半分で「ウオ〜〜〜っ!」と叫びはじめたのです。
貴重な授業時間内。
それだけでも充分イラッとしたのですが、
やがて、
「立て〜〜っ!立つんだジョ〜〜っ!」と叫びながら、
エンジニアの子と一緒にゲラゲラ笑いはじめました。
その後の彼らの運命についてはここでは言及いたしませんが、
ま、あり得ないデリカシーのなさですね。
「声ください」でいきなり歌うのは恥ずかしいかもしれませんが、
それもヴォーカリストの仕事のうち。
もちろん、細かい調整は演奏の中でしてくれるのですが、
歌ったときどんな声になるのか、
どんな雰囲気で歌うのか、
ヒントになるような「声」をあげたいものですね。
アンサンブルの授業で、
きまじめにマイクチェックをする生徒の「あ゛〜〜」に思わず笑ってしまい、
ブログに書くと約束したので、今日はマイクチェックのお話でした(^^)
がんばりたまえ。コバヤシくん&ウォ〜リ〜。
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Comment
私は、ど素人なんですけれど、アマチュアでコピーバンドのVo.をしているのですが、この「声ください」には、いつも悩まされているのですが、つまり、歌を歌えばいいってことなのでしょうか?リハの最中に、いきなり、私がアカペラで歌いだしたら、「なに?自分が歌、上手いと思ってんの?」みたいに思われやしないかと、いつも、あ〜あ〜とか、してたのですが…
初めまして!\(^o^)/
長崎から、たまにチェックしてます♪ガリバーボーイの逢いたくて。中学の時に聴いて、あれから20年。。歳を重ねる度に、ぐっとくるMISMIさんの曲。いつかお逢いしてありがとうって言います♪(=゚ω゚=)
懐かしい歌を覚えていて下さって、ありがとうございます!嬉しいです。
「よろしくお願いします」とか一言いってから、軽く歌うのは自然なことです。ヴォーカリストなら、「自分が歌、上手いと思う」のは義務みたいなものですから、堂々と歌っちゃって下さい(^^)
初めまして。時々拝読してます。地方で管楽器を吹いてます。
>「自分が歌、上手いと思う」のは義務みたいなものですから、堂々と歌っちゃって下さい
納得しました。