「同じに出す」が一番難しい。
同じ音を連続して弾くとき、
ピアノという楽器の完成度の高さを、
しみじみと感じてしまうのは私だけでしょうか?
文字通りネコが弾いてもそこそこの音色が出る。
こどもの指でもある程度の音量が出せる。
ヘタな人のバイオリンの音色は歯ぎしりを聞くより酷いそうですし、
トランペットやフルートは音をまともに出すだけでも苦労します。
誰でも弾けそうな印象のあるギターでも、
きちんとしたチューニングで音階が弾けるようになるまでには、
ある程度の練習が必要です。
ピアノってすごいですね。
しかし、それでも、人間のカラダの完成度に比べたら、
まだまだです。
信じない人の方が多いかもしれませんが・・・
人間のカラダは「誰でもいい音色が出せる」、
「思い通りの音量が出せる」ようにつくられた素晴らしい楽器です。
神様がつくったものですから、
その表現力、可能性は底知れない。
人間が何千年がんばったって、
これほどの完成度の楽器を生み出すことは不可能でしょう。
私たちは、どんな声も自由自在に出すことができる。
これはカラダという楽器の素晴らしさであると同時に、
難しさでもあります。
人間のカラダが最も苦手とすることの一つは、
「同じことを全く同じように繰り返す」こと。
つまり、同じ音程の、同じ大きさの、同じ音色の声を、
連続して出すことが非常に難しいと感じるわけです。
歌ともなると、おまけに「歌詞」という難物があります。
さまざまな子音と母音の組み合わせであることばの表現をつけながら、
同じ高さの音を同じ音量、音色で出し続ける。
音を途切れさせないように子音をくっきり出すのも難しければ、
母音の変化と音色の変化を連動させないように歌うことはもっと難しい。
せっかく「あ」で、明るくていい声が出ても、
「い」はぺらっとなるし、
「う」はこもるし、
「え」は下がるし、
「お」は暗くなる。
それが母音というものなのだけど、
そこに身をまかせていたのでは、
いかにも音楽的じゃなくなります。
マニアックですか?
歌っている人でも、
この難しさに気づいている人は意外なほど少ないんですね。
だから、音色が安定しない。
ピッチ感がくっきりしない。
ことばが胸に響かない。
例えば今をときめくクイーンの”Bohemian Rhapsody”の出だし。
“Is this the real life?”
メインに聞こえてくる音の高さはずっと同じですが、
この1行を同じ音色、同じ音量で、
滑らかに歌うだけでも、なかなかな奥の深さです。
ポイントは3つ。
1.まずは「音色」にフォーカスすること。
明るくていい音色を出すとピッチは自然にあたってきます。
楽に、気持ちよく出せる、心地よく抜ける声を探します。
2.ことばの変化で音色が変化しないようにすること。
音色にフォーカスしたまま、ことばを発音し、口の形を微調整していきます。
特に母音が変化しても、音色が変わらないポジションをみつけましょう。
3.音が途切れないようにすること。
子音が差し挟まれても、声は1行ずぅ〜っと途切れずに鳴り続けているイメージです。このイメージが、滑らかさの決め手になります。
ピアノのような安定感を持ってこそ、
ピアノの表現力を大きく越える、
「声の力」が発揮できるのですね。
日々、修行です。
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