大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「切り替え」と「集中」で精度を上げる!

   

インプットとアウトプットを、
高い精度で両方一度にこなせるという人は
一体どのくらいいるんでしょう。

私は、不器用なので、
インプット時期、
クリエイト時期、
アウトプット時期、
堕落時期、
というのが、まぁ、みごとに分離していて。

これらが時に短いスパンで、
時に数ヶ月のスパンで、繰り返されます。

内にこもりたい時期にライブやイベントがあったり、
イベント企画に追われている時期に、
調べなくちゃいけない案件が出てきたりすると、
とんでもなくフラストレーションを感じて、
つくづく、「あたしって頭悪いなぁ」と落ち込むわけです。

さて。

音楽の種類に関わらず、
売れっ子シンガーのヴォイトレは、
実に難しいものです。

有名人相手で気を使うとか、
責任が重いからとか、
曲のハードルが高いとかいう理由からではありません。

トレーナーの仕事を難しくするのは、
彼らが多忙であるという事実です。

ヴォイトレは正確には「インプット」とは違いますが、
心とカラダをリセットし、
フォームに修正を加えていくことは、
非常に集中力を要する作業です。

メディアに露出しながら、
大きなコンサートツアーで全国を回りながら、
こうしたトレーニングをものにしていくのは、
いやはや、本当に難しい。

レッスンではちゃんとできても、
パフォーマンスに集中すれば、
カラダに馴染んでいないフォームは消し飛びます。

フォームに気持ちを捕らわれれば集中力を欠いて、
結果を悪くするばかりか、
事故や故障さえ起こしかねません。

理想を言えば、
最低でも3ヶ月くらいは、完全にお仕事を離れて、
ヴォイトレに集中する時期をつくって欲しい。

それが無理なら、
せめて、制作期間中などの、
本番のない時期に、集中してレッスンしたい。

こうしたお話を理解して、
スケジュールを組んでくれるスタッフさんもいますが、
売れっ子になれば、そうはいきません。

 

全国ツアーをしながら、同時進行でアルバム制作。
プリプロ、テレビ収録、取材にPV撮影。
移動時間も、空き時間も、
作詞や歌の練習に追われます。

聖徳太子並みの脳と、
アスリート並みの体力が必要な、
いやはや、大変なお仕事です。

インプット、クリエイト、アウトプットを
忙しく繰り返しながら、
すべてにおいて成果を上げていくために必要なことは、
ひとつしかありません。

「切り替え」と「集中」です。

頭をしっかり「切り換え」て、
ひとつひとつのことに「集中」するのです。

コツさえつかめば、「切り替え」は難しいことではありません。

例えば、
どんなに嫌なことがあっても、
ディズニーランドに行くと忘れちゃう、とか、
大好きな彼女と会ったらすっきりしちゃった、とかいうことは、
誰もが経験したことがあるはず。

そんなコツを、日常レベルで見つけることです。
単に顔を洗うことかもしれない。
お茶を飲んだり、
カラダを動かしたりすることかもしれない。
いくつかバリエーションを持っておくと、
いろんなシーンに対応できますね。

「切り替え」がうまくいったら、
今、そのとき起こっていることに「集中」すること。
今、自分が向き合っていること。
今、自分が全身で感じていることに「集中」するのです。

自分が誰とか、
この後にどこに行って何をしなくちゃいけないとか、
これが何のためになるのかとか、
すべて、ノイズ。

ノイズに意識を持って行かれると、
精度は上がりません。
精度が上がらないから、なおさらフラストレーションがたまる。

集中して、精度を上げて、結果を実感して、自信を育てる。
この繰り返ししかないんですね。

私、ただいまインプットの真っ最中。
毎日たくさん本を読んでいるせいか、
ことばは溢れるほど出てくるのですが、
文章がうまくまとまらず、
たったこれだけの文章に、
時間ばっかりかかっています。

集中ですぞ。みなさん。「切り替え」と「集中」!

 

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