心のブレーキをぶっ壊せ。
初めてシーケンサーを手に入れて、
ひとりで音楽をつくりはじめたのは、
22〜23才くらいのことだったと思います。
「バンド・メンバーと一緒に曲を仕上げる」
という、ビートルズの映画で見た風景を想像しながら、
オリジナルの曲をバンドの練習に持ち込んだものの、
誰からも、なんのアイディアも出てこない。
「俺がアレンジしてくるよ」と、
親切にも申し出てくれる子たちにまかせても、
できてくるアレンジは、
頭の中で鳴っている音とはほど遠い。
音楽というコミュニケーションの壁にぶつかり、
途方に暮れていた頃、
ユニットに誘ってくれた先輩ミュージシャンの家で、
シーケンサーというものを、初めて見ました。
家庭用パソコン登場以前のお話です。
シーケンサーというのは、
ティッシュケースを2つ並べたくらいの白い箱。
これね↓
先輩がこの小さな小窓を見ながら、
コマンドや数字をパタパタと打ち込むと、
あら、不思議、
ドラムの音やベースの音が出てきます。
すごい!と思いました。
これがあれば、自分の頭の中にある音を形にして、
みんなに聞いてもらえるかも知れない!
同時に、猛烈な心のブレーキもかかります。
こんなもん、つかえるようになるわけないじゃない。
そもそも、アレンジなんて、できるわけないじゃん。
機械なんて、なんにもわかんないのに、
どうやって覚えるつもり?
ぜんぶ買いそろえたら、一体いくらになるんだろう・・・?
できない理由、やらない理由というのは、
実に都合よく、ぽんぽん出てくるものです。
誰だって、未知なる分野に飛び込むのは怖い。
できるかできないかわからないことにチャレンジするのは恐ろしい。
損はしたくない。
「だから、やらない」を選択したいんですね。
残念ながら、こんな時は必ず、
「本気で音楽やりたいの?
死ぬ気でやればなんだってできるでしょ!」という、
自分自身への激しい檄が飛んできて、
買いそろえる以外の選択肢が見つからなくなります。
かくして、
ろくに音も出せないMIDIキーボードと、
うんともすんとも言わない白い箱、
そして、外国語の辞書で埋め尽くされたような分厚いマニュアルを前に、
孤軍奮闘する日々がやってきたのでした。
やりたい!というパッション、衝動は、
どんなときも、
頭であれこれ考えたり、計算したりするよりも、
確実に正しい答えをくれます。
苦しい方を選択することでしか、
切り開けない道がある。
人間、歩き出せば、なんとか最後までたどり着けるもの。
たどり着いてみれば、必ず、その「先」が見えるもの。
このときに手に入れた音楽的な自由が、
やがて新たな景色を見せてくれることになるのですが、
そんなお話は、また少しずつ。
◆毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
よき時代のよきものを、 いい形で後世に伝える方法
高校時代、何が嫌いって「古文」の授業くらい 嫌いな授業はありませんでした。 使わ …
-
-
当たり前に続けることが、「特別な力」になる。
中学、高校と、 6年間も練習をしまくったにも関わらず、 ピアノもギターも「残念」 …
-
-
ほんっとに「一期一会」
一期一会。 若かりし頃はあまりピンとこないことばでしたが、 年を重ね、世界を巡り …
-
-
起きてみる夢 寝てみる夢
「うちの子、声優になりたいって言ってるんですよ、先生」 そんなお母さんの相談を受 …
-
-
「あのね、わかる人と変わってください!」
先日、某携帯電話のS社に問い合わせの電話をかけました。 新規にiPadのセルラー …
-
-
「表現したい」という欲求は、 それが可能な人にのみ与えられるエネルギー。
「クリエイティビティの源は何ですか?」と聞いたら、 「リビドーですよ」と答えたア …
-
-
同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す
人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …
-
-
ニッポンの女子力!
今日は、Show-Yaがプロデュースする、”Naon No Yaon …
-
-
自分が自分であることの奇跡
今日はお誕生日でした。 いくつになっても、誕生日はとてもワクワクし …
-
-
ウサギとカメはどっちがすごい?
私の生涯の夢のひとつに、 「徒競走で旗の下に座りたい」というのがあります。 笑え …
- PREV
- バンドやりたい。
- NEXT
- 苦しさも音楽の一部だから。