「バンドとやる」の本当の意味
大学の授業に「アンサンブル・レッスン」というのがあります。
なんだかカチッとしたネーミングで、
最初に担当することになったときはドキドキしたものですが、
要はバンド・クリニック。
楽器担当の先生とペアで、
基本はヴォーカリストに、
バンドと一緒に演奏するときのコツを伝えます。
ヴォーカリストとして、
バンドにアドバイスすることもしばしばです。
自分で言うのもなんですが、
ありとあらゆるシチュエーションでギグったりジャムったりしてきた、
笑えるくらいの百戦錬磨な私。
気がついちゃうこと、言ってあげたくなることは、
それはもう山のようにあって、
毎週、本当に楽しくやらせてもらっている授業です。
さて。
毎年、授業の初期段階で、何が一番気になるかと言えば、
多くの子が、自分が歌う事に必死で、
全くバンドを見ていない。いや、聞いていないこと。
譜面台の上の歌詞カードにかがみ込んで、
マイクを手に、必死に歌う。
間奏の時も、歌詞カードから目が離れない子もいます。
「ちょっとさぁ〜。ここはカラオケ屋じゃないんだから。」
そう言われて、はじめて、
あぁ、そうでした・・・となる子もいるくらい、
お互いの存在を意識せずに一緒に演奏している。
これではライブ感どころか一体感など、出るわけもありません。
毎度昔話で恐縮ですが、
私たちが学生の頃といえば、
ドラムやベースの入ったオケで歌おうと思ったら、
バンドを組む以外、方法はありませんでした。
「誰かドラムできる子知ってる?」からはじまって、
その子に会いに出かけて、
ひとしきり音楽の話をして、
相性がよさそうだったら、スケジュールあわせて、
スタジオ取って、電話で連絡して、
資料カセットに入れて届けて・・・。
さぁ、やってみよう!となるまでに、
何度もその人とコミュニケーションを取っていたわけです。
当然、そこには、
最初にデートをするときのようなワクワクがある。
演奏中は、イメージしていたような音が出てくれば、
ゾクゾク、嬉しくなるし、
あれ?違うな・・・と思えば、気まずい空気が流れるし・・・。
バンドと一緒にアンサンブル、演奏をするということは、
これすなわち、人と人とのコミュニケーション。
それ以外のなにものでもなかったわけです。
コミュニケーションには、
もちろん、面倒な面もたくさんあります。
言いたくないことを言わなくちゃいけないときもあるし、
酷いことを言われることも、いっぱいあります。
ケンカにもなるし、
修復できない溝ができることも、
お互いに傷つけ合うこともある。
でも、だから、音楽がスリリングになるんですよね。
音は人なり。
音楽を磨くことは、
コミュニケーション能力を磨くことでもあるわけです。
カラオケができ、
自分でトラックをつくること、
宅録もできる時代になり、
人間関係の面倒くささを
回避できる、便利な時代になりました。
それは、音楽の可能性を開いてくれた、
これまでスキルも自信がなくて、
音楽に近づくことさえ出来なかった人たちに
勇気とチャンスをくれた、
素晴らしい文化です。
でも、おなじくらい、
音楽にとっての大切な何かを見失いがちになる、
そんな危険もはらんでいるのです。
ひとたび、音楽でコミュニケーションを取ることの楽しさ、
気持ちよさに気づけたら、
もう二度と後戻りはできません。
学生たちもアンサンブルレッスンが終了する頃には、
見違えるようにいい顔で歌うようになります。
音楽の本当の楽しさはここからです。
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