大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「一緒にバンドやってくれませんか?」

   

「自分、なんでバンドやらんの?
ワシ、自分の歌、ごっつええ、思うで」

人生を変えるひと言というのは、
特別なシチュエーションで語られることば、
特別な人が語ることばとは限りません。

最適なタイミングで、
すとんと落ちることばに出会う。
神様のメッセージなのかもしれません。

音楽学校に行こうが、
音大に行こうか、
プロの人たちに混じろうが、
特別なことは何も起きない。
行動をする人の前でしか、扉は開かない。

しかしね。
じゃあ、何をすればいいんだ、と。

まわりの人は、みな自分より優秀に見える。
そして、優秀な人たちは、
自分のことなんか、これっぽっちも眼中に入らない。

全然相手にされてないし、
こいつダサいよなと、下に見られている。

なんにも誘ってもらえないし、
声もかけてもらえない。

そんな無価値感に苛まれて、
やめた方がマシだと、逃げ出したくなる。

ここで逃げ出せば、ゲームオーバーです。

実際、私も毎日、やめよう、
今日で最後にしようと、考えていました。

しかし、そんなときに、
あこがれていた同級生から、
冒頭のメッセージを受け取ったのです。

やめるのは、100人に聞かせて、
100人にダメだと言われてからにしろ。
100人に聞かせたのか?
なんでバンドをやらないんだ?
メンバーになってくれそうなヤツなんて、
学校にいくらでもいるじゃないか。
なんで自分から声をかけないんだ?

がつーんと衝撃を感じました。
そうか。
あたしは、まだなんにもやってないんだ。

なんにも行動してないのに、
自分が認めてもらえないって落ち込んで、
ぐだぐだぐちぐち、自分を憐れんでいるだけなんだ。

「魚は食いたい、足は濡らしたくないの猫そっくり」。

大好きなシェイクスピアのセリフが頭の中で無限リピートしました。

「そうして一生をだらだらとお過ごしなさるおつもり? 」

いや。簡単じゃないです。
具体的に、どうすべきかという答えはないんです。

「一緒にバンドやってくれませんか?」ということばほど、
勇気のいることばは、そうはないでしょう。

「え?いやー、君と?」って、困ったように言われたらどうしよう。

そもそも、ひとりもメンバーがいないのに、
「バンドやってください」って、言ったら笑われるんじゃないか?

「バンドって、なにすんの?」って聞かれても答えられない。
何が歌いたいのかもわからない・・・

それでもね。「えいっ!」と心の中でかけ声をかけて、
1歩前に進んでみる。

 

誰だって、自分の心の中に、ひとりぐらいは、
「この人とやってみたい」と思っている人がいるはず。

その人に、声をかけるんです。

どんな人でもいい。
相手が自分を知らなくてもいい。

えいっ!です。

これだけは間違いないのは、
声をかけられて、嫌な気持ちになる人はいないということ。

やる、やらないは、別です。
できない事情はいくらでもある。
だから、断られるかどうかは、フィフティフィフティ。
でも、声をかけると、自分の中で、
何かが大きく前に進みます。

断られたり、失敗したりすることは、
なんにもしないで落ち込んでいる時間に比べたら、
なんてライトで、爽やかなことだろうと、
思えるようになるからです。

欲しいものは、欲しいと声に出してみる。
真っ直ぐに手を伸ばしてみる。

声が、手が、届かなかったら、
次の手を考えればいい。

シンプルなことの中にしか、正解はないんですね。

 

“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 〆切間近。
業界トップクラスのメソッドで、圧倒的な結果を出す。ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。

 - B面Blog, Life, バンド!, 夢を叶える , , , , , , ,

  関連記事

デビューを夢見る若者は「白馬の王子さまシンドローム」?

白馬の王子さま。   苦しい人生を一転させてくれる、素敵な男性の代名詞 …

大事なのは「生きて行きやすいように自分を変える」ことだろうか?

高校1年の初夏のこと。 女子高の同級生たちと、 生まれて初めて「バンドを組もう! …

メイクに目覚める年齢 vs. あきらめる年齢

大学4年の頃、よく遊んでいた同級生の男子に、いきなり、 「っていうかさぁ、コサカ …

「 自己評価 x 体感努力量 」vs.「他人の評価 x 仕事の成果」

学生時代、こんな人は回りにいませんでしたか?   試験の朝、 「俺、め …

残念な人

ずいぶん前にちょっとだけ一緒にやったことのある、 かなり腕のいいドラマーがいまし …

「強制OFF日」=ジャミーデーをつくる

命の次に大好きな音楽が仕事になった20代の頃は、 24時間音楽のことが頭から離れ …

センサー、壊れちゃったんですね。

先ほど、今日発行するメルマガを書き終えました。 今日のメルマガは、 『自分のカラ …

年齢を公表するか、否か問題

むか〜し、 一緒にツアーを回っていたダンサーの子とおしゃべりするうちに、実は彼女 …

コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する

自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …

デビューにこぎ着けた若者に共通の特徴

最近、かつての教え子たちの活躍がめざましく、 SNSなど開くたびに彼らのニュース …