あの頃の私を探さないでください。
中学で音楽に目覚めてから、
プロの世界の入り口に立つまで、
とにかく音楽以外のことには、まったく目が向きませんでした。
誇張でもなんでもなく、
まともに化粧品というものを買ったこともなければ、
服に興味を持ったこともありません。
大学4年の時、
同級生のなかよしの男の子にいきなり、
「キミさ、化粧くらいしろよ」と言われて、
え?化粧って何?と、突然、意識が向いたレベルです。
美容院で店員さんに、いきなり
「口紅くらい塗らないの?」と言われたこともあります。
(なんて失礼な!)
バイト代は全部、
音楽活動、歌の学校、ピアノ教室、ジャズダンスというお稽古事、
そして、機材の購入費に消えました。
プロでやっていきたいのに、
キャリアの道が開けなくて悶々としていた頃、
はじめて、自分自身の「見た目」と、
向き合うようになりました。
音楽をどんなにがんばっても、
不細工で、歯並びが悪くって、
おしゃれとか、お化粧とか、
何ひとつわからないような女は、
業界じゃ相手にされないんだ・・・
猛烈にルックスコンプレックスが芽ばえました。
なんとかしなくちゃ。
でも、一体、なにを?
普通の女子が10年くらいかけて修行することを、
一切興味を持てなかった人間が、
いきなりマネをしようとしたって、
そう簡単にはいきません。
途方に暮れました。
化粧品をひととおり買いそろえても、
コーラスの相方に、
「MISUMIって、なんでまともな化粧品一個も持ってないの?」
と叱られる。
一緒にお化粧をしていると、
あまりの下手さにあきれられ、
「ちょっとさぁ、こっち向いて!」と顔をいじられる。
イベントで歌うお仕事をくれたプロデューサーは、
「これ着なさい」と、服をくれました。
まともにステップも踏めなくて、
鏡の前で、右、左とリズムを取る練習をさせられたこともあります。
ヘアスタイルも酷かったし、
ファッションもスタイルもイケてない。
顔はぱんぱんでお化粧も超へったくそ。
「垢抜けないヤツ」の代表のような存在でした。
その頃の写真は、絶対に人目にさらせません。
私を探さないでください、です。
自分自身を外側から見ること、
自分のイケてなさと向き合うことは、
とても苦しく、つらいことでしたが、
しかし、それは同時に、おおきな転機にもなりました。
人の価値観はどうでもいい。
自分が見たい自分にならなくちゃ。
そう気づいたのです。
自分を好きになれれば、
人前に自信を持って立てる。
人は「自信のある人」を見たいんだ。
もちろん、自己嫌悪のかたまりだった私が、
自分を好きになることは、
簡単ではありませんでした。
実際、それから何十年もかかってしまいました。
それでも、
歯並びを直す、
雑誌で見つけた美容院で思い切って髪型を変える、
お化粧を習う、
エステに通う、
ダイエットをする、
ジムに通う、
気になる服をどんどん買ってみる…etc.
そうやって、
時間とお金と労力を、たくさん投資して、
ちっちゃな成功体験を積み重ねたことで、
ちょっとずつ、ちょっとずつ、
人に誉めてもらえる機会が増え、
ちょっとずつ、ちょっとずつ、
自信が育っていきました。
自信が育てば、比例して、評判が上がります。
お仕事もどんどん上り調子になりました。
気づいた時が転機。
逃げない。目をそらさない。投げ出さない。
変化を恐れない。
どんなちっちゃなステップでも、
踏み出せば、必ず前に進めるのです。
10年も歩き続ければ、それなりの距離を進めます。
時間がかかることを恐れて、
最初の1歩を踏み出せなければ、
人は一生変われません。
まだまだ、勝負はこれからですぞ。
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