「譜面なんか読めなくてもいいっすよね?」
「音楽、やらないんですか?」
一般の方とお話していて、ふとそんな質問をすると、
「いやぁ。私なんか、譜面も読めないんですよ」
という答えが返ってくることがあります。
音楽=譜面。
そんな風に考えている人が、
少なからずいるということに、
何とも不思議な気持ちにさせられます。
確かにクラシック音楽を学んでいると、
譜面はなくてはならないMUSTアイテム。
譜面は、おそらくは、メディアも録音機材も、
ろくな交通手段もない時代に、
音楽を人から人へと、間違いなく伝えるために、
後世に名曲の数々を残すために考え出された、
いわば、世紀の発明でしょう。
譜面には作曲家たちの想いや、
演奏家たちの閃きなどが書き込まれています。
いかに譜面を正確に読み取るか、
はたまた「譜面という箱」からなにを取り出すかは、
クラシックの演奏家たちにとっては、
とても重要なことなのです。
一方で、ポピュラーやジャズの世界では、
譜面はいくつかの約束事が書き綴られたマニュアルのようなもの。
もしくは、みんなでおなじタイミングで、
おなじ場所に行き着くための地図のようなもの。
実際、ポピュラーやジャズの世界には、譜面が読めない、
リハーサルにも、レコーディングにも
正式な譜面など一切使わないという、
プレイヤーはたくさんいます。
バンドの音を聞けば、
自然にそこに乗っかってプレイができる人。
他の人が演奏するのを聞いて、
あっという間に進行を覚えてしまう人。
リハーサル中に、
バンドメンバーでアレンジを考えるため、
ライブやレコーディング段階では、
すでに進行が頭に入っているという人。
自主練するうちに、
進行が自然にカラダに入ってしまうという人。。。etc.etc…
ポピュラーの世界は、
譜面=音楽とは少し違う世界です。
しかし、もし、「譜面は読めなくてもいいのか?」
という質問をされれば、
「いや。やっぱりちゃんと勉強しましょう」と答えます。
特にプロのプレイヤーやシンガーを目指すなら、
ある程度譜面が読めないと、
必ず苦労する日はやってきます。
ちなみに、プロの世界で「譜面が読める」というのは、
ばっと譜面を広げられたら、
その場で楽器をつかわずに譜面に書かれたように歌える、
または、
巻物のような譜面をば〜っと配られて、
1回つるっとリハしただけで、
2回目は本番のレコーディングができる、
という驚愕のレベルです。
私自身、ピアノを10年ほどやっていたのもあって、
ちょっと練習すれば、
譜面を見ながら、ある程度の曲なら弾くことができますし、
長年スタジオで鍛えられたので、
ちょっと時間をもらえば、
(できればピアノがあった方がありがたいのですが)
譜面を追いながら歌う事もできないわけではありません。
しかし、このレベルは、
「一応、譜面は追えますが、あんまり得意ではありません。」
というレベル。
それでも、スタジオやサポートのお仕事を目差すなら、
最低限、このレベルはクリアしておかないと、無理なんです。
(もちろん、驚愕のレベルに行きたい人は、
さらにさらにがんばってください!)
シンガーソングライターや、
シンガーたちは、
そこまで目差さないにしても、
少なくとも、自分が歌っている音が、なんの音なのか、
その時楽器はどんなコードを弾いているのか、
理解できるようになりましょう。
シンガーソングライターでも、
ろくに譜面を読み書きできない子が実はたくさんいますが、
多くの子が、
譜面で書き表せない音を平気で歌っている。
譜面にない音オンパレードでは、
聞いている人は当然、「ピッチが悪い」と感じます。
自分が歌っている音を確認することで、
初めて歌うべき音がクリアに見えてくるのです。
さらに、声域のチェンジのプランニングもできますし、
自分が書く曲の傾向をチェックすることもできます。
天然で曲を書いているだけだと、
ついついメロディやコードの進行が
ワンパターンになったりもします。
「譜面が読めないから・・・」と音楽を敬遠している人には、
「譜面なんか、読めなくても大丈夫!」ってことを、
そして、
「譜面なんか読めなくてもいいっすよね?」
というミュージシャンには、
「いやいや、とりあえず、勉強して!」ってことを、
お伝えしておきたい、今日のブログでした!
◆10月29日(日) 【MTLワークショップ in 鹿児島/あなたの歌を劇的に変える7つのヒント(仮タイトル)】を開催します。
◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。
◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。次期受付開始は10月末の予定です。
関連記事
-
-
本物に触れる。 本物を知る人の感性に触れる。
ずいぶん昔のことになります。 親戚の知り合いだったか、 知り合いの親戚だったか、 …
-
-
歌には”仕掛け”と”意図”がある!
昨今、カラオケのおかげか、 はたまたYouTubeやアプリのおかげか、 巷に歌の …
-
-
「学校なんかいくら通ったって、 人を感動させられる歌なんか歌えるようにならないだろ?」
音楽やりたい、バンドやりたい、と思った瞬間を覚えているでしょうか? お兄ちゃんが …
-
-
ゼロ地点に戻れる曲は あるか?
KIMICOKOライブ以来、不定期ながら朝練を続けています。 最近のお気に入りは …
-
-
なんだってやってやる!?
学生時代からさまざまな現場で引っぱりだこになったり、 早々にデビューして周囲にち …
-
-
「本気で好き」ということ。
「歌が好きなんです。 本気でシンガーになりたいんです。」 そんなことばを聞くたび …
-
-
80sを語ったっていいと思う
少し前、学生に「最近どんなの聞いてるの?」と質問したら、 「僕、結構古い音楽が好 …
-
-
「課題曲」って、どうよ?
大学4年になったばかりのこと。 清水の舞台から飛び降りる気持ちで通い始めた歌の学 …
-
-
集中力ってのは、訓練だ。
「売れてるプロほど、ますます上達する」と言われます。 そもそも売れ始める時点で、 …
-
-
「動画、まだヨコで撮ってるんすか?」
まわりにナマイキなことを言う「若者」が増えてきました。 いや、正確に言うと、かつ …
- PREV
- テリトリーを広げよ。
- NEXT
- 人は、他人のにおいに「敏感」かつ「不寛容」なもの。