「環境を変えれば、夢が叶う」と思っていませんか?
2015/12/20
「やっぱり、歌う夢を叶えたいんです!」
そんな風に熱く語る人に、最近、とてもよくお目にかかります。
この、「やっぱり」という言葉に含まれる意味は、だいたい以下のようなものです。
こどもの頃から歌が大好きだった
→歌手になりたいと、ずっと思っていた
→親に反対された/周囲にバカにされた/それでは食べていけないと思った
→一般の大学に入った/就職した/結婚した/別の仕事をはじめた
→やっぱり「夢をあきらめられない」ことに気づいた!
そこで、学校を辞め、仕事を辞め、ときには家庭を投げ出し、
一念発起してレッスンを受けてみよう!というわけです。
今の生活を捨てて、歌という夢を叶えようと決心するわけですから、
もちろん、並大抵な気持ちではないでしょう。
悲壮なほどの情熱で、「どんなことでもする覚悟です!」と訴えてくる。
人生の方向転換はいつだって可能だと、信じる気持ちは私も同じです。
夢を叶える力は、誰もが持っている、
どんなことも、遅すぎるということはけしてない、
そんなことを、ずいぶん語ってもきました。
しかし、熱い気持ちに駆り立てられて、極端な行動を起こす前に
もう一度冷静に、ゆっくり考えてみて欲しいのです。
●これまで、「歌いたい」という気持ちを、どういう行動にあらわしてきたか?
毎日歌っていた。カラオケによく行く。。。
音楽ファンなら誰もが普通にする行動は、もちろん、カウントされません。
本当に何かをやりたい、と心から思うとき、
人は死にものぐるいで、それに取り組みます。
誰よりも秀でるくらい、その何かに徹底的にこだわります。
ずっと、心から「歌いたい」と思ってきたのなら、
バンドをやる、ライブをやる、レッスンを受ける、など、歌に対する特別な行動を、
なにかしら、自然に、自発的に、やってきているはずです。
●こどもの頃から好きで、好きで、たまらなかった歌を、
なぜ、周囲に反対されたから、食べて行かれないから、
などの理由であきらめられたのか?
「仕事として音楽をやりたい」というこどもに、諸手を挙げて賛成する親は稀です。
食べて行かれる仕事をきちんとして、音楽は趣味で続けて行けばいい、
という気持ちは、こどもの将来を案ずる親なら、誰もが思うことでしょう。
プロになった人たちは、そんな親たちを既成事実で納得させてきました。
その音楽に対する情熱や、行動で、
「もしかしたら?」「そんなに好きならしょうがない」
と周囲を納得させ、あきらめさせてきたのです。
食べて行かれるとか、行かれないとかいうことと、
音楽を続ける、続けないということとは、全く別の議論です。
●本気で歌をやりたいから、生活を変えたいのか?
単に、今の自分から逃避したいのか?
学校を辞める、仕事を辞める、家庭を投げ出す・・・
これらの行動は、歌を真剣にやるということとは別の次元の話だということを、
忘れないで欲しいのです。
生活を大きく変えることは、考えただけでもアドレナリンが出ます。
自分が特別な人間になったような、エネルギーを感じるかもしれません。
しかし、そんな興奮は長続きしません。
音楽と真剣に向き合う地道な日々は興奮とは無縁のものです。
自分の本気を試すために、もしくは自分の本気を周囲にアピールするために、
極端な行動に走りたくなることもあるでしょう。
しかし、いきなり生活を大きく変える前に、やれることはいくらでもあるはずです。
自分を試すなら、今の生活の中で、
可能な限り振り切って、思い切って、行動を起こすことからすべきです。
●レッスンを受けることが「歌いたい」という夢を叶えることになると思っていないか?
トレーナーや学校の先生ができることは、技術面や精神面で、
生徒たちをサポートすることだけです。
彼らが手を引いて、どこかに連れて行ってくれることも、
プロへのレールを敷いてくれることもありません。
ましてや、自分の夢を叶えてくれるわけでは絶対にありません。
お金を払って、特別な空間に身を置けば、
自分自身が特別な人間に変わっていく気がするかもしれません。
しかし、それは、夢に近づいて行っているという幻想をお金で買っているに過ぎません。
自分の夢は自分以外には叶えられません。
幻想に浸っている間に、いたずらに時間を浪費している人はたくさんいます。
夢に燃える想いに水をさすつもりはありません。
情熱がなければ、もちろん夢は叶いません。
それでも、だからこそ、
周囲の思惑や、自分を取り巻く環境を基準に生きることを止めなくてはだめなんです。
向き合うのは自分。
それこそが、覚悟です。
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