情熱に心捕まれて。
生まれて初めてバンドの「まねごと」をしたのは中学1年でした。
掃除用具入れから取り出したほうきを、
友達と一緒に、ギターのように抱え、
ある子は椅子の前にバケツを並べて、
ドラムセットのように叩きながら、
うそくその英語で歌いまくる。
(あれを「まねごと」というのは、
なんか申し訳ない気がしますが・・・)
みんな、バンドに夢中でした。
学校で問題になりながらも、
みんなで一緒に武道館に行きました。
「あたし、レスリーの彼女になりたいっ!」
「きゃああ、パットが私を見初めたらどうしよぉおおお。」
(そう。あのバンドです。)
みんなが椅子の上に立ち上がって、
曲も聴かずに絶叫をしている中で、
度の弱すぎるめがねを斜めにかけて、
あそこのギターはどう弾いているのかしら?
どんな風にバンドのメンバーは目配せするのかしら?
などと、食い入るようにステージを見ていた私は、
後に学校で噂になるほど、完全に浮いていました。
時が経ち、学生時代。
練習が終わると、毎日のように近くの食堂に出かけては、
バンド仲間たちと音楽談義に花を咲かせました。
「やっぱ、プロってすごいよなぁ。」
「今度、あのバンド見に行こうぜ。カッコいいよぉ〜。」
そんな風に、みんなが、
プロミュージシャンや有名ミュージシャンを、
完全に別の世界に生きている生き物のように崇拝しているとき、
私は毎日、
この人は何才から楽器を始めたんだろう。
何才でプロになったんだろう。
どうやってプロになったんだろう。
どうやって、すごい人たち同士は知り合いになるんだろう。
いや、どうやったら、すごいって言われるようになれるんだろう。
などということを絶望的な思いで、
ぐるぐるぐるぐる考えながら、
(今の時代ならポンとググればすぐにわかることばかりだというのに)
毎日毎日練習に明け暮れていました。
「おとなになれ」、
「現実社会をちゃんと見ろ」
そんな私に、言い聞かせてくれた人もいました。
「キミ、ホントどうするの。」
「なに考えているの。」と、
呆れたり、見放したりした人も、
(おそらくは私が知っているよりもずっとたくさん)いました。
「羨ましいね〜。そんなの許されるの?」
「どうせ結婚すりゃあいいとか、思ってるんだろ?」と、
あからさまに馬鹿にした人もいます。
正直ね、きついですよ。
自分だって、どうしたらいいのか、
何からはじめたらいいのか、
さっぱりわからない。
ただただ、歌いたい。プロになりたい。認められたい。
そんな強い衝動が、どうにもこうにも抑えられない。
理由なんかない。
根拠なんか、もちろんない。
挙げ句の果ての、四面楚歌でした。
好きなこと、やりたいと思うことと、
適度な距離感を持って、
気楽に、楽しくつきあえるなら、
こんなに素晴らしいことはありません。
音楽とだって、
そうやって距離感を持って関わって行かれたら、
きっと、きっと、
生きることはどんなに楽でしょう。
しかしです。
一度でも、なにかに心をグワシャッとつかまれたら、
傍観者ではいられないのです。
ざわざわとする思いに背を向けて、
他のみんなと一緒に日常を何食わぬ顔をしてやり過ごそうとしたって、
心を捕まれた「それ」に、
ずぅ〜っと苦しめられることになる。
「情熱」って、痛みとか苦しみとかでできているんですよね。
「情熱」に胸を捕まれたら、苦しくても、つらくても、
どうしたらいいかわからなくても、
とにかく、匍匐前進でもいいから、一歩でも前に進むしかない。
毎日、数ミリでもいいから、
前に、前にと、這うように進むしかない。
苦しんで、苦しんで、のたうち回っているうちに、
やがて目の前が、ばぁ〜っと開けるような、
そんなすごい瞬間が訪れます。
それはもう、絶対に訪れます。
「情熱」は、私たちをその場所へ連れて行くために、
心の中に宿るメッセージなのです。
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