大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人は、他人のにおいに「敏感」かつ「不寛容」なもの。

   

「角の○○さんのご主人、若い頃はカッコよかったのよ。
ハワイアンバンドにいたらしいわよ。」
 
母がこう言うのを聞いて、子供心に、
ハワイアンバンドって、ずいぶん古くさいことばだなぁと思ったのを、
今でも覚えています。
 

その他にも、
ロカビリー、
グループサウンズ、
カントリー&ウェスタン、
エレキ・・・

音楽の形態を表すこうしたことばにも、
ある時代を代表するバンドの名前とおなじくらい、
いや、もしかしたらそれ以上に、
時代のにおいが染みついているものです。
 
この「時代のにおい」というやつは、
他の時代の、他の文化圏の人たちには、
違和感や気恥ずかしさを覚えるようなにおいでも、
 
その時代を生きた人たちには、
懐かしき、いわば、ホームのにおい。
自分のカラダの根っこにしみついたにおいです。
 

人は、他人のにおいに敏感かつ不寛容。
 
そして、自分のにおいにはとことん鈍感かつ、
愛着を覚えるものなのです。

 

おそらくは、私が身にまとっているに違いない、

ハードロック、
フォークソング、
フュージョン、
テクノ、
ブラコン・・・などのことばたちは、
 
新しい世代の人たちには、
私にとっての「ハワイアンバンド」や「グループサウンズ」くらいに、
古くさくって、気恥ずかしいに違いないと思うと、
何とも不思議な感覚に襲われます。
 
時代って、そういうもの。
ルーツってそいういうこと。
抵抗してもはじまらないのですね。

 

今の時代のにおいは、
次の時代になってみないと感じ取ることはできません。

 

人がCDすら持たない時代。
 
インターネットで流れてくる、
無料の情報には、
いったいどんなにおいがあるのでしょう?
 
Youtubeやitunes,applemusicも、
いつか時代のにおいと共に、
振り返り、語られる時がくるのかもしれません。
 
その時、時代は一体、どこに進んでいるのでしょう?

 

においをまとわないことが、
今の若者のにおいであるようにすら感じられる昨今。
 
後50年くらい長生きして、
無臭の若者たちの未来を、見届けてみたい。

 

その時代には、もしかして、
「ロック」も時代がぷんぷんにおう、
過去のことばになっているのでしょうか。。。

◆10月29日(日) 【MTLワークショップ in 鹿児島/あなたの歌を劇的に変える7つのヒント(仮タイトル)】を開催します。

◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。

◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。次期受付開始は10月末の予定です。

 

 - Life, 音楽

  関連記事

「人前で歌うとき」の理想的な状態

人前で歌うとき、パフォーマンスするときに、 重要だと考えていることは3つあります …

天才には、がんばらないでいただきたい。

どこからどう見ても天才という人が、 やっぱり世の中にはいるものです。 生まれなが …

知的に怠惰になった時点でゲームオーバー

PCをつかって仕事をしていると、 日々、知識をアップデートする必要に迫られます。 …

歌をはじめる黄金期?

歌をはじめるのに、 早すぎることも、遅すぎることもない。 これは私の持論でありま …

ハードでもソフトでもなく、「ヒューマン」ですね。

現在、マジカルトレーニングラボのサイトのリニューアルで、 才能あふれるデザイナー …

ちゃんと鳴らせ。

以前、お世話になった大洋音楽出版の水上喜由さんが、 「スティーブン・スティルスが …

声の温度。歌の肌触り。音の匂い。

ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …

「音楽はひとりではできない」の本当の意味

サポート・コーラスのお仕事で日本全国をツアーしていた頃。 ツアー先の地方の会館に …

成長に痛みが伴うのは、 本気度を試されているから。

高校1年の夏だったと記憶しています。 手足が痛くて、眠れない夜が続きました。 筋 …

人間の記憶は消えない?

「人間の記憶は消えない」という話を 何かの本で読んだことがあります。 実は、脳は …