大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ホンモノか?ニセモノか?

   

「あいつはホンモノだよ」
「なんか、あの子、ウソくさいのよね」

一般の人たちがどのくらいの頻度でこの言葉を口にするのか、
知るよしもありませんが、
ギョーカイでは、実によく耳にすることばです。

ホンモノか、ニセモノか。

どんなシーンでも、
プロフェッショナルがもっとも気にするのって、
そこなんじゃないか?

表面をどんなに繕っても、
どんなに上手に見かけを整えても、ダメ。

ニセモノ感は縫い目のすき間からにじみ出てくるんですね。

大昔、バンドでディズニーランドのオーディションを受けたことがあります。

おとぎの国からドア一枚隔てた裏側には、
蛍光灯が煌々と点った、
ごくごくあたり前のオフィス・ルームが並んでいました。

あぁ、そうよね。
どんなに精密につくられていても、作りモノは作りモノ。
ホンモノかニセモノかは、裏側に回ればすぐわかる。
ニセモノには、「ほころび」があるんですね。

ディズニーシーのヴェニスの街しかり、ハウステンボスしかり、
ユニバーサルスタジオしかり、映画村しかり・・・・

 

一方、本物は、ほころびがない。

フォトジェニックなメインストリートだけじゃなく、
路地裏も、レストランの厨房も、公衆トイレさえも、
ヴェニスは紛れもなくヴェニスだし、
アムステルダムは紛れもなくアムステルダム。

ホンモノは、どこを切っても、どこから見ても、
美しいところも、醜いところも全部含めてホンモノなんです。

表面をスルッとなでて、
わかったような気になるのは、
海外旅行も音楽もおんなじ。

バッキンガム宮殿やエンパイアステートだけ見て、
ロンドンやニューヨークを語るようなもの。
わかってねぇなー。となるわけです。

ホンモノは、取り繕わない。
裏側だって、内側だって、
どっからだって、どうぞ、ご自由にご覧くださいと、言えるかどうか。

美しいところも、
醜いところも、
全部含めて、「あたしです」と胸を張って言えるかどうか。

ホンモノへの道は、あぁ、とてつもなく険しく遠いのです。

◆ワンランク上を目指すシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”、キャンセル待ち受付中。
◆6日間で基礎を終わらせる。【MTL ヴォイス&ヴォーカル レッスン12】第9期のお申込み受付中。

 - B面Blog, Life, 音楽

  関連記事

「譜面台を立てるか、立てないか問題」を考える。

「譜面台を立てるか、立てないか問題」は、 これまで、さまざまなところで 語ったり …

一生ヴォイストレーナーのいらない人になる。

「歌なんか、人にならうもんじゃないだろう。」 そんなことばをどれだけ言われてきた …

「夢喰って生きられないぞ」

大学3年だったか、それとも4年生だったか。 アルバイトをしていた東京タワーのおみ …

人が日課をつくる。 日課が人をつくる。

朝起きた瞬間、 テレビをつけてその前に座り込む人。 もう一回寝ちゃおうと、二度寝 …

やっぱ、最後はエネルギー。

歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …

てやんでえ、ばかやろう!

「そんな年からピアノはじめて、モノになるわけないでしょ?」 「あなたは耳が悪いか …

大きな波を引き寄せる

音楽の仕事には、大きな波のようなものがあって、 来るときには、ど〜〜っと来て、 …

「完全無欠」を更新する。

「自分の頭の中にあることのすべてを文字化したい」などという、 イカれた考えに捕ら …

「会いたい」というエネルギー

卒業式で「じゃ、またね」と別れて、 それきり一度も会っていない友達、何人くらいい …

発信することは、ライブ・パフォーマンス。

「毎日、すごい勢いでブログをあげてるね」 最近、そんな風にいわれます。 しばらく …