大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

何を切り取るか。どう切り取るか。

   

家族や友人たちと、昔の思い出話をしていると、
記憶に蘇ることや、「こんなことがあった」と認識していることが、
まったく違って、驚くことが多々あります。

 

同じ旅行の話をしているはずなのに、
登場人物やエピソード、場所までもが、微妙に、
あるいはまったく違ったり。

同じ想い出を辿っているのに、
物事が起きたと認識している順番が違ったり。
こちらが起きたはずないと認識していることを、
明確に起きたと主張されたり。。。

黒澤明監督の映画『羅生門』さながら、

人の記憶や認識は、実に曖昧で個性的です。

 

逆に言えば、そうした記憶と認識の積み重ねが、
その人の味になっていくとも言えます。

 

同じ光景から、何を切り取るか。

どう切り取るか。

 

例えば、同じ富士山の絵を描くのでも、

荒波の向こうに小さく描くのか、
真っ赤に描くのか、
桜の木と共に描くのか、
はたまた機上から見下ろした絵を描くのか。

 

そこに、それぞれの、その時間の、
視点があり、興味があり、想いがあります。

 

この、自分の視点や興味、想いを、
鮮明に切り取り、表現することこそが、
クリエイトするということ。

クリエイター、アーティストたちの、
創作の「核」とも言えるものです。

なんとなく創る。
人に言われたままに創る。
誰かを適当に真似して創る。。。

 

「核」の感じられない作品に、
受け手は心を打たれるでしょうか?

 

音楽であれ、芸術であれ、文学であれ、
いやおそらく商品と呼ばれるものであれ、

何かを生み出し、世の中に送り出したいと願うなら、
造形テクニックや、宣伝ばかりを学んでも意味はありません。

 

心を動かされる作品と、じっくり向き合って、
アーティストたちが何を、どんな想いで切り取ったのか、
それらはどんな手法で表現されているのか、徹底的に感じ取ること。

日常的に、自分が切り取っている光景やできごとに意識を向けること。

他の人と比べ、自分の視点は何がどう違うのか。
なぜ違うのかを掘り下げてみること。

 

そんなことを積み重ねていくうちに、
次第に、自分の「核」が見えてくる。

本当のクリエイトはそこからはじまるのですね。

collageit
What you see is what you are.

 - Life, 音楽

Comment

  1. ちーちゃん より:

    核を感じ取る事、心に留めておきます。
    ありがとうございます!

  2. otsukimisumi より:

    >ちーちゃんさん
    こちらこそ、ありがとうございます!

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

ワードを変えれば、自分が変わる

有名な心理学の実験で、 「スタンフォード監獄実験」というのがあります。 ごく普通 …

no image
やる気が出ないときは、やっちゃダメ!

「なんか、どうもやる気がでなくって。 これじゃいけないと思うんですけど。。。」 …

「気になる人」。

これから有名になろうという人、 活躍する人に共通の資質は、 「気になる人」である …

”飽きない”。”慣れない”。”手を抜かない”。

何年やっている曲でも、 自分自身がその曲と向かい合うたびに、 新しい発見があった …

自分にない価値観を学ぶのが学習ってもんだ

大学で2年生のアンサンブルという授業を担当しています。 用意された課題曲を、 楽 …

ロック?メタル?ハードロック? (1)

ニューヨーク時代、久々にダイアナ・ロスが聴きたくなって、 タワーレコードへ出かけ …

上澄みをすくい取って「わかった気」にならない。~Singer’s Tips#21~

ちょっと昨日のブログの続編的なお話です。 ひとつの曲が生まれて、 受け手の手元に …

「人前で歌うとき」の理想的な状態

人前で歌うとき、パフォーマンスするときに、 重要だと考えていることは3つあります …

集中力ってのは、訓練だ。

「売れてるプロほど、ますます上達する」と言われます。 そもそも売れ始める時点で、 …

「夢に向かって邁進する」は美徳でもなんでもない。

学生時代、本の取り次ぎ店にバイトしていました。 バイトは朝の9時から夕方5時まで …