多感なこどもたちにジョークは通用しない
2015/12/20
小学生の音楽の授業のときの話です。
「ではこの曲を、誰かに歌ってもらいましょう。誰がいいかしら?」
先生がそう言うと、誰かの口から私の名前があがり、
そもまま私が、ひとり前へ出て、歌うことになりました。
歌い終えると、
「わぁ〜。上手!」「いい声〜。」とクラスのみんなが口々に誉めてくれたのです。
嬉しくて、誇らしくて、すっかり得意な気分になったとき、
音楽の先生はあざけるように、こう言いました。
「コサカさんは、歌謡曲の歌手みたいですね。
あんな風に顔をしかめて、表情をつけて歌うのは、歌謡番組の見過ぎですね。」
一瞬にして、みんなの賞賛の声はクスクス笑いに変わりました。
何十年も経った今も、あのときの恥ずかしい思いは忘れられません。
幸いにも、トラウマというほどの傷にこそなりませんでしたが、
プロになってからも、不細工に顔をゆがめた自分のライブの写真を見る度に反芻される、嫌な思い出のひとつです。
音楽の先生に歌に関するトラウマを植え付けられたという人の話は後を絶ちません。
「受け持ったクラスが毎年のように合唱コンクールで賞を取ることで有名だった先生に、 練習のとき、『おまえは口を開けてるだけでいいから、歌うな』と耳打ちされた」
「『音痴だなぁ』とみんなの前で笑われた」
「『キミの声を聴いていると吐きそうになる』と言われた」・・・などなど、
聞いただけで頭から湯気が立つほど頭に来るような話が、次々と飛び込んできます。
人前で歌うのが怖くなったり、自分の声が嫌いになったり・・・
先生たちの心ないことばに、
一生心に残る嫌な思い出を植え付けられた人たちはたくさんいるのです。
先生たちも悪気はなかったのかもしれません。
ジョークのつもりで、または生徒たちをなごませようと、
軽い気持ちで言っただけかもしれません。
しかし、多感なこどもたちに、ジョークは通用しません。
どんな時も、細心の注意を払って言葉をかけること。
自分の発言に責任を持つこと。
日々、自分の言動を顧みること。
必要であれば、フォローすること、などなど。
人に教える身であれば、忘れてはいけない大切なことです。
私自身、勢いよく言ったことばで、
生徒を傷付けてしまっていることがあるかもしれません。
無意識に、生徒の心の中に嫌な思い出をつくってしまっているかもしれません。
人を指導する人間として、どんなときも、緊張感を持って、
大切に言葉を発していかなければと思う日々です。
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