大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「へたくそな自分」を楽しむ

   

一昔前までは、
『NHKのど自慢』に登場するような、
歌好きのひとたちって、
ものすごく実力差があったように記憶しています。

ピッチもリズムも個性的というか、
自由というか、
要は全然あってない人もたくさんいました。

でもね、緊張しながらも、
実に気持ちよさそうに、楽しそうに、
そして、 幸せそうに歌っている。
そんな人たちの姿が、
親しみを覚えて、愛おしくって。

で、一応、
キンコンカンコンと採点されたりするわけですが、
そんなことはどうでもいい。
大きなホールで、
しかも、NHKの全国放送で歌えるという、
一生に1度あるかないかのイベントを、
みなさん、大いにエンジョイしているわけですね。

音楽を心から楽しめるのっていいな。
番組を見かけるたびに、
そんな風に感じたものです。

カラオケ文化が浸透して、
カラオケに採点機能なんてものまでついて、
日本人の歌の実力は、ぐんとアップしました。

「もっと上手に歌って、みんなに誉められたい」
「恥をかきたくない」
そんな風に思う人がどんどん増えて、
カラオケも、カラオケ教室も、大いに流行りました。

『のど自慢』を見かけても、
登場する人たちの歌の実力レベルは
年々高くなっていると感じます。

日本のヴォーカル文化の底上げをしたいと、
長年取り組んでいる私としては、
もちろん、これは、喜ぶべきことではあります。

しかしね。

一方で、
「人前で歌うなら、うまくないと恥ずかしい」
「うまくないと歌っちゃいけない」
という意識が、多くの人の心に、
根付いてしまった気がして、残念でなりません。

ハッキリ言いたい。

音楽は、楽しきゃよくないですか?

うまい人は、うまいことを楽しむ。
うまくなりたい人は、うまくなりたい自分を楽しむ。
「とりあえず歌っていれば楽しいや」って人は、
好きなだけ歌う。
「へたくそだな〜」て自分で思うなら、
へたくそな自分を楽しむ。

音楽って、それでよくないですか?

日頃から、厳しく、歌の指導をしていて、
ダメな生徒たちをこてんぱんに言っている私が言っても
説得力がないでしょうか?

サルから人間になって、
なんとなく音の高さやリズムを表現できる発声器官を持って、
私たちは自然に「歌」を歌うようになりました。

嬉しいから歌い。
悲しいから歌い。
アッタマ来るから歌い。

そうやって、思いを発散させたり、
伝えたり、人の気持ちを動かしたり、
ず〜っとやってきたんですね。

だから、私たちにとって、歌うことって、
呼吸するのとおんなじくらい、
ごくごく自然で当たり前のことなわけです。

ピッチとか、テンポとか、ビートとか、
そういう規則はぜ〜んぶ後付け。

西洋音楽の規律なんて、
10万年とも20万年とも言われる人類の歴史の、
せいぜい2000年〜3000年くらいしか存在していないんです。

ピッチだの、リズムだの、
そんな他人の決めた規則なんか、
どうでもよろしい。

自由に楽しく、好きなように歌えばいいじゃないですか!

もちろん、上達したい人は、めちゃくちゃ応援しますし、
どこまでもうまくなりたい、という人の気持ちもめっちゃわかります。
カラオケにあわせられるようになりたい、
バンドと一緒にやりたい、となると、
それなりに練習は必要になるでしょう。

でもね。
「歌いたい」という気持ちになったら、
他人とか、カラオケとか、
ぜ〜んぜん気にせず、
ほんっとに自由に歌っちゃってください。

恥ずかしくなんかないんです。
それって、
ごはんが美味しくって嬉しい自分、
お風呂に入って気持ちいいって思う自分を
恥ずかしいって思うのとおなじです。

私も最近、Facebookの『週末ジェフベック倶楽部』というのに参加していて、
それはそれはへったくそなギターを披露しています。

もうね、へたくそで、見ているだけで楽しい。

プロになりたくってキリキリしていた時の自分と全然違う、
音楽の楽しさを、しみじみ味わっている日々です。

どんどん、積極的に、楽しんでいきましょう!

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