「へたくそな自分」を楽しむ
一昔前までは、
『NHKのど自慢』に登場するような、
歌好きのひとたちって、
ものすごく実力差があったように記憶しています。
ピッチもリズムも個性的というか、
自由というか、
要は全然あってない人もたくさんいました。
でもね、緊張しながらも、
実に気持ちよさそうに、楽しそうに、
そして、 幸せそうに歌っている。
そんな人たちの姿が、
親しみを覚えて、愛おしくって。
で、一応、
キンコンカンコンと採点されたりするわけですが、
そんなことはどうでもいい。
大きなホールで、
しかも、NHKの全国放送で歌えるという、
一生に1度あるかないかのイベントを、
みなさん、大いにエンジョイしているわけですね。
音楽を心から楽しめるのっていいな。
番組を見かけるたびに、
そんな風に感じたものです。
カラオケ文化が浸透して、
カラオケに採点機能なんてものまでついて、
日本人の歌の実力は、ぐんとアップしました。
「もっと上手に歌って、みんなに誉められたい」
「恥をかきたくない」
そんな風に思う人がどんどん増えて、
カラオケも、カラオケ教室も、大いに流行りました。
『のど自慢』を見かけても、
登場する人たちの歌の実力レベルは
年々高くなっていると感じます。
日本のヴォーカル文化の底上げをしたいと、
長年取り組んでいる私としては、
もちろん、これは、喜ぶべきことではあります。
しかしね。
一方で、
「人前で歌うなら、うまくないと恥ずかしい」
「うまくないと歌っちゃいけない」
という意識が、多くの人の心に、
根付いてしまった気がして、残念でなりません。
ハッキリ言いたい。
音楽は、楽しきゃよくないですか?
うまい人は、うまいことを楽しむ。
うまくなりたい人は、うまくなりたい自分を楽しむ。
「とりあえず歌っていれば楽しいや」って人は、
好きなだけ歌う。
「へたくそだな〜」て自分で思うなら、
へたくそな自分を楽しむ。
音楽って、それでよくないですか?
日頃から、厳しく、歌の指導をしていて、
ダメな生徒たちをこてんぱんに言っている私が言っても
説得力がないでしょうか?
サルから人間になって、
なんとなく音の高さやリズムを表現できる発声器官を持って、
私たちは自然に「歌」を歌うようになりました。
嬉しいから歌い。
悲しいから歌い。
アッタマ来るから歌い。
そうやって、思いを発散させたり、
伝えたり、人の気持ちを動かしたり、
ず〜っとやってきたんですね。
だから、私たちにとって、歌うことって、
呼吸するのとおんなじくらい、
ごくごく自然で当たり前のことなわけです。
ピッチとか、テンポとか、ビートとか、
そういう規則はぜ〜んぶ後付け。
西洋音楽の規律なんて、
10万年とも20万年とも言われる人類の歴史の、
せいぜい2000年〜3000年くらいしか存在していないんです。
ピッチだの、リズムだの、
そんな他人の決めた規則なんか、
どうでもよろしい。
自由に楽しく、好きなように歌えばいいじゃないですか!
もちろん、上達したい人は、めちゃくちゃ応援しますし、
どこまでもうまくなりたい、という人の気持ちもめっちゃわかります。
カラオケにあわせられるようになりたい、
バンドと一緒にやりたい、となると、
それなりに練習は必要になるでしょう。
でもね。
「歌いたい」という気持ちになったら、
他人とか、カラオケとか、
ぜ〜んぜん気にせず、
ほんっとに自由に歌っちゃってください。
恥ずかしくなんかないんです。
それって、
ごはんが美味しくって嬉しい自分、
お風呂に入って気持ちいいって思う自分を
恥ずかしいって思うのとおなじです。
私も最近、Facebookの『週末ジェフベック倶楽部』というのに参加していて、
それはそれはへったくそなギターを披露しています。
もうね、へたくそで、見ているだけで楽しい。
プロになりたくってキリキリしていた時の自分と全然違う、
音楽の楽しさを、しみじみ味わっている日々です。
どんどん、積極的に、楽しんでいきましょう!
◆基礎力がないわけではないのに、歌の評価が上がらない。思うようにキャリアアップできない。ワンランク上の世界で認められない・・・。そんな悩みを抱えるシンガーたちのための中上級者向けワークショップ、MTLネクスト。2021年2月に第2期を開講!
関連記事
-
-
世界観を限定するほど、多くの人に刺さる!
先日『THE GUILTY ギルティ』というデンマーク映画を見ました。 あまり詳 …
-
-
ひっぱたかれても納得できないことはやらない!
まだ幼稚園に通っていた頃。 つまりとんでもなく昔のお話ですが。 & …
-
-
「準備OK」な自分を育てる
欲しいものがなんだかわからなければ、 どこに向かって手を伸ばせばいいのか、わかり …
-
-
手癖でやらない。 慣れでやらない。
ここ数年、 自分というコンテンツを最後の一滴まで、 言語化、文字化、映像化して絞 …
-
-
嫌なヤツはみな反面教師
「六本木行って! え?道わかんないの? あ〜、もういいよ。途中、こっちが言うから …
-
-
【自己評価を上げるためのチャレンジ】
「あなた、ホントにきれいよね〜」 「キミって、カッコいいね。」 そ …
-
-
「がんばれる」仕組みをつくる
世の中にはがんばれる人と、そうでない人がいます。 がんばれる人からすると、がんば …
-
-
不安を煽る「洗脳営業」に騙されない!
心が弱くなる時というのは誰にでもあります。 不安なとき。 自信が揺らいでいるとき …
-
-
「続けること」のチカラ
今、どうしても叶えたいことがあったとして、 それがこの先10年間、 コツコツ何か …
-
-
音楽を仕事にできる人
「音楽なんて仕事にならない」 「音楽で食べていくのなんて無理」 音楽を志し、日夜 …
