大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

カラダに染みこませたものは裏切らない。

   

若かりし頃から、使った「歌詞カード」を
大切に取っておく習慣があります。

「ネットの時代、
ググれば歌詞なんかすぐに手に入るでしょ?」
と思うのは大間違い。

大事なのは、歌詞カードに書き込まれた、
謎のにょろにょろや、
線や記号、数字、ことば・・・などなど。

それさえ見れば、
うろ覚えの曲も、
あっという間に歌えてしまう、
まぁ、独自の譜面のような存在です。

特に、アマチュア時代の、
イケてなかった頃の歌詞カードは、
書き込みだらけで、手垢もついて、
真っ黒で、ボロボロ。

そんなものほど愛着があって、
数年前に手持ちの書類をすべて電子化したときも、
丁寧にスキャナーで読み取って、
PCの中に保管してあります。

 

さて。

ここしばらく、PCのデータの整理に奮闘する日々ですが、
今日はスキャナーで取り込みっぱなしになっていた歌詞カードに、
きちんと曲名をつけて、整理するという作業に取り組んでいます。

まだ途中ですが・・・800曲〜1000曲くらいあるでしょうか。

何度となく歌ってきた曲もあれば、
長年歌っていない曲も、
一度しか歌ったことがないような曲も
これ誰とやったんだっけ?というような曲もあります。

それでも、
思わず懐かしくなってApple  Musicで音を探して聞き始めると、
知らず知らず一緒に歌っています。

歌った曲の、フレーズのひとつひとつが、
自然に口から出てくる。
途中のアドリブまで、
カラダが勝手に反応して歌い出す、という感覚です。

カラダに染みこませたものというのは、
本当に自分を裏切らないのだな、と、
自分でも驚きました。


ライブは暗譜と決めてきました。

最近では、まぁ、意地になって、
歌詞カードを見ないように「がんばっている」感じですが、
少し前までは、徹底的に歌い込んでいるうちに、
歌詞は自然にカラダに入りました。

つまり、この800〜1000曲の曲を、
一度は覚えたことがある、ということになります。

アドリブのフレーズも、
歌詞のハメ方も、
歌い方のタイミングも、
すべて、一回覚えてみた。

鈍才の私が、
なんとか人様に評価をいただける歌を歌えるようになったのは、
結局、そういう積み重ねだったのだなと、
今は思えます。

暗譜した曲たちは、私の、見えない財産となって、
一生私の歌を支えてくれるのでしょう。


若者たちのレッスンをしていると、

時折、スマホの画面で歌詞を追いかけている子がいます。

カラオケ文化でしょう。
画面を見ながら歌う癖がある。

もちろん、時代は違いますから、
今さら、紙とボールペンじゃなきゃ、なんて、
おばあちゃんみたいなことを言うつもりは、
さらさらありません。

歌詞カードなんか、なくたって、
しっかり歌をカラダに入れられる人はいっぱいいるでしょう。

しかし。

形で残るものはいらないけれど、
自分なりのくふうやこだわりはなくちゃダメなのです。

歌がうまくなりたい人はいくらでもいる。
プロを目指している子も数え切れないほどいる。
みんながやっていることをやっているだけじゃ、
やっぱりダメなんです。


あいつ、ちょっとおかしいよね。

くらいのことを、やる。やり続ける。

やっているときは、
「こんなこと、なんの意味があるの?」と
もがき、悩み、苦しむかもしれない。

その結果がわかるのは、
あぁ、何十年も経ってからなんですよね。

「昔の自分に会ったら、なんて言ってあげたい?」
今日ジェフ夫さんと交わした会話です。

私の答えは、
「大丈夫だから、自信持って・・・かな。」。

かけてきたエネルギーは絶対に自分を裏切らない。

歌詞カードのデータたちは、
一生削除できない、大事な宝物です。

 

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
◆ 一から歌を学びたいという方にも、基礎を見直したいというプロの方にも。オンラインのお得なBasic3パック

 - B面Blog, My History, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, 夢を叶える

  関連記事

まだやれるから悔しい。 まだ行けるから苦しい。

音楽で食べていかれるかどうか。 そんなことを本気で心配し始めるのは、 大学や音楽 …

間違えるなら大胆に間違える。

ここ数日、あまり慣れないことに取り組んでいます。 慣れないことに取り組んでいると …

ことばに「自分の匂い」をしみつける

ことばには、話す人の匂いがあります。 同じことを言うのにも、ことばの選び方や言い …

「私の歌って、どうですか?」

「自分の歌ってどうなんだろう?」 歌う人誰もが一番知りたいのってそこなんだなと、 …

とにかく歌う。毎日歌う。それを続ける。

生まれて初めて包丁を持つときは誰だって、 なんのことはない作業、 例えば、単に「 …

リスペクトくださいっ!

私の通った女子校には、なんとも不思議な風習がありました。 学校のある駅を降りた瞬 …

「私のカラダはギターには向いていないんだ・・・」

高校時代、ギターリストを目差していた頃のお話。 クラプトンに憧れて、黒いストラト …

「今さらそんなことして、どうするつもりなの?」

思わず口をついてでることばには、 その人が日頃、何を信じているかが反映されます。 …

英語の歌詞を完璧に覚えるオタッキーな方法

歌詞を覚えることの大切さについては、 もう、口が酸っぱくなるほど言い続けているの …

『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』②

さて、たった2本のトラを引き受けただけのはずが、 いきなり全国ツアーを回ることに …