カラダに染みこませたものは裏切らない。
若かりし頃から、使った「歌詞カード」を
大切に取っておく習慣があります。
「ネットの時代、
ググれば歌詞なんかすぐに手に入るでしょ?」
と思うのは大間違い。
大事なのは、歌詞カードに書き込まれた、
謎のにょろにょろや、
線や記号、数字、ことば・・・などなど。
それさえ見れば、
うろ覚えの曲も、
あっという間に歌えてしまう、
まぁ、独自の譜面のような存在です。
特に、アマチュア時代の、
イケてなかった頃の歌詞カードは、
書き込みだらけで、手垢もついて、
真っ黒で、ボロボロ。
そんなものほど愛着があって、
数年前に手持ちの書類をすべて電子化したときも、
丁寧にスキャナーで読み取って、
PCの中に保管してあります。
さて。
ここしばらく、PCのデータの整理に奮闘する日々ですが、
今日はスキャナーで取り込みっぱなしになっていた歌詞カードに、
きちんと曲名をつけて、整理するという作業に取り組んでいます。
まだ途中ですが・・・800曲〜1000曲くらいあるでしょうか。
何度となく歌ってきた曲もあれば、
長年歌っていない曲も、
一度しか歌ったことがないような曲も
これ誰とやったんだっけ?というような曲もあります。
それでも、
思わず懐かしくなってApple Musicで音を探して聞き始めると、
知らず知らず一緒に歌っています。
歌った曲の、フレーズのひとつひとつが、
自然に口から出てくる。
途中のアドリブまで、
カラダが勝手に反応して歌い出す、という感覚です。
カラダに染みこませたものというのは、
本当に自分を裏切らないのだな、と、
自分でも驚きました。
ライブは暗譜と決めてきました。
最近では、まぁ、意地になって、
歌詞カードを見ないように「がんばっている」感じですが、
少し前までは、徹底的に歌い込んでいるうちに、
歌詞は自然にカラダに入りました。
つまり、この800〜1000曲の曲を、
一度は覚えたことがある、ということになります。
アドリブのフレーズも、
歌詞のハメ方も、
歌い方のタイミングも、
すべて、一回覚えてみた。
鈍才の私が、
なんとか人様に評価をいただける歌を歌えるようになったのは、
結局、そういう積み重ねだったのだなと、
今は思えます。
暗譜した曲たちは、私の、見えない財産となって、
一生私の歌を支えてくれるのでしょう。
若者たちのレッスンをしていると、
時折、スマホの画面で歌詞を追いかけている子がいます。
カラオケ文化でしょう。
画面を見ながら歌う癖がある。
もちろん、時代は違いますから、
今さら、紙とボールペンじゃなきゃ、なんて、
おばあちゃんみたいなことを言うつもりは、
さらさらありません。
歌詞カードなんか、なくたって、
しっかり歌をカラダに入れられる人はいっぱいいるでしょう。
しかし。
形で残るものはいらないけれど、
自分なりのくふうやこだわりはなくちゃダメなのです。
歌がうまくなりたい人はいくらでもいる。
プロを目指している子も数え切れないほどいる。
みんながやっていることをやっているだけじゃ、
やっぱりダメなんです。
あいつ、ちょっとおかしいよね。
くらいのことを、やる。やり続ける。
やっているときは、
「こんなこと、なんの意味があるの?」と
もがき、悩み、苦しむかもしれない。
その結果がわかるのは、
あぁ、何十年も経ってからなんですよね。
「昔の自分に会ったら、なんて言ってあげたい?」
今日ジェフ夫さんと交わした会話です。
私の答えは、
「大丈夫だから、自信持って・・・かな。」。
かけてきたエネルギーは絶対に自分を裏切らない。
歌詞カードのデータたちは、
一生削除できない、大事な宝物です。
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