大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「カッコいいもの」と、それ以外

   

音楽学校などで、
「この曲を練習してきて」と課題曲を渡すと、
「この通り歌わなくちゃいけないんですか?」
と質問してくる子が必ずと言っていいほどいます。

そんなときの私の答えはいつも決まっています。

「もちろん、そんなことないわよ。
好きなように歌ってきてくれたらいいわ。
カッコよければ。」

「カッコよければ」というのは、
私が実によく使うセリフ。
そして私の信条でもあります。

この最後の「カッコよければ」に圧を感じるのか、
まぁ、みんな一所懸命、練習してきます。
そして、こう言うのです。

「自分なりに歌おうとがんばったんですけど、
オリジナルのカッコよさには勝てないと思ったんで、
まずは完コピ目指しました。」

 

音楽には「カッコいいもの」と、それ以外しかない。
それはもう、絶対の絶対に確かなことです。

ロックだろうが、ヒップホップだろうが、R&Bだろうが、
J-popだろうが、アイドルソングだろうが、
ジャズだろうが、クラシックだろうが、
関係ありません。

うまいとか、へたとか、
ピッチがいいとか、リズムが悪いとか、
新しいとか、古くさいとか、
ぜ〜んぶ関係ないんです。

「カッコいいもの」と、それ以外。
自分にとって大事な基準とは、
結局それにはじまって、それに終わるのではないか。

どんなにマニアックであると人に言われようが、
自分にとって「カッコいいもの」しか価値がない。

みんなが「カッコいい」と認めたものが、
世の中の「カッコいい」の基準になるわけです。

「カッコいい」の理由はもうさまざまで、
たぶん、理屈じゃないところもたくさんあって。

で、「カッコいい」と言われたい私たちは、
日夜、その「カッコいい」を
盗み取っていかなくちゃいけないわけです。

それは、モノマネレベルじゃ、まだまだなんです。

 

優れた芸術家は模倣する。偉大な芸術家は盗む。
“Good artists copy, great artists steal.”(スティーブ・ジョブズ)

パフォーマンスを微細に渡って盗み取るだけでなく、
スピリットを盗む。
感性を盗む。
感覚を盗む。
生き様を盗む。

そうやって、完全に自分の血肉になるレベルまで、
徹底的に盗み取ってこそ、
「カッコいい」が自分のものになるんですね。

「カッコいいもの」を目指して、
まだまだ精進です。

 

◆ 一から歌を学びたいという方にも、基礎を見直したいというプロの方にも。オンラインのお得なBasic3パック
◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, 夢を叶える, 歌を極める

  関連記事

なかなか芽が出ないのは、ずどんといきなり成長するための準備。

毎日がんばっているのに、なかなか結果が出せない。 現在進んでいる道が正しいのか、 …

「売れ線狙い」は劣化コピーを生む。

「これ、今、売れてるから、この路線で行こう!」 そんな風に言うおじさまたちが、一 …

ネガティブ・スパイラルを抜け出す。

私たちが日常的に心の中で繰り返していることばが、 自らのセルフイメージをつくり、 …

ステレオタイプ!!

買い物先でショップの店員さんに話しかけられることが苦手です。 理由はいろいろある …

誰かに「習う」前にやるべきこと、できること。

楽器や歌をはじめたいと思うと、 「とりあえず、スクールや個人の先生を探さなくちゃ …

時代が変わって、「歌が好き」という人たちの思いは、 どれだけ変わったのだろう。

「困ったことがあったら本屋へ行け。 自分が困っていることは、他の人も同じように困 …

「そうか、映像にもグルーヴがあるんだ。」

広告代理店の映像&音楽プロデューサーの下で、 音楽選曲のお仕事をさせてもらってい …

「うちの子、音楽で食べて行かれるのでしょうか?」

まもなく成人式。 今年、新成人となる前途洋々の若者たちも、たくさんいることでしょ …

「いつはじめるか」じゃない、 「いつまで続けるか」が重要なのだ。

「やっぱりピアノは幼稚園くらいからはじめないと、モノにならないわよ。」 &nbs …

「ケツカッチン」で、劇的に成果を上げる

延ばせないデッドライン(締め切り)のことを、 業界用語で「ケツカッチン」と言いま …

S