大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

理解できない相手がクソなのか、させられない自分がダメなのか。

   

誰にも歌を認めてもらえず、
今日辞めようか、
明日ちゃんとした就職先を探そうかと、
悩んでいたアマチュア時代。

相談した友人に言われたことばは、
「100人に、歌、聞かしたんか?
そんなん100人にダメだって言われてから、考えっ。」でした。

彼が言ってくれたこのことばは、
私に大きな勇気と希望をくれました。

成功する確率が1%あるなら、
99人ダメでも、最後のひとりまであきらめてはいけない。

どんなにつらくても、わかってもらえなくても、
必ずひとりは自分を理解してくれる人がいるんだ。

今も折に触れ蘇る、大切なことばです。

 

しかし一方、
そんな「たったひとりに巡り会う努力」を続けるのと同じくらい、
「なぜ、この99人には、自分のメッセージが伝わらないんだろう?」
という視点に立ち、くふうを重ねることも、
忘れてはいけない重要なポイントです。

実は、こちらの方が、よほど難しい。

この「なぜ?」と向き合えば、
自らの表現の至らなさや、
メッセージそのものの弱さ、
伝えるテクニックの甘さが、
ひとつずつ浮き彫りになるからです。

そして、そのひとつひとつを認めてしまえば、
解決できるかどうかわからないほどの、
山のような課題を突きつけられる。

それこそ、100人に会う努力を続けることよりも、
よほど果てしなく、
恐ろしい旅の入口に立たされるようなものです。

だから、ついつい逃げてしまう。
目をそらしてしまう。

自分自身を憐れんで、
腐ったり、やさぐれたり、
挙げ句の果てに
こんなやつらにわかってもらえなくてもいいんだと開き直る。

私なんか、なんのくふうもしないで、
日本人はわかってない。
アメリカに行けばきっと理解してもらえるはずだなんて、
本気で思っていた時期もありましたから、
こりゃ痛い。

 

「伝わらないメッセージは『独り言』みたいなもの」。
デザイナーの佐藤オオキさんが著書の中で使っていたことばです。

独り言しか言ってないくせに、
自分を理解してくれない相手がクソだ、
わかってねえなと、
コミュニケーションから逃げてしまえば、
成長も発展も共感も生まれません。

伝えたいことを過不足なく表現できているか?
伝わる表現ができているか?
意図した通りに相手に伝わっているか?

これが歌なら、
歌詞の内容やメロディだけじゃなく、
音色、ピッチ、リズム、ダイナミクス、グルーヴ・・・
見直すポイントは尽きません。

向き合って、
伝える努力とくふうを重ねて、
はじめて、本物のコミュニケーションが生まれる。

「わかってくんないなら、いーもんね」

小学生じゃあるまいし、
しっぽを巻いて逃げ出す前に、
まだまだやらなくちゃいけないことは、
たっくさんあるんですよね。

◆ワンランク上を目指すシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”
◆6日間であたなの声と歌を劇的に変える【MTL ヴォイス&ヴォーカル レッスン12】第9期のお申込み受付中。

 - B面Blog, Life, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

ギターの「早弾き」 vs. ボーカルの「高い音」

ボイトレというと、高い音ばかり練習している人がいます。 実際に、スクールなどでも …

no image
安心領域から出る

「自分の年収は親しい友達10人の年収の平均だ」という説があります。 親しい人とい …

「ときめかない」ものは、「ときめかない」。以上。

こどもの頃から、アイドル歌手というものに、 ホントに興味が持てませんでした。 友 …

キレたら負け

好戦的な人というのは、どこにいってもいるものです。 まず、仕掛けてくる。 自分の …

声の変化と向き合う vol.2〜変化を受け入れ、味わい、楽しんだものが勝ち

「声の老化」についての第2回です。   第1回は、年齢を免罪符にせず、 …

「練習」とは「工夫すること」

楽器や歌を習得したい。上達したい。   しかし、実際、何からはじめたら …

音楽をどうやって聴くか?

言いたかないけど、レコードの時代に音楽に目覚めた私。 その後、さまざまな音楽メデ …

スキマ時間が自分をつくる

大学の新学期がはじまりました。 毎年、新学期がはじまってから数週間、 大学の授業 …

「歌の表現力」ってなんだ?

表現力と言うことばを聞いたことがあるでしょうか?   「彼はテクニック …

空白の美学

「アマチュアはね〜、ソロ弾いてっていうと、 全部音で埋めちゃうんですよ。 弾かな …