理解できない相手がクソなのか、させられない自分がダメなのか。
誰にも歌を認めてもらえず、
今日辞めようか、
明日ちゃんとした就職先を探そうかと、
悩んでいたアマチュア時代。
相談した友人に言われたことばは、
「100人に、歌、聞かしたんか?
そんなん100人にダメだって言われてから、考えっ。」でした。
彼が言ってくれたこのことばは、
私に大きな勇気と希望をくれました。
成功する確率が1%あるなら、
99人ダメでも、最後のひとりまであきらめてはいけない。
どんなにつらくても、わかってもらえなくても、
必ずひとりは自分を理解してくれる人がいるんだ。
今も折に触れ蘇る、大切なことばです。
しかし一方、
そんな「たったひとりに巡り会う努力」を続けるのと同じくらい、
「なぜ、この99人には、自分のメッセージが伝わらないんだろう?」
という視点に立ち、くふうを重ねることも、
忘れてはいけない重要なポイントです。
実は、こちらの方が、よほど難しい。
この「なぜ?」と向き合えば、
自らの表現の至らなさや、
メッセージそのものの弱さ、
伝えるテクニックの甘さが、
ひとつずつ浮き彫りになるからです。
そして、そのひとつひとつを認めてしまえば、
解決できるかどうかわからないほどの、
山のような課題を突きつけられる。
それこそ、100人に会う努力を続けることよりも、
よほど果てしなく、
恐ろしい旅の入口に立たされるようなものです。
だから、ついつい逃げてしまう。
目をそらしてしまう。
自分自身を憐れんで、
腐ったり、やさぐれたり、
挙げ句の果てに
こんなやつらにわかってもらえなくてもいいんだと開き直る。
私なんか、なんのくふうもしないで、
日本人はわかってない。
アメリカに行けばきっと理解してもらえるはずだなんて、
本気で思っていた時期もありましたから、
こりゃ痛い。
「伝わらないメッセージは『独り言』みたいなもの」。
デザイナーの佐藤オオキさんが著書の中で使っていたことばです。
独り言しか言ってないくせに、
自分を理解してくれない相手がクソだ、
わかってねえなと、
コミュニケーションから逃げてしまえば、
成長も発展も共感も生まれません。
伝えたいことを過不足なく表現できているか?
伝わる表現ができているか?
意図した通りに相手に伝わっているか?
これが歌なら、
歌詞の内容やメロディだけじゃなく、
音色、ピッチ、リズム、ダイナミクス、グルーヴ・・・
見直すポイントは尽きません。
向き合って、
伝える努力とくふうを重ねて、
はじめて、本物のコミュニケーションが生まれる。
「わかってくんないなら、いーもんね」
小学生じゃあるまいし、
しっぽを巻いて逃げ出す前に、
まだまだやらなくちゃいけないことは、
たっくさんあるんですよね。
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