大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

完成しない作品は、「作品」ではない

   

ずいぶん昔。

ユーミンがとあるラジオ番組で、
「美大で日本画を専攻していた」という話をしていました。

「毎週、必ず作品を提出しなくちゃいけなくて。
あの頃、苦しくてもなんでも作品を仕上げる習慣をつけたことで、
どんな苦しい時でも、途中で投げ出さずに、
曲を仕上げる力がついた。」

当時、どんなにがんばっても、
曲というものが書けなかった私にとって、
とても興味深いお話でした。

世の中には、「鼻歌で作った」とか、
「この歌詞は30分で書けた」などという、
ミリオンセラーの曲がある一方で、

苦しんで苦しんで、苦しみ倒して書いたって、
鳴かず飛ばずという曲が腐るほどある。

 

 

作品のつくり方に間違いも正解もないし、
「こうすれば絶対に名曲やヒット曲が書ける!」
なんて法則が存在するわけもない。

 

しかし、ただひとつ、確実に言えることは、
完成しない作品は、「作品」ではない、ということ。

 

 

どんなに斬新なアイディアだって、
素晴らしいデザインだって、
作品として形にならないものは、
ただの妄想。夢想。

 

もちろん、なんでもかんでも、
形にすればいいというものではありません。

作品と呼べない完成度のものを、
作品とカウントするのは情けない。

プロプロはプリプロ。
デモはデモです。

その作品の制作に、
自分の中で終止符、ピリオドが打てるレベルまで、
自分を追い込むこと。

これで完成、といえる形まで持っていくこと。

 

 

作品の完成には、覚悟と勇気、
そして、おそらくは、
悟りのような感覚が不可欠なのです。

 

そうやって、ひとつひとつ、
作品を完成させることでしか、
アーティストは、クリエイターは、前に進めない。

 

永遠に完成しない作品を、
人は「作品」と呼んではくれないのです。

 

◆ 6日間12ユニットでヴォイス&ヴォーカルトレーニングのすべてを伝える、【第4期 MTLヴォイス & ヴォーカル レッスン12】お申し込み受付中。
◆明日発行予定(遅れています。お待ちの方、ごめんなさい。)のヴォイトレ・マガジンは発声と声のしくみについてマニアックにお届けします。期間限定でごらんいただける映像もあります。
購読はこちらから。

 - The プロフェッショナル, 夢を叶える

  関連記事

「数値」と向き合う。「ヒト」と向き合う。

◆歌の「うまさ」は数値化できる。 専門的な機械を使えば、いや、近年ではそこそこの …

Never Too Late!今しかない!

大好きな英語表現に”Never too late”があります。 直訳すると「〜す …

「真っ白な灰」に、なりますか?

リングの上で真っ白な灰になった、『あしたのジョー』。 命を賭けられるほどのものに …

プロ、セミプロ、セミアマ?ミュージシャンの働き方

高校時代、一緒にバンドをやっていた仲間のひとりに、 フリーターをしながら、あちこ …

「今の自分」を信じられないなら、「未来の自分」を信じる

「音楽学校って、夢をあきらめるためにくるところだって、先輩が言ってました」 &n …

説得力のある人は、エネルギー値が高いのだ。

聞く人の心にどかんと飛び込む「説得力あるパフォーマンス」。 はじめてギターを抱え …

人前に立つ前の「MUST DO!」〜ムービー/チェック編〜

人前に立って、パフォーマンスしたり、話したりする機会を与えられるということは、 …

好きで、得意で、何時間でもできることだけをがんばる。

かつては、何でもかんでも自分でやらなくちゃ気がすまない、 とりあえず、まずは自分 …

「準備OK」な自分を育てる

欲しいものがなんだかわからなければ、 どこに向かって手を伸ばせばいいのか、わかり …

セルフイメージは声に出る

歌のレッスンをしていると, 歌う前から、「歌えない」「失敗する」と決めている人に …